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第3-10話 変態、そして変態

「いよぉ、よく来たな。英雄君」

「待ってたぜぇ……お前が来るのをよぉ」

「俺たちゃ、お前を見た時にビビッと来たのよ」

「ああ、コイツは俺たちの同類なんだってなァ……」


 まだ日の光が登っているというのにカーテンを閉め切り、中にはたった一つの蝋燭。黒い三角頭巾をかぶって一種の祭りでも行っているかのようなこのクラスこそ。


「ようこそ、我らがⅣ組に」


 王立魔術師学校アカデミーの中で最もイカれてると言われるⅣ組である。

 彼らは『色欲の悪魔(ラクシュメダイ)』と契約を結び、精神干渉系、幻術・幻覚系の魔術に特化した魔術師たちだ。


 こういう風に集まると、まるで『色欲の悪魔(ラクシュメダイ)』の契約者が変人ばかりに思われるがそれは違う。元はまともなのである。しかし人とは変わるもの。そもそも人の精神を覗けるような連中は意識がぶっ飛んでいないとやれないのかも知れない。


 ただまあ、色欲関係の魔術師でもまともな人間はいるのだ…………。


 と、そこまで考えてアイゼルは首を傾げる。


 やっぱりいないや。


 訂正。彼らは変人である。


「んで、我らの城に来てまで一体どうしたんだァ……。アイゼル君よぉ」

「何か面白いものでも見つけたか?」

「それともとうとうお前の精神を見させてくれる気になったかぁ……?」

「面白いものだよ」


 そういってアイゼルは背負っていた男を教室の床に投げて、口にかけていた縄を外す。


「馬鹿野郎っ! もっと丁寧に扱わねえか!!」

「この人なんだけどね。僕を殺そうとしてきたんだよ」

「へぇ、暗殺者アサシンかぁ……」

「馬鹿なことをしたもんだなぁ」

「アイゼルは序列最下位ラストワンのくせして正二位アルファ・セカンドの魔人を倒してる化け物だぜぇ?」

「殺しに失敗した上に捕まるだなんて、Ⅰ組の奴らが聞いたら笑われるぜ、あんた」


 まるで彼らは新しい獲物を見つけたかのように男の周りにたかる。既に誰かが自殺防止のための魔術をかけたらしい。男の動きはどこかぎこちない。


「なあ、アイゼル君よぉ……。コイツをここに連れてきたって言うことは」

「良いんだよね!? やっても良いんだよね!!?」


 そう、彼らはアイゼルの一言を待っているのだ。まるで、お預けをくらった犬のように。


「ああ、()()()()()

「ひゃあ、もう我慢できねえ。『心妄楼骸ルディオ・ガルメンダ』っ!」

「『心失奪亡マニア・ラスティア』!」

「『妄心白痴ルディオ・エレメンドラ』」


 Ⅳ組の連中が勢いよく魔術をかけ始める。


「うぉぉおおっ!! 馬鹿馬鹿!! 覗くな! 人を勝手に覗くなぁ!!」


 男が悲鳴を上げるがもう遅い。彼らは人の精神が見たくて見たくてたまらない変態どもなのだ。捕まった時点で諦めてくれ。


「な、なにこの人たち……」

『何だこいつら……』


 流石のメイシュとグラゼビュートもこれにはドン引き。メイシュにいたっては汚物を見るような目でⅣ組の連中を見ている。

 普通、敵の精神を知ろうとすると『色欲ラクシュメダイ』の契約者に金を払って依頼するのだが、こと王立魔術師学校アカデミーは違う。


 彼らに任せると勝手にやってくれるのだ。しかも無料ただで。

 まさに変態様々。サンキュー変態。フォーエヴァー変態。


 あんまりやりすぎると、被検体が廃人になるのだが、今回は構わないだろう。

 だって暗殺者アサシンだし。


「ぐへへ。読める読めるぜぇ……」

「おいおい、コイツ。姿を消せる『魔法』持ちかよぉ!」

「見える。見えるわ。魔法が分かるわっ!!」

「ンギモッチィィィィイイイイイイイイイッ!!」


 ……思ってたよりヤバい集団なのかもしれない。

 今後関わるのはよしておこう。


「はぁはぁ、気持ち良すぎてもれそう」

「あぁ、出る出る! 出ちゃうよぉ!!」

「構わねえ。やっちまえ!!!」

「構えや!!」


 それはマジで駄目なやつ!!!


