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 閉じ込められた高齢のエルフ。この人に何もないわけがないのだけれど、この人から情報を得ようと思うとどうしても接触しないわけにはいかない。

 何せ彼以外にいないから、世間話や内緒話から情報を得ることができないのだ。


 ゲームだったら透明な状態でも話しかけたらこちらに気が付かずに、独り言でも言ってくれるのだろうけれど、残念ながら彼はNPCではないらしい。

『隠密』でバレないように気をつけながら、じっとその姿を見ていたけれど、愚痴の一つも零そうとしない。


 こういう時って「何奴!?」「わたしの『隠密』を見破るなんてなかなかですね」みたいな会話がなされそうなものだけれど、そうなることもない。

 くそぉ……なんかこう……微妙に違和感を与えられるように手を抜ければいいのだけれど……。

 普通に話しかけても良いんだけど、それはとても芸がない。


 この体やっぱり難しいんだよね。


 ある意味、骨董品と呼ばれるのも仕方ないんじゃなかろうか。

 油をさしたらうまく動くようになるんじゃなかろうか。

 実際、神様が作り出したこの体は、数百年、数千年単位で存在していた可能性もあるわけだ。


 だとしたら、数か月程度で慣れるわけないよな、とも思う。

 そもそも普通の人間だって、新しい体を得てから――生まれからしばらくの間はうまく体を使えないのだ。

 赤ちゃんはそもそも体が出来上がっていないとか、そんなことは知ったことではない。


 つまり僕は悪くない。そういうことにした。


 なんて無意味な脳内言い訳をしていたら、ふとあることを思い出した。

 僕のスキルの中に、それなりに異彩を放つものがある。その名も『古使』。

 読み方は分からない。「コシ」とか「ふるつか」とかになるんだろう。


 ただその能力は、書いて字のごとくなので分かりやすい。

 古いものの使い方がわかるとか、うまく使えるようになるとか、そういった感じのスキルだ。

 地球だとオーパーツがどういうものかとか、その使い方がわかるかもしれない。

 古いという判定だけれど、基準は今現在。今を起点として、その物が古いと一般的に判断される、もしくは100年以上経過していることが条件。


 つまりこのスキルを使ってポケベルを使おうと思ったら、とてもうまく使える。

 具体的にどうなるかはわからないけれど、ものすごく使える。

 ポケベルは名前しか知らないから、使い方がさっぱりなのだ。文字を送れるみたいな認識しかない。


 閑話休題。


 で、この体が骨董品なら、スキルが適用できないかなと思ったわけです。


 できたら手加減がもっと楽になるだろうと。

 そう言うわけで、使ってみました。

 効果は思っていたよりも少なかったです。


 うん。体の制御はよりうまくできるようになった。デコピンをちゃんとデコピンレベルの威力で抑えられるだろう。むやみに風竜を破砕するようなものにはならないはずだ。

 でも常時使用するスキルが増えるわけで、その分スキルの扱いが難しくなった。


 スキルがなくても、ステータスでごり押せるはずなので、別に構わないけれど。


 実験が終わったので、あきらめてそこなエルフに話しかけることにした。

 人間諦めも肝心。亜神も諦めが肝心。僕なんてこの世界のことはとうに諦めている。


「こんにちは、生きてますね」

「何用だ?」


 思っていた以上に声に力がある。支配者の風格みたいなのがにじみ出ている。

 それこそ、今の王様よりも王様っぽい。

 まあ、予想はできていたけれど、なんだかとても壮健そうだ。


「そうですね。貴方は何だかいろいろ知っていそうなので、お話に来ました」

「なんの戯れか知らぬが、よい。どうせワシはここで世界の崩壊を待つ身。

 長き退屈を少しでも紛らわせるというのであれば、どのようなことでも話そう」


 情報を出すから、こっちも面白い話をしろってことか。

 でも初対面のこのエルフが何を面白いと思ってくれるかわからない。

 そもそも警戒心がなさすぎるような気がする……世界崩壊を待つとか言っていたし、こっち(諦めた)側の人かな。


「そうですね。世界崩壊まで季節が20回も巡らないと思いますが、それってエルフ的には長いんですか? 前国王様」


 そう尋ねると、推定前国王様の目がきらりと光ったように僕を見る。

 どうやら興味は引けたらしい。


「お主は何を知っている?」

「話しても良いですが、わたしに関する一切合切を他の人に伝えないでくださいね?」

「心配せずとも、今更ワシの話を信じる者もおるまい。

 いや1人ここに話を聞きに来たな。適当に話して、追い返したが」

()()ですよ?」

「ああ、約束しよう」


 これで契約は成立。フラーウスの事があるとはいえ、さすがにここではこれで大丈夫だろう。


「さて、何を知っているのかと言われると、この世界の人たちはあと20歳も年齢を重ねられないことくらいです」

「それが正しいと証明できるか?」

「そうですね……これを見てもらえれば納得していただけるかと」


 そう言って、手を加えていないステータスを老エルフに見せる。

 考えてみれば、僕自身自分のステータスを見るのは久しぶりではなかろうか。

 ご老体が目を丸くするのは仕方ないとして、どれどれどれくらいになったんだろうか……と。




フィーニス


年齢:0 性別:女


体力:2379

魔力:2657

筋力:2238

耐久:1960

知力:2236

抵抗:2229

敏捷:2520


称号 :亜神


スキル:言語理解

    勇者(6)

    騎士(6)

    賢者(7)

    聖女(2)

    隠密(5)

    亜神感覚(1)

    契約

    創造

    テイム


 なるほど。さてはこのゲーム、カンストは9999だな?

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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