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 藤原達と話をした翌日。いつものように、動物の狩猟依頼が来ていないかなと見に行ったら、なんだかとても慌ただしかった。

 こういう時は依頼が貼ってあるボードに何かしら書いてあるのだけれど、そこに人が溜まっていて、まるで近づけない。

 力づくでいけなくもないけれど、確実に怪我人を出す。


 仕方が無いので、受付で話を聞くことにした。幸いなことに、こちらには人が少ない。


「フィーニスさん。どうしましたか?」

「この騒ぎ、どうしたのかなと思いまして」


 見た目のせいか、いつも同じ依頼をこなしているからか、受付さんに名前を憶えられてしまった。

 もしかすると、裏で「動物さん」とか「狩人さん」とかあだ名をつけられているかもしれない。

 逆に言えば、それ以外では目立っていないだろう。


 動物狩りの依頼は、F級の冒険者が受けるべき依頼とされているし。

 大事なのは戦闘力ではなくて、狩りに適した武器を使えるか、狩りをできるだけの知識があるかだから。

 F級でも狩れるし、狩れない人はC級でも狩れないと言われる。


 報酬はF級の中では高いくらいなので、動物狩りが得意でも冒険者たちの反応は微妙になるのだ。

 無理に狩らずとも中央に行けば、家畜として飼われているし、そっちの方がおいしい。


「掲示板に貼られているので……」

「僕が見られると思いますか?」


 視線を掲示板に向けると、人の壁が見事に形成されている。

 壁と言うか、バリケードだろうか?

 受付さんも僕の言いたいことに気が付いたのか、「失礼しました」と苦笑する。


「南の森の比較的浅い場所で、殺戮熊が見つかりました」

「僕がいつも行くところですね。浅いところって、危なくないですか?」

「はい。見つかった殺戮熊は何者かによって殺されていましたので、その個体がいるということはありません。ですが、森の奥で狩って連れてきたような跡もなく、誰が倒したのかも分かっていません」


 それは大変ですね。ええ、本当に。

 誰が倒したんだか。そういうのは早く報告しないといけないのに。


「ですから、調査が終わるまでD級未満の冒険者は、南の森に近づかないようにと助言しているところです」

「助言なんですね」

「はい。冒険者は基本的に自己責任の世界ですし、何よりどうしても森に入らないと今日生きていくだけの貯えがないという人もいますから。

 ですから、コレギウムで禁止するということはありません」


 お金さえあれば、どの格上の依頼を受けることも可能な世界。

 確かに禁止するのは難しいのかもしれない。


「そう言えば、フィーニスさんは狩りが得意でしたよね」

「確かに調査は出来るかもしれませんけど、いまD級未満の冒険者に近づかないように言っていましたよね? 殺戮熊に会ったらさすがに死にますよ?」


 今の僕は見た目ステータスではE級並みだし、ランクで言えばF。

 そもそもC級の殺戮熊が見つかったのに、なんでD級未満対象なのだろうか。

 何にせよ、この依頼を受ける気はない。面倒くさい。依頼自体はそんなでもないけれど、その後のことを考えると面倒くさい。


「そうですよね……」

「受けてくれる人いないんですか?」

「特別依頼を出してはいるのですが……」


 特別依頼は依頼を受けるときに保証金が必要ない代わりに、指定されたランク未満の冒険者は受けられないもの。

 緊急性が高いものが多いので、報酬も高めになっているのだけれど、受けてくれる人がいないらしい。

 関係する気がないとはいえ、いつもの森に行けないのはちょっといただけない。


 だとしたら、生に……もとい、コレギウムの評価を欲している人を紹介してあげよう。

 いい具合に、いい能力を持っている人もいることだし。


「そう言えば、僕と同時期に冒険者になったっていう人がいますよね?」

「はい。お会いしたんですか?」

「そうですね。その人たちなんですけど、同業者っぽい感じがするんですよね?」

「と、言いますと?」

「何と言うか、足運びとか、気配の薄さとか。狩りはしたことないみたいなこと言っていましたけど、こっそり行動するのは上手そうでした」


 受付さんがムムムと、考えるような表情を見せる。

 正直足運びとか気にしていなかったし、気配も薄いことはなかったけれど、藤原が隠密を持っているのは確実。文月もそれに準ずるくらいの能力はあるだろう。

 なにせお城から抜け出してきたのだ。変装も堂に入っているというか、たぶん『亜神感覚』に統合された『鑑定』がなければ正体は分からなかっただろう。


 彼らもコレギウム長の信頼を得たいだろうから、受けて損はないだろうし。

 何より王都から走って5日でやってきたというエピソードを伝えなかったことも、評価してほしい。

 それに僕がけしかけたのだから、死なない程度に影からサポートするのもやぶさかではない。

 南の森が解放されるまで、おおっぴらに動けないわけだし。


「受けてくれますかね?」

「武者修行に世界一周したいと言っていたので、国境を超える許可をちらつかせれば受けてくれると思いますよ?」

「……参考にさせていただきます」


 ぜひとも参考にしてほしい。

 出来れば、僕が推薦したことも伝えてほしい。彼らには勇者がどうなっているのか、聞いておきたいから。

 でも、推薦したことを知られると、厄介事を押し付けたとか思われるかもしれない。


 まあ、その時はその時だ。


 恩を売れたら話を聞くし、売れなかったら最悪この町を出るのも良いだろう。

 この町で知りたかったことは別の町で調べることもできるし、お金もそこそこ稼げたと思う。

 D級に上げてから動くのが良いのかもしれないけれど、表示ステータス的に難しいと思う。


 D級に必要とされるステータスは最低平均50で、僕の見かけは現在約35にしている。

 一般の成長速度は知らないけれど、この町に来てまだ30日もたっていないのだ。

 30日で平均15、総ステータス105も上がるとなると、勇者の成長速度すら上回る。


 勇者の成長速度が異常なこと、D級が戦闘職として一人前といわれることを考えると、僕がD級に上がるまでには年単位で考えたほうが良いと思う。

 それとも魔物や動物を倒すことで、早く成長するとかあるのだろうか。

 ううむ……素のステータスの変化を見たら、何かわかるかもしれない。

 もしかすると、全く上がっていない可能性もあるけれど。上がった気がしていないし、実は変化なしが可能性高いかもしれない。


 考えるよりも、素の自分を見てみるとしよう。


フィーニス


年齢:0 性別:女


体力:1717

魔力:1954

筋力:1621

耐久:1440

知力:1618

抵抗:1597

敏捷:1803


称号 :亜神


スキル:言語理解

    勇者(6)

    騎士(6)

    賢者(7)

    聖女(2)

    隠密(5)

    亜神感覚(1)

    契約

    創造

    テイム




 ステイ。ステイ&クール。


 とりあえず落ち着こう。

 僕のステータスは亜神になった段階で、4桁はあった。だからちょっとした錯覚。

 そこまで上がっていないはずだ。幸い僕は暗記系は苦手だった。正確には興味がないものの暗記は苦手だった。皆そうか。


 で、僕のステータスだけれど、1000越えているなというところだけしか興味がなかった。

 だから、覚えていない。覚えていないのだ。


 なんだか鮮明に数字が思い出せるような気がするけれど。

 平均で172くらい上がっている気がするけれど。


……


 こんなに記憶力が良いなんて、亜神になって後悔したのは、これが初めてだッ……!

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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