29
長かった……長かったよ。
ようやく王都に入る頃には、空は真っ暗。
いや、星が瞬いている。こういう世界だと、地球よりも星がよく見えて綺麗とか思ったりするのかもしれないけれど、生憎と王都の夜は明るい。
どこからリソース持ってきたのか外灯みたいなのが灯っているし、お店も結構開いている。
さすがに飲食店くらいだけれど。しかもお酒が出るところ。
お酒って缶チューハイを間違って1回飲んだことがあるんだけれど、普通にジュース飲めばいいじゃんって思った。
アルコールのせいで果物の味がわかりにくくて、好きになれそうになかったのだけれど、大人は違うのだろうか。
フィーニスは0ちゃいなのでわかんない。
でも、チョコレートにお酒が入っているのは好き。
冬の時期にでるやつとか、お高いなと思いながらも毎年1回は買っちゃう。
それはさておき、門を通り抜けるのが遅くなった人向けに、夜までやっている店がそこそこ有るのだとフードのお兄さんが言っていた。
すでに門は閉まったとは言え、さっき王都に入った人もそれなりにいる。そこから食事をして、となるのでお店はそれこそ夜が更けるまでやっているのだとか。
それができるだけの技術があるってことだね。
なんだか日本を思い出すよね。
思い出すと言っても、別に電気を使っているわけじゃない。
ファンタジーファンタジーな魔法具を使っている。
魔法の力で下手すると日本よりも高性能な道具達だ。
錬金術師とか魔法具師みたいな人たちが作っている。
僕のスキルにも確か『錬金術』があったので、元クラスメイトの誰かも作れるのだろう。
そんなわけで、宿屋も結構な時間まで開いている。
安そうなところから、高そうなところまで。
夜もこれくらい賑わっているなら、宿を取らずに一晩フラフラしていてもいいんじゃなかろうか。
むー……。さすがに無理か。
泊まるにしても安いところでいいのだけれど、見た目女の子なものだから、ある程度のランクの宿に泊まらないと視線が……こう……気持ち悪い。
と言うことで、中の中。平均的な宿屋に部屋を取って、おやすみなさい。
必要はないけれど、寝ることはできるのだ。
不要になったからこそ、睡眠の幸福を実感できる。
◇
まどろみ、まどろみ。
起きているのか、寝ているのか、わからない。
この時間が好き。この時間が嫌い。
微睡みは永遠ではない。いつかは目が覚めてしまう。
生は永遠ではない。いつかは死が訪れてしまう。
死は恐ろしい。痛いし、辛いし、寒いし。
だから必ず死が訪れる生が嫌い。
僕を殺したクラスメイトが嫌い。
――ああ、だから彼女を心底嫌うことができないのか。
僕たちをこの世界に拉致した元凶。召喚されなかったら、あんな結末はなかっただろう。
今も学校で授業を受けながら、あくびでも漏らしていたはずだ。
柄にもないことをして、死ぬまで辛い日々を送ることもなかったはずだ。
だけれど、死に沈んでいく僕は、彼女の邪悪な笑顔で満たされた。最後の最後で死を忘れさせてくれた。
だからきっと、憎みきれないのだろう。
憎いと言う感情は、とうに薄れているけれど。
今の僕は生きているようで生きていない、そんな微睡みのような存在。
生まれる感情も泡沫のように儚いもの。
崩れゆくこの世界のように。
楽しいものは楽しいので、そのように行動はするけれど。
近々消え去るこの世界には、究極的には興味がない。
◇
微睡みながら、なんだかよくわからないことを考えていたけれど、おはようございます。
すがすがしい朝。国境の町を出発するときとは大違いだ。
精霊の力のおかげで天候が穏やかなのか、それともたまたまなのか。
でも、今日は王都の探索日。晴れていることは良いことだ。
宿屋で食事は出ない。
素泊まりにしたからね。
何日泊まるのかはわからないけれど、せっかくの王都なので食べたいものを外で食べることにする。
食べる気がしなかった時に食べない為にも定期的な食事はなんとしてもノーだ。
なんか不健康にひた走っているような台詞だ。
定期的な食事、これ健康には大切。
朝食を食べないことより、食べたり食べなかったりする方が悪いと聞いたことがあるような気がする。
でも事実がどうかは、亜神の知識には存在しない。
別に人のためにいる神じゃないからね。
今は太陽が昇り始めた時間帯。
この世界にいる人たちは、日が昇ると同時に動き出す。
村では畑に行くし、町では市場が開かれる。
王都でも市場が開かれているけれど、なんだかここは騒がしい。
商人の呼び込みの声、動き回る民、雑談、etc.
活気があるとも言う。
特に準備することもないので、活気に突入するとしよう。
短いのは許してくだせぇ……途中の謎ポエムっぽいのも許してくだせぇ……
まだランキングに居ました。本当にありがとうございます。





