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 どうやら空き家とやらはコレギウムで管理しているらしく、すぐに鍵を貸してくれた。

 場所を聞いて、ルルスと一緒に歩いて向かう。

 フラーウスと比べると少ない人通りは、歩くのが楽でいい。

 皆エルフなので、僕たちが目立つこともない……はず。


 さて、ルルスと一緒に歩いているわけだけれど、やっぱりエルフって言うと気になるよね。耳。

 ピコピコしているのを見ると、ついつい触りたくなってしまう。

 獣人の耳とか尻尾を触りたくなるあれだ。


 というわけで……。


「えい」

「ひゃ……ッ」


 ふむふむ……ルルスのお耳は何だかフニフニしている感じ?

 垂れているわけじゃないから骨が入ってそうなのだけれど、どうなっているんだろう。

 試しに自分のを触ってみると、ちょっとコリコリしている。

 軟骨が入っている感じ。


 たぶんこれはルルスの方がイレギュラーだろう。

 何せ僕は体は間違いなくエルフ。

 対してルルスは不思議パワーで作られた、謎仕様の体だ。


 いや魔力に近いもので、精霊力とでも言えばいいようなもので作っているのだけれど。


 自分のとルルスのと比べて見た感じ、ルルスの耳の方が触り心地が良い。

 そう思っていたら、なんだか注目されていた。


 目立たないはずなのになぜ?

 まさかあふれ出る神様オーラが……!!


「お姉様。とりあえず触るのを止めましょう」

「はい」

「それから、すぐに借りた家まで行ってお話をしましょう。

 あまり目立ちたくないんですよね?」

「はい」


 若干声色が冷たくなったルルスに睨まれ、そそくさと今日の宿に向かうことにした。





 到着したるは木の上の家。

 梯子などはなかったので、軽く跳んで中に入った。

 内装はワンルームの部屋にベッドがあるだけ。


 そう、お風呂はまだしもトイレもなく、何なら調理する場所すらない。

 これが一般的なエルフのお宅だった場合、エルフ達はトイレに行かないアイドル仕様である可能性が微粒子……いや、粒子レベルで存在する!?


 深くは考えないことにしよう。


「フィーニス様。また変なこと考えてますね?」

「変なこととは何ですか。変なこととは。僕はいつも真剣に考えてますよ」

「変なことを真剣に考えているんですね?」

「適当なことを話してもちゃんと返答がくるっていいですね」

「適当なことって言いましたね」


 うんうん。この感じは一人では出せなかったものだ。

 相手がこの世界の存在じゃないというのも良い。

 なんだかルルスは呆れているけれど、諦めてほしい。


 ドア近くで突っ立っていいても仕方がないので、ベッドに腰かける。


「やっぱりエルフの耳を触るのはアウトですか?」

「分かっていてやったんですね?」

「お約束ですからね。触るのも、そのせいでエルフ的禁忌に触れるのも」

「禁忌と言うほどではありませんが、かなり親しい間柄ではないと触らせないと聞いたことがあります」

「つまり僕たちは恋人同士に見えたわけですね」

「仲が良い姉妹がせいぜいです。そもそも仲が良くても、外で触るようなものではありません」

「以後外では気を付けます」


 そう言いながらルルスの後ろに回り、フニフニの耳を堪能する。

 このフニフニは癖になる。きっと一般通過エルフでは出せない、触り心地。

 葛餅的な?


「そう言えば、他にも何かエルフを相手に知っておくべきことってありますか?」


 フニフニ。


「閉鎖的なので他種族相手には警戒心が強いのですが、私達には関係なさそうです」

「エルフって弓と魔法が得意って認識で良いんですか?」


 フニフニフニ。


「そうですが……知らずに選んでいたんですね」

「弓を使っているのは、力加減が楽だからですからね。

 僕の力が直接伝わるものだと、加減を失敗すると即塵になります」


 フニフニフニフニフニ。


「楽しいですか?」

「楽しいです」

「そうですか」


 ふざけるのもここまでにしておこう。


「そう言えば、やっぱり獣人の耳や尻尾も駄目ですか?」

「駄目ですね」


 それは残念。でもルルスなら、耳尻尾くらい作れそうなので、いつかやってもらおう。

 フニフニにモフみが加わり、最強に見えるかもしれない。


 あと話しておくべきは……門番だろうか?

 障害になるとは思わないけれど、今日の対応はちょっと気になる。


「さてルルスは門番のエルフをどう見ますか?」

「どう、とはどういうことですか?」

「エルフが閉鎖的だとして、同じエルフと言うだけで町に簡単に入れますかね?

 自分で言うのもなんですが、僕たち結構怪しいですよ?」

「怪しかったのは否定しませんが……フィーニス様はどう考えているんですか?」


 質問を質問で返すな! なんて言うつもりはない。

 すぐに答えが思いつかないこともあるし、僕の考えを聞いて考えをまとめることもできるだろうし。

 急に問われた方が困るってやつだ。


 ルルス耳フニポジションの僕からは、ルルスの表情は見えないので困っているのかわからないけれど。


「どう考えているって程ではないですけど、何か裏がありそうだなってくらいです」

「そうですね。エルフは長寿ですが個体数は少なく、仲間意識が強いのは間違いありません。

 ですからそこまで不思議には思いませんでしたが……()()()()()()()面倒くさそうな相手だったので、早く中に入れたかったのではないですか?」

「それありそうですね。と言うかありますね」


 ルルスの言葉にどことなく棘があるどころか、もろ僕を名指ししているけれど、否定はできない。

 たぶん僕もいきなり「天才弓使いのフィーニスちゃん」とか言われても、相手したくないだろうし。


「と言うか門でのこと、根に持ってますか?」

「いいえ。良くやろうと思ったなとは思いましたけれど」

「人相手にどれだけ馬鹿なことをしても、僕は気になりませんから。

 それなら思いっきりやった方が、楽しいと思いませんか?」

「見ている分には愉快でした、と応えておきます。巻き込まれるのはごめんですね」

「人の目、気になりますか?」

「気になりませんが、自然を管理するものとしてのプライドがありますから」


 プライドねえ……どこに捨ててきたっけな。

 可能性として一番高いのはフラーウス城だと思うけれど、もう拾えないだろうな。

 それにしても、ルルスは真面目だね。だから一応聞いておこうか。


「ところでルルス。僕は最短で精霊を助ける気はないんですけど、良いんですか?」

「存じています。フィーニス様が最短を目指しているのであれば、すでに半数以上を救い出しているでしょうから。ですがそれで構いません、別に精霊同士で特別仲が良かったわけでもありませんから」


 なるほどなるほど。


「ルルスはすぐに消滅しそうな精霊がいるかどうかわかりますか?」

「各国に行けば何となくは分かりそうですが、現状数年で消滅するほど弱っているものは居ないと思います」

「それなら神様に願いを6つ叶えてもらえそうですね」


 願いは何にしようかなー、なんて考えながらルルスの耳をフニフニすることにした。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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