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「それでエンシェントエルフであるわたしを呼び寄せて、何をさせる気でしょうか?」

「やはり其方はエンシェントエルフで間違いないのだな?」

「あら? そこまでは把握していなかったんですね」


 それもわかっていたと思うのだけれど、ハイエルフとエンシェントエルフの違いは今のエルフにはわからないのかもしれない。

 ということは、僕が言わなければ隠し通せたのだろうか。いいや、ハイエルフだろうが、エンシェントエルフだろうが、この人たちにとっては変わらないのだろう。


 どうであれ、エルフの上位種であり、利用価値がある存在ではあるだろうから。


 実はちゃんとわかっていて、こちらを動揺させようとしていた、と言う可能性もあるけれど。

 ポーカーフェイスな王様を見ても、その辺の意図はさっぱりだ。


「それで其方に、何をさせたいのかだったな。

 なに、難しいことではない。獣人との戦いで先頭に立ってもらえればいい」

「やっぱり獣人と争っていたんですね」

「むしろ一般に広く広まっている話だがな。今では子供でも知っておる」

「あいにくとわたしは国の外から来ましたので」


 この国の人ではないぞって言う主張を一応しておく。

 あの町で獣人の話は全く聞かなかったので、そうだろうなという予想はできても、確認することはできなかった。

 下手に尋ねて目立つのは避けたかったし。

 残念ながら、天然エルフ色の僕はそうでなくても目立っていたのだろうけれど。


 門番さんとかも、可能性自体は考えていたんだろうな。

「天才弓使いのフィーニスちゃんは」の自己紹介を嘘だと断じずに、上に報告していただろうから。

 そうでないと、国境の森を越えてきたなんて話が国王に伝わっているはずもない。


「王よ。発言をよろしいでしょうか」

「許す。話せ」

「恐れながら、彼のものに先頭に立ってもらうことには反対です。

 それほどの強さがあるようには見えません」


 騎士の中でも特に偉そうな人が王様に意見する。

 騎士隊長とかだろうか? 地位までは分からないけれど、ステータス的にはA級下位くらいで別に特別強いというほどでもない。

 指揮する立場としては、そこまで戦闘力は必要ないということなのか、権力でごり押したのか、世襲制なのか。


 何にしても、手柄を持っていかれるのが嫌なのか、僕に突っかかってきたいらしい。

 この流れだと十中八九、「じゃあ試してやろう」からの「な、なんて強さだ……」みたいな感じにになるだろう。

 よくある展開だけれど、今の僕としてはちょっとばかりムカつく展開だ。


 なぜ試されなければならないのか。

 と言うか、すでに試されたよね。何様だって思いながらも、試されてあげたよね。A級依頼もこなしてあげたよね。

 対立が悪手だと言っても、この樹の中に精霊がいるというのであれば、王族を全滅させてからゆっくり探すということもできなくはない。


 仏の顔も何とやらと言うし、亜神である僕が怒っても問題ないはずだ。

 怒るかどうかは、王様がどう判断するかだけれど。


「是非我々にその実力を見せてほしいところですな」


 というわけで、テンプレに入りました。

 世の主人公たちはここで叩きのめすなり、辛勝を演じるなりするのだろうけれど、少しばかり怒っている僕の返答はこうなる。


「そう言うことなら帰ります」

「待て、王の前から無断で立ち去ろうなどと、命が惜しくないのかっ!」

「その話、もう一度します?

 実力が云々って言いますけど、コレギウム使って十分測りましたよね?

 だからここまで連れてきたんじゃないんですか?」

「それは……だが……」


 騎士隊長っぽい人が、ぐぬぬと言葉を失った。

 歯を食いしばって顔を真っ赤にして、ものすごく悔しそうだけれど、騎士は貴族と違って表情を隠すのが苦手なのだろうか。

 僕としては、リアルに「ぐぬぬ」が見られて、ちょっと嬉しい。


 ここで国王はどう出るでしょうか。


「騎士長、下がれ。其方の言い分もわからなくはない。

 だが()()許可は出さぬ」

「……はっ。申し訳ございませんでした」

「其方も我が国の騎士長が失礼した」

「気を付けてくださいね。わたしは気は長い方かもしれませんが、決して怒らないわけではないですから」


 騎士長が頭を下げて身を引く。

 無理やり戦わせて、僕の機嫌を損ねることを避けてきたか。


 言い方は非常に気になったけどね。


 だから煽っておくことにした。

 そもそも王様と亜神だとどう考えても亜神の方が位は上だろうから、不敬なのはこの国の方になると思うのだけれど。


「では、この場は解散とする。

 其方等には部屋を用意してある。今日は旅の疲れをいやすとよかろう」


 国王が宣言して、僕たちは部屋の外に促される。

 雰囲気は、まあ悪い感じだったけれど、そんなことを感じさせないさっぱりとした終わり方だ。

 何かしら恨み言でも言われるものと思っていたけれど、そんなこともなかった。


 王の器と言うか、図太いと言うか。


 僕たちはそのまま一階上のフロアに移動させられて、沢山部屋があるうちの一室に2人で一緒に案内された。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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