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やってきました旅立ちの朝。この宿屋とも今日でお別れ。
清々しい青空に迎えられて、気持ちを新たに新生活のスタートです……。と言いたかったのだけれど、なんか妙に風が強い。
あと雨も降ってる。ザーザー言ってる。
嘘つきました。
風と相まってなんだか、ゴーゴーみたいな音になってます。
なんでこんなに天気が悪いのか。
王都にいた60日間は、こんなことなかったのに。と思って、転生後から今までを思い返してみたけれど、3日に1回は雨が降っていたような気がする。
晴れていたなと思ったら、ローブでどうにかできるレベルではあったけれど、急に雨が降ることもあった。
ここまで酷いのは初めて見るけれど、年に数回急に天気がものすごく悪くなるって言うのであれば、可能性としてなくはない。
もしかしたら、雨期なのかもしれないし、台風がよく訪れる時期なのかもしれない。
僕の中の神的部分が、何やら反応している気がするけれど、気がしているだけだろう。
本当にヤバくなったら、神様テレフォン来るはずだ。
神様電話は、リンリンリン。
いつかも電話を模していたはずなので、ノリがいい神様ならリンリン鳴らしてくれると思う。
とは言え、旅立ちの朝にこんな天気って言うのは、出鼻をくじかれた感じがしてとても悔しい。
普通の旅人であれば、出発を延期するような雨だ。
でも雨に濡れながらの旅路というのも、また乙なものだと僕は信じている。
小学生の頃に雨の中傘もささずに、遊びながら帰った日のことを思い出す。
靴が水を吸って重くなり、一歩一歩進むたびに中敷きから水がしみ出してくる感じが、気持ち悪くも癖になったっけ。
服が濡れるのも気持ちが悪いんだけど、途中から開き直って楽しくなることもあった。
うん。こうやって思い返してみると、我ながらなかなかやんちゃな子供時代を送っていたみたいだ。
翌日風邪をひいても、小学生の頃なら学校を休めばよかったけれど、今回は濡れて風邪をひいても暖を取れる家はない。
下手したら雨風に打たれながら、一晩を越さないといけないかもしれない。
でも亜神、風邪ひかないし、寝ないから家も必要ない。
温度がどのくらいかはわかるけれど、寒いとかはないし、雨のデメリットとしては視界が悪くなるくらいだと思う。
そう言えば生き返った時に着ていた服。半袖のバルーン袖っぽいシャツと黒の袖のないベスト、下は深緑のロングスカート。靴は濃い茶色のブーツ。今はそれに加えて、ローブを買って羽織っている。
デフォルトの見た目的にはザ・村娘。みたいな感じだ。似たような格好の子をしばしば見かける。
ローブは市販のものだから、性能としては普通に着られるみたいなものだけれど、残りの服は正直どうなっているのかよく知らない。
よく考えてみたら、お風呂とか入ってないし、着替えた記憶もない――ローブだけはバシャバシャ洗っていたけれど、よく汚れるから。
ローブ以外、1か月以上着っぱなし……。
流石にアウトなのでは?
