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僕と魔劍の英雄譚~落ちこぼれの僕が魔劍と出会って最強に~  作者: シクラメン
第4章 星界からの侵略者

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第4-17話 決戦、そして知覚魔法

『飛べ』


 造物主は一言、紡いだ。

 その瞬間、アイゼルたちの周りに転移魔法が発動。粒子が渦巻き、転移先へとつながるゲートが開く前にアイゼルが権能解放。


悲哀虚妄ヒュリオンッ!」


 転移魔法というものが事象を否定され打ち消される。


『出でよ』


 続いて、生み出されるのは無数の『三等星』。『起源アダマー』は玉座に座ったまま一歩も動くことなく、アイゼル達を見降ろしている。


 その間に立ちふさがる『三等星』たちなど、アイゼル達からすれば話にならぬほど弱い。

 エーファが魔法で焼き溶かし、メリーが細菌で壊し、ソフィアが圧壊する。


 その中で生み出されるのは一本の道。

 神へと至るその道は、三人がこじ開けてくれた道だ。


「行くぞ、アイゼルッ!」

「あぁ!」


 これまで幾度となく自らを支えてくれた相棒と共にアイゼルは『三等星』の海の中に出来た道を全力疾走。『起源アダマー』はそれに眉一つ動かさずに、右手をまっすぐ向けた。


『停まれ』


 がくん、とアイゼルとグラゼビュートの足が止まる。


「何ッ!?」


 止まったのは足だけではない。慣性も含めての静止。それは肉体的な静止というよりも、空間的な静止であるように思われる。


『笑わせるな。被造物如きが思い上がるとは』


 『起源アダマー』はそう言って嘲笑すると、天を見上げた。


『堕ちよ』


 その言葉とともに、天蓋のその奥にあった全ての星々が落下を始めた。


「……冗談だろ?」


 それはまるで、幻覚魔法にでもかかっているかのような光景。無数の隕石がアイゼル達めがけて落ちてくるのだ。


因果貪食グラゼビュート


 大罪の悪魔は静かに詠唱。己が権能を解放する。

 生み出されたのは、隕石を回避したという結果。


 望む未来をつかみ取る魔法は、造物主の生み出した星々の欠片を全て逸らして城の周囲へと着撃させる。

 信じられないような爆音と、衝撃波が天高い場所にいるアイゼル達にも伝わってきた。


『其は破壊の定め。呪詛を謳え、悪意を唄え、憎悪を詠え。さぁ、出でよ』


 『起源アダマー』が召喚したのは黒い球体であった。


「……何だ、あれ」


 アイゼルはその球体に釘づけになりながら、そんなことを呟いた。


 それは異質であり、異端であった。


【Error!!】


 知覚魔法は何も表示ポップアップせず、ただエラーをまき散らしているのみ。


「なん、なんだ」


 静寂。世界に響き渡るのは『三等星』との戦闘音ではなく、『起源アダマー』の言葉でもない。


 ただ、『起源アダマー』が生み出した何かが放つ威圧感プレッシャーが世界を圧し、何者をも許容はしない。


「逃げろ、グラゼビュートッ!」


 その瞬間、アイゼルの両目に嫌というほど押し込まれたのは攻撃予測範囲。それは、綺麗にアイゼルとグラゼビュートを範囲内に押し込めていた。


 アイゼルの叫びを聞いた瞬間に、グラゼビュートはアイゼルの身体を掴み上げると同時に地面を蹴って静止を振り切り攻撃予測範囲の外に飛び出す。それと同時に、黒い球体から産み出された漆黒のかぜが辺りに流れた。


「……ッ!」


 攻撃予測範囲の中にいた『三等星』たちは黒い颱に触れた瞬間に、優しく命を奪われていく。まるで致死フェイルという属性が姿かたちを得てこの世に顕現したかのような姿。


 ぱかり、とひどく間抜けな音と共に球が割れる。


 中から出でるのは六枚の翼を背にした翡翠の天使。それは見た目だけを抜き取ると、『スピカ』のように思われる。けれど、彼女と違うところは頭部にあった。


 頭上にあるのは、ともすると天使の輪に見えるかも知れない。

 しかし、天使というにはひどく冒涜的であり、悪魔というにはひどく禍々しい。


 これまでの『零等星』を見てきたときにおこる頭痛は発生しなかった。それは理解出来る、出来ないという概念を超えてしまっている。


『さあ、存分にあがけ』


 それの顔にのっぺりと張り付いた大きな一つの目が開かれる。それは、金と銀で装飾された一つの芸術品のような輝きを持って、アイゼル達を出迎えた。


「一気に片を付けるぞ。アイゼル、時間稼ぎを」

「分かった。任せる」


 グラゼビュートが背後に生み出すのは莫大な魔法陣。万象一切を零に帰す、『暴食絶無グラトニア』の魔法だ。発動すれば、自らの権能を用いて確殺の一撃となりうる。


 故に必要なのは発動までにかかる時間。


 貪食の悪魔(グラゼビュート)といえども、神々が行使した魔法を再現した物であれば、術式構築と、術式詠唱の時間を設ける必要があるからだ。


 だからこそ、アイゼルがその化け物との間に立つ。


「そうか、お前も」


 アイゼルと、一つ目の天使は互いに視線を合わせて理解した。


 両者ともに【知覚魔法】が使える。

 

 ということは、貪食の悪魔(グラゼビュート)が何をしようとしているのかくらいは分かっているのだろう。


 だが、分かっていたとして何になるのだ?

 いかなる回避も、いかなる防御もその魔法の前には全てが無意味。


 故に、確殺。故に、必殺。


「時間を稼ぐって言ってもね」


 アイゼルは困ったように魔剣を構えた。


「相手がよく分からないし、あんまり期待されても困るんだ」


 エーファもメリーもソフィアもアイゼルたちがまっすぐ進める様に『三等星』を狩ってくれている。手助けなど、望めるはずもない。


「ふぅ……」


 アイゼルはその両目に【知覚魔法】を揺蕩わせた。

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