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 突然現れた謎の男。見た目は好青年と言う感じで、通山とは真逆の雰囲気を感じる。これが陽キャと言う奴か。

 大きな剣で市成を刺して引き抜いたのだけれど、どうも市成は死んではいない様子。

 試しに鑑定をかけてみてもはじかれる。


 嫌な予感は当たっていたようで、目の前の彼はちょっと普通の存在じゃない。

 なんて呼んだら良いのか分からない、ちょっと困った存在だ。

 あとルルスに聞いていたけれど、どうやら水精霊を連れているっぽい。

 カエルレウスで暴れた時に見つけて連れてきたのだろう。


 でもまあ、とりあえず対話からはいるとしましょう。


「わたしはフィーニス0歳。そろそろ1歳かもしれないけれど、忘れちゃったわ。職業は亜神。よろしくね、勇者兼魔王さん。それともズィゴスって呼んだ方が良いかしら?」

「呼び方はご自由に。僕は哀れな捕らわれ人さ。今もこの世界の人を殺したくてたまらない。元は違ったのにね」

「わたしも神様にパシリとして生き返らせられたので、似たようなものかもしれませんね。貴方ほど縛りはきつくありませんが」


 と言うことで、勇者を核にした魔王(ズィゴス)が彼だ。

 元となった人の人格が死んだわけではないけれど、魔王(ズィゴス)になったことで歪められている。

 亜神になるときに魂をいじられた僕とやっぱり似ている。


 僕の方が待遇はいいけれど。


 あと挨拶フェイズを終えて口調を戻したら、目を丸くされた。

 これで会話の主導権はこっちのものだな。違うけど。


「ところで連れている精霊をくれませんか?

 代わりにわたしが……と言うか、神様が願いを1つ叶えてくれますよ。叶えてくれないものも有るみたいですが」


 僕の提案にズィゴスがなんだかとても、複雑そうな顔をしている。

 これは、胡散臭いと感じていると言うよりも、神と言う存在に対する何とも言い難い不快感とかそんな感じだろうか?


「提案としては魅力的なんだけどね、僕の中の魔王の部分があまり良い顔をしてくれないんだよ」

「そうでしょうねぇ……。でも、勇者的には元の世界に戻りたいとかないんですか?」

「それって可能なの?」

「神様、どうなんです?」


 僕では判断できないので、とりあえず聞いてみる。

 返答は『大丈夫だよ』だったので、「大丈夫だそうです」と返答しておく。

 ズィゴスはしばらく何か考えていたかと思うと、青い光の球体をこちらに向かわせた。


「じゃあ、すべてが終わった後、ここでの記憶を消して転移させられた時に戻してくれないかな?」

「だそうです」


『それは……ちょっと面倒くさいかな』

『じゃあ大丈夫ですね。精霊が一人返ってくる訳ですから』

『まあ、良いよ。それを実行するのはどんな場合でもかい?』

『そうですね。どんな場合でもやってあげてください』


「良いそうですよ」

「それはこの子を返す代わりということで良いかな?」

「構いませんよ。渡してもらった直後にわたしを殺しても、問題はありません」

「それは良いことを聞いたかな」


 さわやかな笑顔を見せるズィゴスさん。なんだか嫌な予感しかしないなぁ。

 このまま何処かに行ってくれないかなぁ……。

 ひとまず精霊を送り、僕の最後の仕事を終わらせる。

 それから、わずかな期待を込めて、ズィゴスさんに提案してみることにした。


「このまま帰ってくれたりしませんか?」

「それは無理だね。そうじゃないと、わざわざここまで来た甲斐がないよ。こんなにもこの世界を色濃く身に宿した存在がいるのに。

 それにここには、僕の討伐対象もいるからね」


 そう言って、ズィゴスがトパーシオン王女とそのお付きの方を見る。

 そうかぁ……王女達が対象なのは言わずもがなだけれど、僕もその範囲内かぁ……。

 ズィゴスが何を基準に選んでいるのかは知らないけれど、この世界の力を持つ人型とかだと、僕はもろ範囲だろうね。

 この世界の亜神なのだから。


 だとしたら、わざわざここまでやってきたのは、僕がいたからってことになるのかもしれないね。

 ズィゴスは完全にこの世界側の存在なのだから、探知能力高そうだし。


「本当はもっと早く来たかったんだけれど、念入りに召喚してくれた国を潰していたら、結構時間がかかったんだよ」

「世界的に見れば、召喚したことで崩壊がさらに縮まったようなものだし、勇者的に見ても誘拐犯ですもんね」

「魔王的にも勇者的にも念入りに殺すだけの理由はあったよね。

 僕個人で見ても、処刑に近い召喚なわけだし」


 崩壊寸前の世界への召喚なんて、確かに処刑のようなものだ。

 本当に運がないズィゴスさんですこと。


「ところで、君は亜神とか言っていたけれど、それはとんでもなくステータスが高い存在ってことで良いのかな?」

「スキルもいくつも持っていますけどね」

「そう言うことなら、話は早そうだ。倒されてくれないかな? 死なないとは思うから。そこの彼みたいにね」


 そう言って市成の方を見る。

 思いっきり刺されていたけれど、死にそうにないな。


「それはちょっと受け入れられないですね。むしろこちらとしては引いてほしいんですが」

「今言ったとおりだよ」


 そうですよね。知っていました。

 さて困った。予想でしかないけれど、僕はズィゴスに勝てない。

 負けることもないかもしれないけれど、勝つためには鉄の塊をその辺の石ころで削りきるくらいの根気が必要になりそうだ。


 とりあえず、僕の推測が合っているかどうかを確かめてみようか。

 でもきっと、合っているんだろうな。神の頭使って考えたからね。

 間違えていた方が問題なのだ。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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― 新着の感想 ―
ここで元祖勇者?が誘拐先の崩壊しかけの世界に囚われて魔王(ディゴス)やらされるのか〜〜〜〜!!!とテンション上がりました。
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