僕の身体の話をすれば、老廃物は出ないので、僕自身が原因となって服が汚れるということはない。
むしろそういう特性だからこそ、服を着替えるみたいな習慣に思い至らなかったのだ。
さらに言えば、毎日同じ格好の人とか、町の中には結構いる。
同じデザインの服をいくつも持っているのかもしれないし、僕みたいに旅人で基本的に服を持っていないということもあるだろう。
だから油断していた。周りがそうだから、僕も気にしなかったのだ。
集団心理に僕は騙されていただけなのだ。
意味の解らない言い訳は置いておいて、ずっと着ているのに常に快適なこの服は何なのだろう。
ちょっと鑑定してみるか。
「麻のシャツ(謎素材のシャツ) ランク:C(ランク:-)」
詳細:何の変哲もないただの麻のシャツ。
(詳細:神が作った布からできたシャツ。とても丈夫で破損しない。何で作られたのかわからない。
能力:不壊、自動洗浄、自動乾燥、着心地◎)
「麻のベスト(謎素材のベスト) ランク:C(ランク:-)」
詳細:何の変哲もないただの麻のベスト。
(詳細:神が作った布からできたベスト。とても丈夫で破損しない。何で作られたのかわからない。正しく着ることで、女性の胸をうまく支えてくれる。
能力:不壊、自動洗浄、自動乾燥、着心地◎、支え◎)
「麻のロングスカート(謎素材のロングスカート) ランク:C(ランク:-)」
詳細:何の変哲もないただの麻のロングスカート。
(詳細:神が作った布からできたロングスカート。とても丈夫で破損しない。何で作られたのかわからない。そのスカートは動きやすく初心者でも安心。
能力:不壊、自動洗浄、自動乾燥、着心地◎、行動補助)
「皮のブーツ(謎素材のブーツ) ランク:C(ランク:-)」
詳細:何の変哲もないただの皮のブーツ。
(詳細:神が作ったブーツ。何かの皮で出来ているが、それが何なのかはわからない。動きやすく、壊れない。
能力:不壊、自動洗浄、自動乾燥、履き心地◎、歩行補助)
あ、これヤバいやつだ。
コピー&ペースト感が否めない説明文だけれど、今それは些細なことだろう。
謎素材ってなんだよ。なんでも謎素材にするんじゃないよ。
神様が作ったって、それ神器ってやつではないのだろうか。
ランクが書かれていないのは、この世界の尺度では測れない系の物だからだろう。謎素材だからね。そうだよね。
もう服はこれだけでいいんじゃないかな。
それこそベストはブラジャーの代わりになっているらしいし、スカートも意識しないで行動できていたものだ、と改めて思ったけれどそういう能力付いているし。
神様の気遣いがすごい。惚れる。
雨の中を歩いても勝手に洗浄されるし、勝手に乾燥される。
うん、雨具買おうかなと思ったけれど、別に買わなくていいや。ローブだけ最悪買いなおそう。
ただ1つ思うところは、よくロングスカートで冒険者やっていて、何も言われなかったな。
装備はお金がかかるものだから、普段着に胸当てだけの人とかいるけれど、そういう人と一緒くたにされていたのかもしれない。
それはそれとして、下着ってどうなっているんだろうか。
まさか下着だけ、一般的なものとは言わないと思うのだけれど……。
◇
……うん。うん。ちゃんと下着も神製だったよ。
大きな違いは自動洗浄ではなく、そもそも汚れないこと。
つまり下着で歩けば、雨なんて怖くないぞー。
さすがに無理。いや人に見られること自体には何も思わないけれど、元人としてやってはいけないと警鐘を鳴らしている。
下着は地球の小さい布みたいな感じじゃなくて、ドロワースだった。
色気はないけど、リボンとかついていて可愛らしいデザインだったよ。
上はフリルが付いた肌着みたいな感じの奴。
胸を支えるのはベストの役割みたいで、ブラジャーはもちろんコルセットなんかもなかった。
さすがにコルセットをしていたら、気が付いたと思うけれど。
改めて自分の身体を見たけれど、自然と受け入れられてしまったことに、驚いたよ。
なんか男でも女でも変わらないな、みたいな。やろうと思えば、男に化けれるからかもしれない。
亜神になった時に、性別に対するこだわりも変わったのだろう。
でも一応、お約束だと思うから言っておこう。
「一度も使えずに済まなかったな、息子よ」
ええ、はい。日間総合で60位まで来たみたいでして。
どこまで行けるのかなと思うと、更新せざるを得ませんでした。
いっそ、伸びが落ち着くまでできるだけ、今の頻度の更新を続けたいです。
乗るしかない……このビックウェーブに……!
更新されなかったときは「ああ、力尽きたんだな」と思ってください。





