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「魔法の檻 ランク:SSS」

詳細:この世界には存在しない魔法技術の結晶。

   精霊の力を吸収し、人に利用できるように変換している。


 定石というか、定番というかで鑑定をしてみたらこんな結果が出た。

 この詳細誰が書いているんだろう?

 ステータスは自動生成のはずだから、こっちも自動?


 うーむ……何でか、わからないんだよね。

 神様に聞くまでのことではないと思うし、今度連絡したときについでに聞いておこう。


 まずはこの装置をどうにかして、精霊を救い出さなければ。





 むーん……むーん……むむーん……。


 なんだこれ、ものすごく面倒臭い。カギを作ったときの比じゃない。

 一撃食らったら即死亡するアクションゲームやってみるみたいな感じだ。集中力を切らした瞬間、この檻を開けるのに失敗する。

 壊した方が早そうだけれど、壊すと確実に音で気が付かれるだろうし、これ壊すよりも王城を壊す方が簡単そうだし……。

 何より、壊した衝撃で精霊に止めをさしそうで怖い。


 檻を開けるために大変なのは、セーブができないこと。

 幸いなのはコンティニュー制限がないこと。開けるのに失敗したからと言って、城内の誰かに気がつかれるわけでもなく、セキュリティがより高くなるわけでもない。


 アイ○ナをノーセーブでクリアすればいいだけなのだ。


 できるかっ! いや、亜神となった今ならできるけれど、この檻の攻略には丸一日くらいはかかりそうだ。

 あとゲームでたとえたけれど、決してゲームじゃないからモチベーションが死にそう。


 でもやらないわけにはいかないか、と思っていたら、階段からコツコツと足音が聞こえてきた。

 とっさに『隠密』を使ってから、窓の縁に隠れる。


 いや、隠れられていないけれど。高いところにあるから『隠密』さえ使っておけば問題ない。


 やがて現れたのは、昨日も見た王妃様。

 彼女はまるで警戒した様子もなく魔法の檻に近づくと、その手前にある水晶に手をかざした。


 なるほど檻の機能が停止しないように、魔力を補充しているのか。

 うん。さすがにこの高性能な檻が何のエネルギーもなしに使えるわけがないし、無限の魔力供給が出きるような装置もない。


 だけれど、この装置に蓄えておける魔力はそんなに少なくはない。

 むしろそこらの魔法具よりも、魔力供給の必要がないだろう。

 具体的には100年は持ちそうだ。放っておいても先に世界が壊れる。


 100年放置したら、供給すべき魔力量は人一人でどうにかなるものではないけれど。


 それにしてもこれは良くない。良くないよ、うん。


 もしかしなくても王妃様、毎日ここに来るんじゃなかろうか。

 僕が檻を開けるのに推定丸1日。

 王妃が出て行ってからすぐ始めたとして、猶予は無し。

 明日少し早めに来る可能性だってある。こちらの作業が早めに終わる可能性もあるけれど。


 後一歩と言うところで邪魔が入ったら、たぶん2度とやりたくなくなるだろう。

 丸一日かけて立てたドミノを完成間近で倒すのと変わらないのだ。

 いや、ドミノならまだ1からやり直しにならない可能性もある。

 でもこちらは違う。邪魔が入れば1からやり直し。


 きっと死ぬだろう。死ぬに違いない。僕のモチベーションが。


 これは王族のスケジュールを把握しないといけないか?

 王妃が来られないから、国王自ら来ましたとかやりかねない。

 ハッキリ言って、王族よりも精霊の方が国にとっては重要だろうから。

 だからこそ、存在を知っているのはごく少数だとは思う。

 王族だけ、下手したら国王と王妃しか知らない可能性もある。


 だとしたら、王族が出払うタイミングならば、時間はあるだろう。

 例えば勇者のお披露目の時とか。

 ちゃんと情報を手に入れないといけないけれど、狙いはそのとき。


 前回はうまくいかなかったけれど、今回は僕一人だけだから、先手の一撃だけでフラーウス王国に勝利してやろう。


 王妃がいなくなり、念のためしばらく待ってから、窓から降りる。

 今日からは、王族の勇者のお披露目でのスケジュールを確認してから、前日から忍び込む算段を立てることにしよう。


 だから今日ここでやることは終わり、そう思って部屋を出ようと思ったら、何者かに呼び止められたような気がした。

 気のせいかとも思ったが、気のせいでないなら考えられるのは1つ。


「心配しなくてもまた来ますよ。それとも来てほしくないと思っているんですか?」


 黄色い光に問いかけても、返答はない。

 ならば勝手に喋るか。呼び止められたのが気のせいなら、とても痛い亜神になってしまうが。


「どちらにしても、僕は精霊を連れて行くように言われていますからね。このままにしておくという選択肢はないですよ。

 大変だとは思いますが、僕のために頑張って耐えていてください」


 そう。精霊がどれだけすり減ろうと、僕は彼ら――彼女ら――を神様の元に連れて行けばいい。

 だからぎりぎりまで耐えていてほしい。

 ざっと見た感じ、あと50年くらいは大丈夫そうだけれど。


 でも、精霊達がこの地に送り込まれてからと考えると、50年なんて瞬く間なのかもしれない。

 だとしたら、数日なんてそれこそ数秒感覚だろうから、やっぱり耐えていてほしい。


「それじゃあ、また来ますね」


 そういって部屋を出ようとしたとき、どこか嬉しそうな感情を感じた気がした。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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― 新着の感想 ―
[一言] 突然のアイワナw 急にマイナーで草。好き。
[気になる点] アイ○ナってなんですか?アイナナ?
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