「うおおおおお。メイちゃん。出るぞ!」

『「えっ、アイゼルも!?」』

「違うわ!!」


 アイゼルはメイシュの手を引いてⅣ組の外へ、その瞬間。


「「「ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」」」


 凄い汚い音を聞いた。


 その後しばらく賢者タイムになった彼らは窓を開け換気を行い、汚物を処理し、下着を履き替え、五分ほどして教室の扉が開いた。


「入れ」

「ありがとう」

「えっ、アイゼル。その中に入るの? 本当に言ってるの?」

「入らないと、話が聞けないだろう?」

「いやいや、そういう問題じゃ無くない? えっ、本当に入れるの?」

「うん」


 だって中綺麗になってるんだよ? どうして入れないの?


「いや、ちょっと私はここで待ってるから……」

「そう? 大丈夫だよ。Ⅳ組の中にはちゃんと女の子いるから」

「そういう問題じゃ無くないかなぁ!?」


 そうかな?


『そうだぞ』


 アイゼルが中に入ると窓の外から心地よい風が入り込んでいた。ここは校舎の中で最も風通しの良い場所だ。理由は言わずもがな。


『ううむ。お前も大概凄いな。アイゼル……』

(えっ、何でよ)

『いや、分からぬなら……それで良いのだ…………』


 グラゼビュートの歯切れが悪い。そんなに言われるような事かな。


「いやいや、アイゼル。最高の被検体おもちゃをありがとう」

「やっぱり、私たちが見込んだ男ね」

「ああ、あの五段階障壁を突破する瞬間ったら」

「思い出しただけでイケそうだぜ」


 どこに行くんだろう?

 出来るならそのまま戻ってこないで欲しい。


「ごめんなさい。俺が悪かったです。ごめんなさい……」


 蹂躙された男はというとひどくしょんぼりした姿で地面に転がっていた。


「それで、何か分かった?」

「勿論。コイツの名前はイラレゾ。イラレゾ・ダフォート。24歳、独身。近所の人妻に恋していて現在ストーカー中で……」

「いや、そこら辺はいらないから要点だけ頼む」

「分かった。コイツの依頼先は王立魔術研究所ラボラトリー。しかも内容はメイシュとアイゼルの殺害とだけしか伝えられていない」

「情報漏洩を恐れたか」


 それはここまでの動きを見ていれば容易に想像できることだった。


「五段階も精神障壁を設けるなんて普通じゃあり得ない。アイゼル、お前一体何に首つっこんでんだ?」

「まあ、それなりのことだよ」


 王立魔術研究所ラボラトリー。研究所の名前が分かっただけでも大きい。

 それに、王立魔術研究所ラボラトリーと聞いてアイゼルもいろいろとつながるところがあった。


 これだけの規模を隠し通せたのも、あれだけ大きな研究施設を用意できるのも。

 バックに王国がついているなら可能な所業だ。


「まあ、お前が何に顔突っ込んでても良いけどよ」

「面白いことがあったら交えてくれよな」

「それで、この男どうしたら良い?」


 暗殺者アサシンの男を指さしてⅣ組の学生が聞いてくる。


「ああ、好きにしていいよ」

「やったぜっ!」

「今夜は徹夜だぁ!!」

「骨の一片まで読むわよ!!!」


 そう言って獲物に集まるⅣ組に礼だけ言ってアイゼルは教室の外にでる。


 王立魔術研究所ラボラトリー


 そのリーダーは『賢者』だ。

少しでもおもしろいと思っていただけたなら、

評価、ブクマ、感想をよろしくお願いします!!

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[一言] 悪魔と会話しても楽しそうな人達だ
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