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「捕まっている時消えそうでしたけど、今は大丈夫なんです?」


 晴れ渡る空の下、少し向こうが曇っていることは気にせずに歩いている途中で、ふと精霊に尋ねてみる。

 いくつか予想は出来るけれど、会話の種というやつだ。

 だけれど、コミュ障の僕がこんな風に適当に埋めた種は、大体芽吹かずに消えてしまう。


 コミュニケーション能力が高い人というのは、農家の才能があるのかもしれない。

 それで咲くのは言葉の花だから、農家の中でも花を育てる人になりそうだ。

 花を育てている人も農家と言うのか、別の呼び方があるのかは僕にはわからないけれど。


『はい。神様に力を分けてもらいましたから』

「まあ、そうですよね。さすがに消えそうな状態で神様が送ってくるはずはないと思っていました」

『神界に居ればそう時間がかからずに元に戻れました。ですがわざわざ力を分け与えてくださったということは、世界の調整を行う勘を取り戻してこいってことなんだと思います』

「勘とかそういう問題なんですか?」

『そうですね。もともと正常な世界のバランスを整えているだけなら、自然にできます。

 ですがここまで乱れた世界のバランスを、となると意識してやらないといけないので、ある程度技術が必要になってきますね』


 なんとも精霊以外に必要がなさそうな技術だ。

 しかも使えるタイミングが限定的すぎる。捕まっていなくても、世界が消えるまでにあるかどうかの事態だと思うのだけれど。


 ……もしかして、僕も必要になる技術なのだろうか。亜神と言うか、地上にいる神ってそういったこまごました事を担当させられるような気がする。

 神様への願い事は永遠に微睡み続ける権利にしようか。


「消える心配はないとして、精霊さんは僕以外からはどう見えているんですか?

 と言いますか、精霊ってバレると何かと問題があると思うんですが、僕任せじゃないですよね?」

『地上だと他の精霊とフィーニス様以外からは、知覚できないようにしていただきました。

 今がその状態ですね』


 つまり今の僕は何もない空中に話しかける不思議少女なわけだ。

 女の子なら不思議ちゃんですみそうだけれど、通山の状態でやったら完全に不審者だ。

 女の子でも不審者か。でも、男よりは通報されない気がする。


『それだとフィーニス様が私と話すときに不審な目で見られることになりますから、人型を取って周囲に見られるようにもできますよ』

「ちょっとやってみてもらっていいですか?」


 一応周囲に意識を向けて、誰かに見られていないかを確認してから頼んでみる。

 人型と言うと、女性型になるのだろうか、それとも男性型になるのだろうか。

 声の感じから女性っぽいかなと思っているうちに、精霊の姿がどんどん変わっていく。


 おおおお~!! おおおお……?


 最初成人女性の姿をとろうとしていたのに、急に小さくなった。

 小さくなったとは言っても、僕と同じくらいだから小さいなんて言えないんだけれど。

 人型が光っているようなものから、徐々に色が付き始め、輪郭が見えてきたとき僕は憮然とした表情を取らざるを得なかった。


 うんうん。可愛いと思う。美人だと思う。

 白くてすべすべして良そうな肌に、パッチリ開いた大きな目はトパーズのように輝いている。

 髪も瞳に合わせた明るい金髪。


 でもさ、こう……。


「フィーニス様、このような感じで如何でしょうか?」

「何と言うか、僕に似てますよね」

「姉妹という設定にしたらいいんじゃない? と言われました」


 僕は髪が緑で、目が茶色。これが一般的なエルフの特徴らしい。

 日本人が黒髪黒目って言われている割に色が薄い人がいるように、なんだかんだ個人で結構色が違うのだけれど、エルフって言われたらこの色みたいなのが今の僕の色。


 と、話はそういうことではなくて、姉妹設定で顔が似ているというのは構わない。

 見た目女子の2人旅。姉妹で新天地を探していますと言えば、多少信ぴょう性も出てくるだろう。

 髪と瞳の色は違うし、双子と言うほども似ていないけれど、姉妹くらいだったら問題なく通じると思う。

 違いは何と言うか、僕の方が眠そうな顔をしている。


 だが、だがなのだ。

 姉妹設定にしたらいいという割に、精霊の耳がとがっていない。

 これはいったいどういうことなのか。


 神様の怠慢なのか。また大金貨の悲劇が引き起こされるというのか。

 いや、大金貨はとても助かりました。またください。


「姉妹設定にしたら、複雑な家庭環境が露見しそうですね」


 どちらかが養子……と言うには違和感がある程度には似ているし、だとしたら片親が違うとかそんな感じになりそうだ。

 ハーフエルフって生まれるんだっけ? 生まれるとして子供の耳って変わるものなんだっけ?

 僕の方がエルフの血が色濃く出たとかそんな感じ?


 そんな適当なことを考えながら、精霊の耳を見ていたら、僕の発言に意図が分かったのか精霊は自分の耳に手を当てた。


「耳は変えられますので、大丈夫です」

「そうですか。それならいいです」


 光の球状から人型になったのだから、耳くらい何とでもなるか。

 人型になると考えると「精霊、精霊」と呼ぶのもどうだろうか。

 と言うか精霊って呼んだら、一瞬で正体がバレる。


「見た目的に光の精霊ってことで良いんですよね?」

「はい。それがどうかしましたか?」

「名前があった方が便利なので、何かありますか?」

「いえ、特には」

「それなら、その姿の時はルルスと名乗りましょうか」

「分かりました」


 うん、安易に名前を付けてしまったけれど、こういう時って名前を付けたことで強化されるとかあるよね。もしくは僕とのつながりが強くなるとか。

 でも何か変化した様子もない。


「ところで名前勝手に付けて良かったんですか?」

「ええ、はい。大丈夫ですよ」


 きょとんとしているところを見ると、本当に大丈夫なのだろう。

 問題はこの状態で僕の移動についてこられるかだけれど、ステータスってどうなっているのだ……。


ルルス(光の精霊)

年齢:不明 性別:不明

体力:不明

魔力:不明

筋力:不明

耐久:不明

知力:不明

抵抗:不明

敏捷:不明


称号:不明

スキル:不明


 おうふ……。こいつぁひでぇや……。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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