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本編に帰ってきました。

「国境を超える許可が下りたみたいで、よかったですね。

 それで、どうして僕にご飯を奢ることになったんですか?」


 グリュプスを倒した後、なんやかんやあって藤原と文月のコンビは国外に出る許可をもらったらしい。僕には関係がないので、その詳細はよく知らない。なんかうまくやったのだろう。

 それはそれとして、2人に誘われて食事をすることになった。

 奢ってくれるらしいので、ありがたくいただくことにした。


 というのは建前で、奢ってくれる=恩を感じているだろうから、王都の情報を貰えないかと期待しているのだ。

 期待するだけならタダだから。祈りの力はすごいから。


 そんなわけで、今は連れてこられた食堂にいる。


「フィーニスちゃんが」

「フィーニスです」

「……どうして俺はちゃん付けしちゃダメなの?」

「馬鹿にされているような感じがするからです」

「そんなに俺軽いかな? ユメちゃんはどう思う?」

「あ、あたしは、その、あの……ちょっと、軽薄なところはあるかなって……ちきゅ、前々から思ってたかな?」


 このコンビと話をすると、大体藤原と話すことになる。

 なぜなら、文月がコミュ障だから。


 だからこんな風に急に話しかけられると、あわあわと慌てだす。

 そして割と辛辣なことを言い始める。


 藤原がショックを受ける。


 強く生きてほしい。


「き、気を取り直して、今日フィーニスを誘ったのは、フィーニスのおかげで許可を得られたからだよ」

「はて、何かした覚えはないんですけどね」

「フィーニスが調査依頼を俺達に振ってくれたんだよね?」

「その件ですね。確かに言いました。どこかの誰かさん達が向いているだろうし、功績も欲しがっていたのでお得ですよって」

「そのお陰で早くに外に出られるようになったからさ。お礼をしようと思ってね。

 これでお別れだから、話もしたかったし」

「僕も聞きたいことがあったので、ちょうどよかったです」


 そう言って、グリュプスの肉を焼いたものを食べる。

 魔物も食べれるのは知っていたけれど、グリュプスは何と言うか筋肉質っぽい。

 噛めば噛むほど肉の味が出てくるので、ジャーキー代わりに噛み噛みしたくなる。


 要するにおいしい。


 何と言うかイノシシのお肉をそのままいくつかランク上げしたみたいな感じだろうか。

 日本で霜降りがとか言っている人は苦手なお肉なのだろう。

 霜降り肉とか食べたことないけど。


 一言で言えば、肉々しい。


 異世界転生・転移ものだと結構食レポしている作品多いけれど、残念ながら僕に食レポの才能はなさそうだ。

 おいしいとか言って、口から光線吐いてみようか。できそうだから困る。


「はは、おいしそうで何より」

「お二人が狩ったようなものですからね」

「そ、それは言いすぎだよっ。あっちこっちで、いろいろ言われて恥ずかしかったんだから」

不可視のカップル(インビジヴィーズ)とか、突然の死(スービトモリ)とか、言われていましたね」

「あ、あたし達は恋人じゃないし……グリュプスを倒してもないんだけど」


 顔を真っ赤にして文月が否定する。

 その隣でなんとも言えない顔で、笑っている藤原には是非強く生きてほしい。

 きっと、良い出会いがあるから。


「じゃあユメはミチヒサが嫌いなんですね」

「そういうわけでもなくって、恋人って言うか、友達なの。友達だから」


 うむ、脈はなさそうだ。

 通山だった時には、こういった軽口を言い合える相手はいなかったなと、ふと思い出す。


 最後の方なんか、話してくれる人もいなかったなー。

 あれから、まだ一か月とちょっとくらいしか経っていないと思うんだけれど、すでに懐かしい。


「ユメの恋路は置いておいて、何か聞きたいことがあるんですよね?」

「置いとか……ううん、置いておいたほうが良いよね。うん」

「で、ミチヒサは何を聞きたいんですか?」


 文月が混乱するくらいからかったので、話を本筋に戻そう。


「俺の事忘れているかと思ったよ」


 藤原は苦笑してから、真面目な顔をする。

 何か真面目な話をすることあったっけ?


「フィーニスはどうして俺たちが調査に向いているって思ったんだい?」

「ああ、そのことですか。話すのは良いですが、これからの話はここだけにしてくださいね。

 こう……僕の本業と関わってくるので」

「ああ、約束する」

「そんな神妙にしなくていいですよ。黙っていてくれるだけでいいんですから」


 うむ。なんかそれっぽいことを言っておこうと思って、適当に喋っているのだけれど、思いのほかに舌が回る。

 死ぬ前にこれくらい舌が回れば、また違った未来があったかもしれない。


「お二人のことを紹介したのは、歩き方とかちょっとした仕草とかが、それっぽかったからです。

 呼吸にも気を使っていますよね」

「それで本業って言うのは?」

「何を言っているんですか。狩りに決まっているじゃないですか。

 また自己紹介しましょうか?」

「いや、良い」


 またポカンとされてもあれだから、別にいいんだ。悔しくないんだ。

 別バージョンの自己紹介考えておこうかな。今はハンターになったし。亜神バージョンは……あっても使わないかな。


 亜神バージョンだと、あたち ふぃーにす 0ちゃいとかになるんだろうか。やめておこう。


「ではこちらから聞きたいんですけど、王都ってどんな様子でした?」

「どんな様子って言うのは?」

「何と言いますか、変わったイベントとかなかったですか?」

「えーっと……」


 とぼけているのか、本当に思い当たる節がないのか、勇者召喚をイベントと思っていないのか。

 勇者召喚が公になっているのかどうか、考えているのかもしれない。


「僕ですね、とある筋から勇者召喚を行ったって聞いたんですよ。

 勇者たちがどんな様子か、王都から来た二人なら、知っているんじゃないかなと思いまして」

「……聞いたことないね。その情報は確かなのかな?」

「んー、それを調べるのがしご……趣味ですから。

 ほら他国の人でも、勇者って気になるものですからね」


 ちょっと露骨かなと思いつつも、2人の思考誘導をやってみる。

 これで「勇者を調べに来た他国の諜報員」とでも思ってくれれば良いのだけれど。


 でもフラーウス王国の王族と比べると、恥ずかしくなるよなー。


 亜神になって思うけれど、なかなかに有能な王族だったと思う。

 だけれど、フラーウスのせいで世界の崩壊が早まったわけだから、王族としては有能でも人類としては無能というわけだ。


「で、勇者について本当に知りませんか?」

「……ここでの話は、他言無用なんですね?」

「あ、それだとちょっと不都合が出てきそうですね。それではお互いに、情報の入手元を明かさないって約束にしましょう」


 別に『契約』のスキルを使うわけではないけれど、性分なのか、仮にも神だからなのか、約束を破るというのは気が引ける。

 僕の提案に2人は顔を見合わせてから頷いた。


 何を分かりあっているのだろうか。これで付き合っていないって本当なんだろうか。

流石に1日2回投稿は辛いので、今日までになると思います。

思いますが、どうなるかはわかりません。何せ不定期更新なもので。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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[一言] _人人人人_ >突然の死<  ̄Y^Y^Y^Y ̄
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