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『神様神様。僕ってまだこの世界いても大丈夫な感じですか?』
『はいはい。大丈夫だよ。フィー君』
『あれ? 名前はそのままなんですね? 名は体を表すとか何とかで、大事だったんじゃないですか?』
フィーニスだってその意味は「終わり」。世界の終わりを自由に歩き回る存在だからか、それとも世界の終わりに地上に降りた亜神だからか。
どちらにしても、今の僕は終わりに関する神という事か。
確かに創造神とは逆っぽい。
『きちんと名前を付けるなら、デアコンティラルフィーニスって感じかな』
『ごついですね』
『だから神は今まで通り呼ぶよ。
「契約」と「終末」を司る女神ってところだね』
『契約も入るんですね』
『フィー君みたいに亜神から神になった場合、亜神の間の行動とかを参照して且つ、空きがあるところに振り分けられるんだけど、フィー君の場合は生前の評価も入っている感じだね』
『そうなんですね。ところで契約神はともかく、終末を司る神って何したら良いんですか?』
『今みたいなこと』
『何て言いました?』
なんか聞き捨てならないことを言われたような。
『終末神は崩壊が確定した世界に、自由に行き来することができる神だね。
崩壊する世界から拾い上げるものを選別するのが役割ともいえる。そのついでにその世界を作った神にお使いを頼まれるかもしれない』
『えー……』
『元からあまり遠慮がなかったけれど、さらに遠慮がなくなったね』
『一応同じステージに上がりましたからね。神様よりも格下なのは重々承知してますが』
『別に構わないけどね。フィー君は神の子供みたいなものだし』
『それなら、子供らしく残りのお願いはしっかりしますね』
『はいはい』
それじゃあ、遠慮なく永遠の微睡を願おう。最初からそのつもりだったし。
『話は戻りますが、終末神だからこの世界にいても大丈夫なんですね?』
『そう言うことになるね。その代わり世界の崩壊は加速しているけど。フィー君の顕現に力を吸われているから』
『うわー……何ですかそれ。世界の天敵じゃないですかぁ……』
『その辺は考え方じゃないかな? 延命させることが最善じゃないなんてことは、良くあることだしね』
確かにそうかもしれないけれど。
深く考えるのはやめよう。神になった後はニート生活をするんだから。
『まあ、了解です。やることやったら、そっち行きます』
『気を付けて』
神様との通信を終えて、フラーウスに向かうことにした。
◇
終末神の顕現のせいか、世界はもうボロボロになっていた。
地面には亀裂が入り、海は荒れ、風は気ままにものを吹き飛ばす。
それでも人は生きている。けなげと言うか、しぶといというか。
とは言え、さすがに世界の崩壊を予感しているのか、絶望している人もいるし、開き直って暴徒と化している人もいる。
徐々に世界が崩壊へと向かっていったら、ヒャッハーとか言い出す人もいたのだろうか?
さてさて、フラーウスの状況だけれど、案外まとまっていた。
アル父の統治者としての能力が……と言うわけではなくて、世界の崩壊が王族達のせいだと国民達に思わせているからだろう。
最後の王族、トパーシオン王女が生きているから今のような状況になっているのだと、そう思っているわけだ。
というか、そう思って縋りついていないと心が折れてしまいそうなのだろう。
だからきっと、彼らが絶望するのはトパーシオン王女を裁いたところで何も状況が好転しないとわかってから。
国民たちの怒りはそのあとはどこに向かうのだろうか。
さて今までであれば、ここからスキルを使って情報を集めるのだけれど、今はスキルがなくなってしまった。
その代わり、本神様としての力が使えるので、そちらで代用しようと思う。
簡単な話、ルルスみたいに人から見えなく出来るのだ。
この世界の法則に縛られていた亜神時代とは違って、何でもできそうな感じがする。
だけれど、どれも大味な感じがするのも事実。
でもニート生活をする予定なので、そこまで気にしなくても大丈夫だろう。
という事で、情報を集めてきました。
ここに戻ってきた王女はまず見せしめに晒されている王族達の首とご対面。
状況を理解したらしいトパーシオン王女は一度は姿を隠したものの、優秀な城の者たちが即座に発見し、今は牢に閉じ込めているのだとか。
明日1日磔にして晒した後、明後日には公開処刑になるらしい。
思いのほか速足の進行だけれど、民達の不満がそこまで溜まっているという事だろう。
王族のせいで世界が崩壊しているのだと思っているわけだし、出来れば今すぐにでも殺したいと思っている人が多そうだ。
明日磔にしている間に殺されやしないだろうか?
王族達の処遇を思い出すに、石を投げるは普通に行われるだろうし。
こうなると明日まで暇なので、王女様と最期のお話でもしに行こうかな。
この世界にいる知り合いの中だと、それなりに付き合いがあるし。





