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「天才弓使いのフィーニスちゃんが迷い込んだ森は、沢山の魔物が蔓延っていた。

 そこにやってきたのが、わたしの妹天才魔法使いのルルスちゃん。

 妹との感動の再会も束の間、襲い来る魔物たちから逃げてとうとうこの町までやってきたんです。という感じでどうでしょうか?」


 森という名の国境を越え、エルフ国とも呼ばれるウィリディスにやってきた。ニゲルの端っこを経由して。

 エルフ国と言うけれど、正確にはエルフと獣人の連合国。どちらも自然と共存しているらしいから、それぞれが好きなように生活しているのだとか。

 エルフだけの村があったり、獣人とエルフが一緒の町があったり。


 自然との共存が主であるためか、国境付近でも割と気候が安定している。

 適当に生っている実を食べてみたけれど、フラーウスの村で食べた野菜ほど不味くはなかった。

 ルルスもフラーウスよりは安定しているという意見は同じらしく、それでも精霊は弱っているだろうとも付け加えた。


 フラーウスと違って狩猟採集がメインで、エルフ側が小規模の農業をやっている程度なので、精霊の消耗は少ないのだろう。

 その代わり、国全体に精霊の力が届くように調整していると。

 考えているとはいえ、精霊弱らせていたら意味がない。その前に世界が崩壊するけれど。


 で、今は目についた町に入ってみようということで、門までやってきて簡単な聞き取りをされている。町の門と言っても、森の中にあるような感じでフラーウスのそれとはだいぶ雰囲気が違うけれど。

 ついでに僕の語りを聞かされている間、門番のエルフの男性は困った顔をしていた。

 どことなく親しみがあるのは、僕たちがエルフに見えるからだろうか?


「とにかく国境がある森で道に迷ったんだな?」

「面目ないです」

「それは構わない。むしろ同族が無事に町までたどり着いたことを嬉しく思う。

 だがここ最近は物騒だからな。子供2人というのは感心しない」

「大丈夫ですよ。これでもそこそこ強いですから。冒険者にもなっていますからね」

「お姉様はまだFランクじゃないですか」

「僕は強さ的にはDランクはあるから良いんですー」


 ルルスが口を挟んできたので、とっさに言い返す。


 分かっていると思うけれど、これはあくまで演技。

 何だか少し楽しくなってきた感じは否めないけれど、ルルスは本気で馬鹿にしているわけではないし、僕も本気で拗ねているわけではない。


 なぜ僕が姉になったのかと言うと、僕のことをルルスが頑なに様付けしようとしたからだ。

 姉妹設定である以上、フィーニス様は論外だし、妹様って言うのもなんだか違う。

 ルルスの意見を取り入れつつ、最も自然なのが僕を姉にすることだった。


 ついでに通山とか別の顔をしているときには、ルルスは精霊状態で着いてくることになる。

 ルルスはフィーニスとだけ一緒でなければならない。


 じゃれている僕たちを見て、放置していた門番が何だか優しい目をしているけれど、それよりも町の中に入れてくれるかだ。


「それで入って大丈夫ですか?」

「そうだったな。入ってくれ」

「この町にコレギウムはありますか?」

「ああ。入って少し行ったところにあるから、迷うこともないだろう」

「ありがとうございます。ルルス行きますよ」

「はい、お姉様」


 何やらすんなり入ることができた。

 これも僕がエルフしているからかもしれない。完璧なエルフムーブだったに違いない。


 そう言えばステータス確認されなかったな。せっかくルルスのステータス魔法偏重な感じにしてたのに。ランク的に見ればD級程度だけれど。

 門番にも言ったけれど、僕の見せかけステもD級程度まで上げておいた。





 町の中は何と言うか半分森みたいな感じだった。家は大体が木造りで、中には木の上に家を建てているものもある。木を家に……とできるほどの巨木はこの町にはなさそうだ。

 もっと森の奥の町に行けばあるのかな?

 ともあれ、これがエルフの町か。まあ、この町限定という可能性もあるけれど。


 歩いているのは見えている範囲だと、全員エルフだと思う。

 人やドワーフは居ないだろうけれど、獣人まで見当たらないとは思わなかった。

 とりあえず、コレギウムまで行って、どこか泊まれる場所はないか聞いてみることにする。




「ということで、ほどほどに安くて良い宿ありませんか?」

「宿……ですか。専門としているところはありませんね」

「それなら外から来た人はどうするんですか?」

「知り合いの家に泊めてもらうか、集会場に泊まるか、ここに泊まるか、空き家を借りるかでしょうか。集会場やここに泊まるとなると、集まった人で雑魚寝になりますから、あまりお勧めできません」


 コレギウムに入って、受付で宿について聞いてみる。

 担当している女性は見た目は若いけれど、年齢は50を超えていた。

 まあ、エルフの寿命は忘れたけれど、若い人ではあるのだろう。


 で、宿なのだけれど、僕とルルスを見る受付さん的には、空き家を借りる以外の選択肢はなさそうだ。宿がないということは、あまり人の出入りは多くないのかもしれない。


 エルフだしね。何となく秘密主義と言うか、排他的なんだろうね。

 そうすると急に強い魔物とかでてきたら困りそうなものだけれど、エルフの冒険者は長命なためか数は少ないけれど、ステータスは高い。


 コレギウムにいるのもほぼエルフで年齢がバラバラ。100歳を超えている人だとC級を超えているって感じだろうか。半分以上がそれくらい。

 でもA級レベルは居ない。B級上位がちらほらって感じ。


 地球における100m走で言えば、A級とは9秒台だろうか。

 まさしく大きな壁があるんだろうね。

 なんで100mで例えたのかはわからないけどね。


 S級――伝説の勇者級だと、7~8秒くらいのインパクトはありそうだ。

 ステータスで言えば平均250と言っていたけれど、それが召喚された段階とか、魔王討伐に出発する直前とかだと、最終的にもっとステータスは上がるのではないかと思う。


「お姉様どうしますか?」


 ルルスに声を掛けられて意識を戻す。

 お金もないわけではないし、空き家借りればいいだろう。


「空き家借りるのっていくらくらいかかりますか?」

「そうですね、安いところだと10日で小銀貨5枚ほどです」

「ここで手続きできますか?」

「大丈夫ですよ」


 お、すんなり行った。

 と言うか、案外安いな。確かフラーウスだと安いところで1泊大銅貨2枚だったと思うから、10日で小銀貨2枚。その2.5倍で家が借りられる……。

 んー……? 妥当なのかな? わからん。わからないけれど、ふぃーにす は きょてん を てにいれた。

 ……借りただけだけど。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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