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 切られた感想ですが。特に痛くもかゆくもありません。

 そのかわり、体が重くなって、なんだか大切なものが抜けていく感じがしました。


「フィーニス様何をなさるんですかっ」


 なんだかルルスが怒っている。

 あー、そうか。ルルスは僕が神様になんて願ったのかしらないのか。


「大丈夫ですよ。ばっちり生きてますし」


 ほらほらと、ルルスに無事を見せつけていると、「余裕だね」とズィゴスさんの声がした。

 王女達は言葉を失っている。


「余裕ですよ。これでわたしは対象外になったでしょうし」

「そうだね。だけど君が守っていた人たちは、やらせてもらうよ?」

「それは止めてほしいかなって思うんですよ」

「できるものなら、ご自由に」

「分かりました。じゃあ止めますね」


 振りかざした能力付きの方の大剣を掴む。

 折らないように気をつけて。

 トパーシオン王女を殺させる気はないけれど、別にズィゴスの行動自体を止めようとは思っていないから。


 この剣がなくても、多くの人を殺せるだろうけれど、この剣で殺してこそかもしれないし。


「……確かにステータスもスキルもなくなったはずなんだけど」

「確かにわたしから()()()()()()()が消えて、この世界の亜神ではなくなりましたね」

「それなのに、どうしてこの剣をつかめるのかな?」

「それは簡単です。亜神でなくなると同時に、正式な神にしてもらうように願っていたんですよ。

 ズィゴスさんも神様に頼んでいたでしょう? わたしも似たような事していただけです」


 本当は世界崩壊を間近で見るためのお願いだったのだけれど、まさかこんな事になるなんてなー。

 ズィゴスさんと出会ってからは、可能性としては考えていたけれど。

 ルルスが何か言いたそうな目をこちらに向けている。


 現状何の神になったのかよく分からないと言うか、本当に変わったのかどうかも怪しいけれど、もしかしたら世界にいられなくなるような神になっていた可能性もある。

 だからルルスが守ってくれたことは、無駄ではなかったのだけれど。


 僕が何の神なのかは後で神様が教えてくれるとして、ズィゴスさんに再度問いかけよう。


「引いてくれませんか?」

「その方が良さそうだね。このままだと、どうあがいても勝てなさそうだ」

「急に話が分かりますね」

「勝てない勝負をしても仕方がないからね」


 そう言ってズィゴスさんが大剣を収める。

 と、見せかけて……とやってくるかと思ったけれど、そんなことはなくてなんだか少し拍子抜けした。

 もともと、僕に勝てそうだったから戦い始めたようなものだしね。


「そう言えば、ここに来るまでに国だったものがあったと思うんですが、どうしたんですか?」

「とりあえず放置してきたよ。いつでも攻略できるだろうから、優先度は低いし」

「それは安心しました。とりあえず、わたしはその場所に行きますので、別のところに行ってください。東とかおすすめです」

「それはそっちに行けという脅しかな?」

「いえいえ、こっちに来るなと言う脅しです」


 西には文月達がいるけれど、ズィゴスさんは殺さないだろうし、そこまで助ける気もない。

 だからフラーウスがあったところに来なければ、別に僕は構わない。

 東にもエルフの前王とかいるし。


「まあ、良いかな。僕は東に向かうとするよ。それじゃあね、亜神さん」

「今し方神になりました」

「そうだったね。じゃあ、改めて。じゃあね、神様」

「はい、ズィゴスさん。残り短い魔王ライフを楽しんでください」


 その後は記憶をなくして、元の世界に帰るのだろうけれど。


 東に向かうズィゴスさんを見送って、神様に問い合わせようかと思ったら、半ば放置していた方向(トパーシオン王女)から声がかかった。


「国だったものって何かしら?」

「それは実際に見た方が早いと思いますよ。連れていってあげましょうか?」

「……ええ、一刻も早くやってくれるかしら?」


 一瞬迷いがあったけれど、何かを決意したようにうなずいた。

 さて、彼女が何を考え、どんな結論に至ったのか、それは元フラーウスで見せてもらおう。

 でも、世界の中で力使って良いのだろうか?


 駄目だとしたら、神様から何か言われるだろうから大丈夫かな?


 自分が何の神なのかはわからないけれど、何が出来そうかくらいは分かる。

 とりあえず、瞬間移動とか空間移動とかは出来そうにないから、時空神ではないかな。

 ついでに創造神でもない。むしろ逆な感じがする。じゃあ破壊神かと言われると、それもなんか違う気がする。


 それよりもトパーシオン王女たちをどう送り届けるかだけれど、空を飛ばせるしか僕には出来なさそうだ。

 これは僕という神特有の能力ではなくて、一般的にどんな神でもできること。

 安全性は保障するけれど、空を飛んだことがない人が体験してどう感じるかは、僕にはわからない。


 浮遊感とか何とかで気持ち悪くならないことを祈るばかりだ。


「それじゃあ、良い結末を」


 手を振ってフラーウス最後の王族を処刑場に送ってあげる。

 それと同時に地震が起こった。

 グラグラと揺れに揺れて、立っていられない――と思われる。僕は普通に大丈夫だけれど。


 というか、地震で良いのだろうか? なんだか地面に亀裂が入っているけれど。

 亀裂と言うか、崖になっているというか。

 パカッと割れた地面は、ぴょんとジャンプしなければ落ちていたんじゃなかろうか。


 まさか僕がいたから割れたとか言わないよね?


「この世界も終わりがもう目前みたいですね」

「そうですね。さっきから何か言いたそうじゃなかったですか?」

「いえ、確かにありましたが、もういいかなと思いまして」

「そうですか。それじゃあ、ひとまずの決着を見に行きましょう。その前に神様に僕がこの世界にいても大丈夫か確認するのが先ですかね」


 というわけで、リンリンリン……っと。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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