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これでもって、1日2回更新を終えようと思います。
王都2日目。今日やってきたのは、商業地域の奥まったところ。
つまりローブのお兄さんのお店です。どんな商品が置いてあるのか、わくわくしますね!
なんてテンションあげてみたけれど、ちょっと中に入りたくない外装をしている。
看板がボロボロで傾いていて、擦れていて文字を読むこともままならない。「○○○の○○○屋」みたいな。
お店屋さんみたいだし、何かを売っているんだろうね。
いや、知っているよ。お店だってわかってきたもの。一応何を売っているのかも、予想がついている。
そんな感じで、全体的に汚れているというか、年季があるというか。
貴族区とを隔てている壁を背にして建っているあたり、期待が持てなくもない。
まあ、いいや。中に入ろう。外にいてもできることはないし。
「こんにちは」
壊れそうな扉を開けて中に入ると、窓からの光しか入っていないらしく、かなり薄暗い場所だった。
僕には関係ないけれど。
それにしてもここはお店なのだろうか。
一応商品棚があって、商品も置かれている。商品は言っていた通り、アクセサリー類が多い。
いくつか鑑定してみると、とても高価な宝石を使っていることがわかる。デザインについては、ちょっとわからない。
綺麗だとは思うけれど、転生前はファッションとか気にしたことはなかったから。
だからシンプルなデザインのものが、魅力的に見えてくる。
なんといっても併せやすいから。
と、別にアクセサリー見物に来たわけではないのだ。
「誰か居ませんか?」
お店の奥に声をかけてみると、のっそりとフードお兄さんが出てきた。
「おやおや、いらっしゃい。本当に来るとはね。お嬢ちゃんはたいそう物好きと見た」
「フードお兄さんに比べると、そうでもないと思いますよ。
何せ僕に声をかけてきたんですから」
「そうかな? お嬢ちゃんほどの美少女なら、ついつい声をかけたくなるものだよ」
「こんな子供にナンパですか? 良い趣味してますね」
「ははは、お世辞って奴だよ」
こんな軽口をたたき合うのは、召喚される前も含めてかなり久し振りではないだろうか。
だからついつい楽しんで話してしまう。
お世辞でもナンパされたのはそれこそ初めてだ。
うむ、全くうれしくはない。
「せっかく来たんだ。アクセサリーでも買っていくかい?」
「確かにここにおいてあるアクセサリーは、良いものみたいですね」
「ふーん……それで、お気に召したかな?」
「いえいえ僕は商品を見に来たんですよ。
商品の他にアクセサリーを作っているみたいなこと言っていましたよね?」
「ふふふ、そうだったね」
「それにここのアクセサリーって、お兄さんが本当に売り物にしているものではないですよね?
何と言うか、手慰みに作ったものを売っている感じがします」
「……ほお」
お兄さんが興味深いと言わんばかりの声を出す。
ふふん、興味を持ったね。気になり始めたね、この僕のことが。
いや、なんかキャラ違うな。それに最初から気になっていたから、声をかけてきたのだろう。
まあ、思っていた反応をしてくれてよかったってことで。
「どうしてそう思うのかな? ここに置いているのも、結構頑張って作ったよ?」
「ここにある程度のものなら普段から持ち歩いていて、良いじゃないですか。商人ですよね?」
「そこに違和感かぁ……。確かにそうだけど、理由としては弱くない?」
「こんな子供に何を期待しているんですか。なんで売り物のサンプルを持っていないんだろう、って違和感だけでも感じ取れただけ十分ですよ」
「それ自分で言っちゃうかぁ」
苦笑するお兄さん。
確かに彼のスキルに『魔道具制作』があるからこういう思考に至ったわけだけれど、鑑定が使えることを教えてあげる義理はない。
それにしても、この世界の鑑定の有用さよ。
所持している人が少なくて、対策が万全ではないことが有用性を高めているのだろうけれど。
僕の場合、隠蔽されていても、改竄されていても、見ることができるのでどうあがいても便利なのだけれど。
「それでお兄さんは、奴隷商人なんですよね?」
「そこまでわかっちゃう?」
「馬車の中からたくさんの人の気配がしましたからね。まさかあの馬車いっぱいにアクセサリーを積んでいたわけでは、ないですよね?
まあ、問題の商品は見あたりませんが」
「ここにはないからね。こっちは本当に趣味の店。数日誰も来ないとかよくあるけれど、趣味だからね。売れたらボクのお小遣いさ」
ざっと値段を確認したところ、だいたい小銀貨から大銀貨くらいだろうか。確かに月に2~3売れれば、お小遣いとしては十分かもしれない。
お兄さんの収入がどれくらいかは、わからないけれど。
「じゃあ、本店に行くかい?
と言うか、お嬢ちゃんは本当に商品に興味があるのかい?」
「絶対というわけじゃないですが、居ても良いかなくらいに思っている感じです。あと本気で作ったアクセサリーが気になります」
「後者が本命みたいだね。まあ、いいや。とりあえず付いてきてくれるかい?」
お兄さんはそういって、店の奥に歩き出した。
お店の奥って秘密空間って感じがして、憧れるよね。
個人商店だと店の奥が居住空間になっていることもあるし、そう言う事を考えるだけで面白い。
ではこの店の奥は? と考えるまでもない。
何せこの店は貴族区の壁を背にしているのだ。
着いて行った先には、おんぼろなお店には似つかわしくない重厚な扉が待っていた。
お兄さんは羽織っている外套の袖から1本の無駄にごついカギを取り出す。
それから扉を開けようとするのだけれど、この扉開くのだろうか?
見た感じとても重そうなんだけど。
そんな心配をよそに、お兄さんは扉を難なく開けて、僕をその向こうへといざなった。
1週間ほど日間総合100位内に居ましたが、とうとう100位落ちしました。
いやぁ、長かったです。
長く居られたのも、評価ブクマしていただけた方のお陰です。
1日2回更新はこれで終わりですが、今後ともお付き合いいただけると嬉しいです。





