奇形の混ざり者は村を追い出された
2~3万文字程度の短い作品を3作品同時投稿しました。
●1作品目 奇形の鬼娘と言われ鬼からも人からも冷たくされましたが、魔装の錬金術師に拾われ、愛され頼られるようになりました。戻ってこいと脅されても幸せすぎてもう戻れません
●2作品目 【焼却炉の魔術師】と呼ばれ、バカにされながらもごみ焼却のバイトをこなしていたら、嫌がらせでバイトを首になり、何故か王子と仲良くなりパーティーに出席する事になった
●3作品目 許嫁に毎日罵倒された挙句婚約破棄されたら、幼馴染の他国の王子が求婚してきた。
他の作品もチェックしてもらえると嬉しいです。
「子供の世話にいつまでかかっているの!混ざり者ののろまが!」
私はミワクに怒鳴られた。
ミワクは鬼族で額から2本の立派な角を生やす。
赤い瞳と赤い髪で長い髪を腰の近くまで伸ばしている。
ミワクは鬼族の特徴を完全に引き継ぎ、異性からの人気も高い。
しかも【魅了】のスキルで同族の異性を操り、戦でも活躍する鬼族の幹部でもある。
魅了の力も合わさり異性からもてはやされる姫のような存在だ。
「すいません。まだしばらくかかります」
私は100人の鬼族の幼子を1人で世話をしていた。
私【ハスハ】はミワクと違い、鬼と人の間に生まれた【混ざり者】と言われ、鬼族からも人族からも冷たくされ、奴隷のように生きてきた。
桃色の髪と瞳の色は、鬼族の赤色や人族の黒色と違い、一目で私が【混ざり者】だと分かる。
更に額から出る2本の角は、まるでこぶのようで、鬼族からは「奇形」と言われている。
戦闘民族である鬼族のような戦闘力は無く、更に【混ざり者】で【奇形】の私に居場所なんてないのかもしれない。
鬼族は戦闘力の無い者は下に見られるのだ。
「ふん、のろまね。さっさと片付けるのだわ」
ミワクが大部屋から外に出ると、鬼族の男と笑顔で話をしている。
まるで二重人格だ。
ミワクは男の前では笑顔で、私の前ではそれこそ鬼のように態度が豹変する。
100人の幼子を世話する能力は私には無い。
人手が足りないが、鬼族の女性は子が生まれ、少し経つと私に幼子の世話を押し付ける。
ミワクが大部屋に戻ってきてまた怒鳴る。
「ハスハ!野菜に成長促進をかけるのだわ!」
「でも、子供の世話がまだです」
「成長促進を使って戻ってきて世話をするのだわ!今日は終わるまで寝ずに働くのだわ!」
「……はい」
私は外に出て畑の野菜に【成長促進】の魔術を使う。
私のスキルは植物魔術。
野菜などの植物の成長を早くすることが出来る。
どんなに頑張って成長促進を使っても「少ない」「もっと野菜を作れ!」「戦えないならもっと役に立て」と怒られてばかり。
交易で人族と話をしたこともあったが「ま、混ざり者!」と言われまるで呪われた者のように扱われた。
魔力を使い切り、具合が悪くなり、更に幼子や子供の世話、料理に洗濯であまり眠ることが出来ない。
唯一話せる友は10才の鬼族【イトナ】で、立派な2本の角と、赤い瞳と赤い髪を持つ鬼族だが、スキルが【裁縫術】で弱い為、同じように役立たず扱いされている。
イトナは皆が着る着物を作り、鬼族に貢献していると思うが、鬼族にとっては戦える者かどうかが大事なのだ。
戦闘民族である鬼族は、戦えない者への扱いが厳しい。
「ハスハ、服を作り終わったら子供の世話を手伝いますよ」
「ありがとう。でも、そろそろ私はここから追い出されるわ」
「え?どうしてですか?」
「ミワクが私を追い出す話をしていたもの」
「ハスハは、行く当てはあるんですか?」
「無いわ」
「私がミワクと話をしてきます」
「駄目よ!あなたまで追い出されるわ!」
「でも、ハスハが居なくなったらここは回りませんよ」
この地は後方で子供の世話や農業、衣類の生産などをしている。
この村は戦い以外の生産を一手に担う場所なのだ。
「私は、鬼と人のハーフで、戦う力も無いから、追い出されて当然よ」
「そんな!」
「さあ、仕事を終わらせましょう」
私は悲しさを消し去るように無理して笑顔を作り、仕事に戻った。
その日は結局朝方まで作業に追われ、眠る。
◇
「ハスハ!起きるのだわ!」
私はミワクに布団から引きずり出され、外に連れ出された。
外には人間の男が立っていた。
その男に叫ぶようにミワクが言う。
「この奇形の混ざり者を奴隷として差し出すのだわ!」
私は奴隷として差し出される事となった。
この事件がハスハの運命を変えていく事をハスハはまだ知らない。
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