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「ハハハハハハハ」

「急にどうしたんですか?」


 ルルスが痛いものを見るような目で見てくる。

 そりゃあ、理由を言わないと急に笑い出した変な亜神だろうし、仕方はないけれど。


「さっきドアを開けた後、突っ立っていた騎士長が居たじゃないですか?」

「いましたね。急に叫び出したと思ったら気を失ったので、廊下に放り出しておきましたけれど。

 フィーニス様が幻影でも見せたんですか?」

「そーですよー。正しくは『上位幻術』を使いました」

「初めて聞きますね。スキルですか?」

「沢山あるうちの1つですね。勇者由来なので、たぶんこの世界にはなかったんじゃないですか?」


 スキルは『隠密』と『亜神感覚』に統合された鑑定が便利すぎて、他の物を全然使いこなせていない自信がある。

 強いて言えば、弓の腕前は『武器術』由来の物と言うところだろうか。


 魔法を使うときに詠唱していたけれど、『詠唱破棄』持っているんだよね。

 完全に忘れていたよね。


 まあ、実力を隠すという意味ではよかったかもしれないけれど、これからはうまく使えば効率よく探索が出来るだろう。


「騎士長は僕を殺したと思ったら生きていて、逆に食べられるみたいな状況を見てました。

 その時の僕の笑い声がさっきのです」

「つまり幻術が本当にあったことかどうかを曖昧にしたいんですね」

「逃げていったみたいですし、成功とみて良いでしょう。

 これで僕を見る度に怯えてくれるといいんですけどね」

「だから殺さなかったんですね」


 やっぱりルルスは過激だなー。


 最も後腐れはないから選択肢としてはありなんだけど、それは個人を相手にしているときだけ。

 一応向こうからやってきたとはいえ、ここで殺すと国王がうるさそうなので、こういう手段をとったのだ。


 だから別にスキルを見ながら、ちょっと実験したいなと思ったわけではない。


「ここで殺すと王が煩くなるでしょうからね。

 騎士長を殺した罪を……とか言いかねませんよ」


 あの国王はどこぞの王女様よりも慢心している感じがするし。

 王としての能力は置いておいて、長年王座に座っていると傲慢にもなるのだろう。


 まあ、僕も人のこと言えないけどね。

 死ぬ前だったら国王の前で土下座とかしていたと思うよ。


「そうでした。たぶんルルスはこの国では人型になっていないほうが良いですよ?」

「足手まといですか?」

「足手まといではないですけど、たぶんルルスを狙ってくる人もいるでしょうからね」


 特に僕に対する人質(精霊質?)にするにはうってつけに見えるだろう。

 ルルスが捕まったところで、僕は積極的に助ける気はないし、そもそもエルフ族ごときがルルスを捕まえられるとは思わないけれど。

 でも、精霊を捕まえられる可能性として、最も高いのはエルフ族かなとは思う。

 長命であるということは、それだけ技術も受け継がれやすいだろうし、精霊を捕らえている檻について知っている人がいるかもしれない。


 捕まらないにしろ、狙われたら騒ぎにはなるだろうから、好ましくはない。


「フィーニス様がそうおっしゃるなら、そうしましょう。

 下手な諍いを起こして、邪魔をするのは本意ではありませんしね」


 そう言って、ルルスが光の玉形態に戻る。


『そう言えば、またこちらに近づいてきている人がいますが、また追い返しますか?』

「騎士長ではないでしょうし、一応話くらいは聞いてあげましょう」


 扉がノックされ、返事をする前に開かれる。

 そうして現れたのは、とても美しいエルフの男性とそのお付きっぽい人。年齢は20歳なので、エルフとしてはまだまだ子供と見て良いだろう。

 不機嫌そうな顔をして「なぜオレが動かねばならんのだ」と愚痴っている。


「お前がフィーニスとやらか?」

「そうですが、貴方は誰でしょう?」

「オレを知らんとは、とんだ田舎から来たようだな」

「この国に来たのが最近ですからね。貴方はフラーウス王国の第三王子の名前をご存知ですか?」


 僕は知らない。あの王族で名前を憶えているのは、トパーシオンくらいだ。そもそも第三王子までいるのか知らない。

 でも目の前のエルフも知らないらしく、忌々しそうにこちらを睨んでいる。


「知らないからなんだというのだ。他国の王族など国王と王太子を覚えておけば十分であろう」

「そう言う貴方はこの国の王太子様ですか?」

「オレは……第六王子だ何か文句あるか?」

「いいえありませんよ」


 エルフは子供が出来難いなんて話もあるけれど、王族ともなればさすがに増えるか。

 この国の王位継承がどのように行われているのかは知らないけれど、王族の子が数人はいてしかるべきだと思うし。

 子供が増えたら増えたで、王座をかけて争いになる可能性も増えるけれど。


「その第六王子殿下が何用ですか?」

「自分の妻になるかもしれん相手を見に来て何が悪い」

「そんなことになっているんですね」

「ああ。だが、今のお前を王子妃にする気はない」

「そーですかー」


 僕だって結婚する気などない。むしろ、なぜ結婚する話になっているのか。

 する気はないと言っているけれど、王子の心持ち一つでどうにかなる話ではないだろう。


 まあ、適当な貴族と縁を結ばせて僕を利用する可能性もあるだろうとは思っていたけれど、面倒くさいのを送り付けてくれたものだ。

 たぶん実績がないと結婚はないだろうし、そもそもこちらが断れば成しえない話か。

 ウィリディスの王族という地位に関して言えば、国境越えとかで使えなくもないだろうけれど、そこで発生する責任は邪魔でしかない。


 何かこう、都合がいい感じの地位とかないものかねー。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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