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 僕が魔法具を見せてくれるように頼むと、フードお兄さんは少し考えてから、1つ提案をする。


「その靴を見せてくれたら、こちらもとっておきを見せてあげよう」

「はいている靴を見たいだなんて、なかなかいい趣味してますね」

「と、言いつつ脱ぐんだね」


 そりゃ脱ぐさ。別に靴くらい見られたところで困らないもの。

 見られて神造品だとバレるのだとしたら、ここでなくてもいつかバレるかもしれない。

 それなら見せても構わない。


「見せて困るものではありませんし。ですがちゃんと返してくださいね? 約束ですよ?」

「ああもちろん。ちゃんととっておきの品もお見せしよう」


 なんだか妙にテンションが上がっている。

 まあいいか。『契約』で縛ることができたのだから、困ることもない。

「とっておきの品を見せる」まで契約の範囲に加わったので、何を見せてくれるのか楽しみだ。


「見せるのは良いんですが、見て楽しいんですか?」

「ボクは奴隷商人であり、魔法具師だからね。どっちかと言えば、魔法具師としてのほうが有名だし。だから楽しいよ。見たことがない魔法具。どんな魔法がどのように込められているのか、楽しみで仕方がない」

「魔法具師って隠さなくていいんですか?」

「ははは、ただのアクセサリー売りじゃないってわかっていたみたいだし、今更だね」


 笑うお兄さんに靴を手渡す。

 靴下は履いていないので素足なわけだが、これはこれで開放感がある。

 靴下を履いていないのは、おそらくそんなものがなくても、快適に靴を履けるから。


 そもそもなんで靴下を履くのだろうか。

 実感としてあるのは、靴擦れ防止とか? 思いつくものとしては、雑菌関係だろう。水虫とかになるのかもしれない。

 これらに関しては、神様工房の靴だと関係ない。常に衛生的だと言えるし、靴擦れとかも皆無。

 いや、足が痛くならないのは、僕が亜神だからかもしれない。


 それにしても、お兄さんの絵面がヤバい。


 フードをかぶって顔が見えない推定男性が、少女が履くようなサイズの靴を舐めるように見まわし、時折フンスフンスと鼻息を荒くする。


 これはいけません。フィーニスちゃんにお任せです。


 いや、無理です。落ち着くまで適当にしておきます。


「この靴にどんな魔法がかかっているのかは知っているかい?」

「詳しくは知らないですけど、履き心地はすごくいいです。あと汚れません」

「なるほど、なるほど……」


 質問が来たので適当に答えると、フードお兄さんはまた自分の世界に入っていった。





 ぼーっとしていたらお兄さんは満足したらしく、靴を返してくれた。


「何かわかりましたか?」

「いいや、さっぱり!」

「その割に元気ですね」

「いやぁ……これでも結構魔法具師としては上の方だと思ったんだけど、さっぱりでねぇ。

 逆に楽しくなるよね。どう見てもただの靴だもの。一つの極致だよね。魔法具に見えない魔法具」

「もらいものなので誰が作ったのかは、わかりませんよ?」

「だよなぁ……一度会ってみたかったんだけど……。まあ、良いもの見させてもらったよ。

 やっぱりお嬢ちゃんに声をかけて正解だった。最高に面白かった」

「それなら、とっておきの品を見せてくれますね?」


 恍惚そうな声出すフードお兄さんを急かすと「ちょっと待ってて」と言って、どこかに行ってしまった。

 果たしてこれは『契約』の効果によるものなのか、それともテンションが上がっているだけなのか。


「量産もしているけれど、これがボクが作った中での最高傑作かな」


 しばらくしてやってきたフードお兄さんは、1つの指輪を持ってきた。

 綺麗な細工がされていて、貴族とかが付けていそうな感じがする。少なくとも一般人がするようなものではない。

 テーブルの上に置かれたそれに手を触れようとしたら、素早い動きで遮られてしまった。


「これはちょっと、不用意に触られると困るかな。どちらかと言うとお嬢さんが」


 仕方がないからこの距離から鑑定してみる。

 テーブルとかも一緒に鑑定されるから、面倒くさいんだよなー。


「隷属の指輪 ランク:A」

詳細:隷属魔法がかけられており、装着者を登録しているものの奴隷にする指輪。

   指輪の大きさは装着者に自動的に合わせられるほか、一度嵌めると登録者しか外せない。

   手順以外でこの指輪を失った装着者には、死の呪いがかかる。

能力:自動調節、隷属魔法、死の呪い、取り外し不可


 oh,どれいしょうのおしごと。


 いや、これについては予想がついていたけれど。

 奴隷商で魔法具師となれば、当然奴隷用の魔法具を作るだろうから。

 でも指輪って言うのは、意外だったかな。イメージとしては、首輪とか足枷だから。


「この指輪なんですか?」

「何だと思う?」

「奴隷につけるやつですよね。首輪とかの代わりに」

「何だ、分かってるじゃない」

「奴隷商で魔法具師ですから、ある程度予想は出来ます」

「普通は首輪だから、気が付かれないことが多いんだけどね。

 これを作れるのは、今のところボクだけだし。収入も良いから作ってるんだよ」


 まあ、一般的に首輪が主流であれば、これをつけることで奴隷を奴隷だと思わせないようにできるかもしれない。

 奴隷を奴隷として扱いたくない場合なんかだと、確かに便利だろう。


「でもこれ、間違って嵌めそうで怖いですよね。

 無理やりつけさせられるってこともありそうですし」


 じっと見た感じ、僕には効かない。取り外し不可だけは受けそうかも。

 でも死の呪いも魔法なので、魔法への抵抗力があれば弾けるし、隷属魔法も無効化できる。

 だけれどそれは僕が規格外なだけで、普通の人ならあらがえないだろう。


 それこそ平均ステータス250でも無理。

 魔法関係のステータスが500以上は欲しいところだ。つまり誰も抗えない。

 勇者ですら奴隷にすることができる。


 なぜ魔法具がこんなに高性能なのかについては、理由があるけれど割愛。

 いろいろな制限があるから、みたいに思っておけばいいと思う。


「それは大丈夫……と言うか、こっちは気が付かないんだね。

 この国の紋章を刻印してあるんだけど」

「王家にしか売ってないんですね。王家に限定しているなら、普段は気にしなくて良さそうですね。

 何と言うか最初に隠していたことが、もうボロボロですね」

「ボロボロでもいいさ。ボクの魔法具師としての魂には傷一つついていないからね」


 出会った時とだいぶイメージが違う。

 とても職人気質な人のようだ。


「そしたら今度は()()の方を見せてもらっていいですか?」


 僕が話しかけると「これを持ってくるつもりはなかったんだけど……」とつぶやいていたフードお兄さんが気を取り直したように「そうしよう」と答えた。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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