表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/197

68

「できれば王様一人の方が良かったんですけどね」

「できるわけがなかろう」


 騎士長がこちらを威嚇するように言うけれど、威圧感はまるでない。

 むしろこちらに怯えているようにも見える。


 大変だね。いつかのこと思い出したのかな?

 でも仕事だから、来ないと駄目なんだよね。


 王様と二人で話ができないかと持ち掛けると、普通に謁見の方式になった。

 すなわち、護衛や上位貴族っぽい人もいる。

 別にいいのだけれど。僕は全然困らないのだけれど。

 精霊についての話だよ? 世間に広まっても知らないよ?


 ここにいるレベルの人なら知っているのかもしれないけど。

 国王が訝しげながらこちらを見る。


「して、何用だ?」

「あまりに待機時間が長いので、提案しに来ました」

「提案だと?」

「何を勝手な。行動するには時期を窺わなければならぬ。

 そんなこともわからずに口を出す気か?」


 一言話すと国王以外が口を挟んでくる。

 止める気がなさそうな国王も国王だけれど、これだけでも王様だけが良かったって思うよね。うん。

 それに今まで政治にかかわったことがないであろう小娘に、それを理解しろとか何を言っているのだろうね。


「呼び出しておいて放置しているんですから、勝手はそちらも同じことです。

 せめていつ、何を、どのようにするかくらいは、教えてくれても良いんじゃないんですか?

 なんだったら精霊の樹を出ていきますよ?」

「獣人どもに好き勝手させていいと思っているのか?」

「そもそも獣人をそんなに知りません。

 わたしもエルフの一人ということで来ましたが、今の対応では協力しようという気も起きません。

 ですから、せめてビジネスライクにいこうかと思いまして」


 フフフと笑えば、全方位から殺気がやってくる。

 たぶん並の使い手なら、それだけで意識を失いそうな威圧感があるけれど、僕には全く通じない。

 何なら魔法が飛んできても通じないと思う。


 まだ本格的に対立する気はないので、『威圧』を返すだけで許してあげましょう。

 あ、数人震え出した。ご愁傷さまです。騎士長とか汗だらだらですが、大丈夫ですか? トイレとか行ったほうが良いんじゃないですか?

 駄目ですか。お仕事頑張ってください。ボクもお仕事手伝いますね。『威圧』マシで行きます。


「で、どうしますか?」

「提案とやらを聞こうではないか。そこまで言うのだ、期待して良いのだろう?」


 騎士たち以外には『威圧』をしていないので、国王が不遜な態度で返してくる。

 この辺りは他の人とは違う感じがするよね。僕を利用してやろうみたいなことを考えているのがよくわかる。


 それとも隣の騎士長の様子をうかがったのかな?

 明らかに顔青いもんね。こちらの機嫌を損ねないようにしつつ、威厳を保とうとしているのだろうか。なんにしても、話を聞いてくれるなら僕はどうでもいいや。


「獣人族の首魁の首を取ってくるので、願いを1つ叶えてください」

「兵は出せんぞ?」

「元より一人で行くつもりですよ」

「何を無茶な。少々強いからと調子に乗るでないぞ」


 やっぱり国王以外に『威圧』しておいた方が良かっただろうか。ギャラリーがうるさい。

 誰さんか知らないけれど、周りが見えていないのだろうか。

 君達を守る騎士で動けそうなのは2~3人しかいないけれど。その2~3人も既に顔を歪めているのだけれど。


 国王が「良い」と窘めるので、これ以上は何も言われなかった。

 やっぱり騎士長の様子をうかがっていたのかな。


「真に可能であるか?」

「可能か不可能かであれば、可能だと答えましょう。

 もちろん首をここに持ってきますので、ご自身で確認すればいいかと思います」

「そこまで言うのであれば信じよう。だが失敗した場合、助けはないぞ?」

「構いませんよ? 首魁を倒すだけで足りなければ、その時にまた新たに契約を結びましょう」

「……して、願いと言うのはなんだ?」

「言わないと駄目ですか? 別に難しいことではないんですけど」

「話せ」


 そんな睨みつけなくても、国王に死んでほしいとか、僕を国王にしろとかそういうことではないんだけど。でも、まあ……話さないと先には進まないんだろうな。


「わたしをこの樹にいる精霊のもとまで連れていってください」

「何が目的だ? そもそもなぜ知っている?」

「単なる興味です。なぜ知っているかと言えば、なぜこのタイミングでエルフの上位種が出てきたのか考えれば、わかるんじゃないですか?」


 驚く国王に適当なことを返しつつ、周囲の様子を窺ってみるけれど、そこまでざわめきは大きくない。何人かが「精霊……?」と首をかしげている程度だ。

 つまり上層部であれば、それなりに精霊の存在を知っていたということで良いだろう。

 そういえば、精霊を解放するみたいな運動を前王が起こしたわけだから、それなりの年齢であれば知っていてもおかしくはないのか。


 首をかしげているのは、この中でも比較的若い人っぽいし。若いと言っても、200~300歳。全然若いとは思えない。


「……うむ」


 何を納得したのかわからないけれど、納得したのならそれでいい。

 とりあえずやることをやってしまおう。


「では、わたしが獣人族のトップの首を持ってきたら、この国にいる精霊のところまで連れていってもらうということで、契約してくれますね?」

「良かろう」

「それではわたしは準備をして明日にでも出立しますので、御前を失礼いたします」


 ということで、穏便にいくのは難しそうなので、国王に案内してもらう方向で行こうと思う。

 あくまでルートの1つだけれど。

 もう1つのルートに行くかどうか、考えるためにも獣人族のところに行ってみよう。そして獣人の擬態をしたルルスの耳を堪能しよう。そうしよう。


 でも、その前にフラーウスの様子でも見に行こうかな。

 空を全力で行けば、すぐに着くだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
mgfn4kzzfs7y4migblzdwd2gt6w_1cq8_hm_ow_58iu.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