4話 ダンジョン
「ダンジョン攻略?」
「そう!」
「一階から五階までは難易度D-だし、報酬もいいからこれを受けようと思うの」
ダンジョンとは、モンスターの現れる迷宮や塔などの事を指す。現れるモンスターも強く、罠などのリスクも高いが、その分レアなドロップアイテムや宝箱などリターンも大きい。
「でも、ダンジョンって私たちみたいな初心者には向いてないんじゃないかな?」
リリーは少し不安なのか、杖をぎゅっと握り締めている。
「心配ご無用! 今回のダンジョンは、さっきも言った通り難易度は低いし、あまり深いところまで行かなければ大丈夫。それに、今回はアイトもいるしね。二人のときと比べたら戦えるはずだよ」
というわけで、俺たちはそのダンジョンにやって来た。今回のダンジョンは、街から少し離れた山にある地下二十階のダンジョンだ。
「二人とも急ぐよ! 早くしないと、他の冒険者に先を越されちゃう」
冒険者の世界では、レアアイテムや宝箱などは基本的に早い者勝ちとなっている。
ダンジョンの同じ階層に他の冒険者がいた場合は、他の階層に移動するか、離れた場所で探索するのが暗黙の了解なのだ。
「準備はできてる? 一応装備とアイテムの確認しておいてね」
俺の装備は街の店で買ったよくある両刃の片手剣。
防具はロングコートを買った。どういう原理かは分からないが、攻撃だけじゃなく魔法も防いでくれる優れものだそうだ。黒を基調としていて俺の中二心をくすぐる。きっとこれが嫌いな男子はいないだろう。若干値は張ったが、結構気に入っている。
「ああ、大丈夫だ」
「私も大丈夫です」
「オッケー入るよ」
モニカがダンジョンの扉を押した。
中はとても暗いくて、辺りの様子が分からないが……。
「おい、何体かいる。近いぞ」
『龍の目』
視界にモンスターの姿と周りの景色が浮かび上がる。
「正面に二体、右に一体、左の壁の裏に一体隠れてる」
「了解! リリー頼むよ」
「はいっ! 『ライト』」
周りに光が灯る。
なるほど、魔法と言ってもこういう魔法もあるのか。
結構奥が深い。
「ちょっと! ぼさっとしてないであんたも戦うの! 正面の二体任せたからね!」
「分かった」
種族:ゴブリン
ランク:E+
スキル:無し
耐性:無し
ゴブリンが二体か、あの時闘ったゴブリンのランクはEだったが、今回はE+。ダンジョンというだけあるな。
だが動きが読みやすい。真正面から向かってきて、棍棒を大きく振り下ろす。そんな隙だらけの攻撃が当たるわけないだろう。
左に躱して切る!
ザシュッ!!
もう一匹も同じだ。躱して切る!
グエエエエエ
ランクが上がってもこの程度か。折角数いるんだから、連携するとかすればいいのに。所詮その程度の知能ということだな。
これなら二人も心配ないだろう。
『身体強化スピード』
「ナイスリリー!」
「ウガアアア」
棍棒を振り回すだけの単調な攻撃。それに軌道も読みやすい。
身体強化をかけてもらってるから当たりはしない。
「えいっ!」
ゴブリンの首にダガーを突き刺す。
刺さりはしたが、あまり効いてないっぽい。おかしいなぁ、首って急所のはずなんだけど。
「ゴガッ!!」
「よっと」
刺したダガーを支点にして攻撃を躱して回し蹴り
靴に仕込んだナイフで脳天を突き刺すっ!
バシッ
まずい、掴まれた。
ダメだこの距離じゃよけられない……
『盾』
「モニカちゃん大丈夫!?」
危なかった。間一髪のところでリリーの盾が間に合った。
「ナイスカバー!」
スパッ!!
「闘いながらワイヤーを張り巡らせてたの。アタシの勝ちよ」
ゴブリンは細切れになり崩れ落ちた。
「やったー!」
モニカとリリーはハイタッチを交わす。
「助かったよリリー。あなたがいなかったらきっと負けてたわ」
「ううん、モニカちゃんこそ凄かった」
「あっそういえばアイトに二体も任せちゃったんだった。あいつ大丈夫かな」
「こっちも終わったぞ」
アイトがゴブリンを引きずりながら近づいてくる。
「良かった。無事だったんですね」
「そっちは何体倒した?」
「何体って左にいた一体だけだけど?」
「あれっ? そっちのは強かったのか?」
ドサッ
アイトがゴブリンを地面に投げ捨てる。
「……ちょっと待ってそれ何匹いるの?」
アイトの後ろのはゴブリンの山が積みあがっていた。
ざっと数えただけでも、二十体は優に超えている。
「全部で二十三体だ。一階にいたのはこれで全部だぞ」
「全部って一人で倒したの?」
「ああ、そうだ。」
「噓でしょ? だって、E+のゴブリンだったよね?」
「多分そうだと思うが……それがどうしたんだ?」
「いくら加護やスキルを持っているにしても、ランクが上のモンスターを一人で全滅させるなんておかしいですよ」
「ふーん、そういうものなのか」
ふーんってこいつ一体何者なの?