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 まさか奴隷の指輪が壊れるとは思っていなかった。

 だけれど、確かに僕のステータスに迫るほどの能力の上昇があれば、奴隷の指輪なんぞ壊れても仕方がないか。

 そしてトパーシオン王女を狙うなんて思わなかった……なんてことはない。さすがにね。


 散々馬鹿にされていたみたいだし、僕としても別に助ける義理はないのだけれど、ここで裁かれるよりもっと裁かれるべき場所があると思うので、助けておく。

 やっぱり、フラーウスまで帰ってほしいし。ズィゴスに狙われても助けるつもりではいたので、予定通りと言えば予定通りでもある。


 なんで市成が凶行に走れたかだけれど、指輪が壊れた段階でトパーシオンの配下のカテゴリからはみ出たのだろう。

 すでに王女との話が終わっているので、僕自身への制約もなくなっている。

 


 だけれどそうか。ステータス合計って言ったら、殺したらステータス下がるって思うもんなんだね。

 ちょっと期待と言うか、予想はしていたけれど、ここまで上手く行くとは思っていなかったよ。

 僕はちゃんと24人+αのステータスって言ったはずなのだけれど。


 死んだはずの磔馬(たくま)のステータスも含まれているよと、教えたつもりだったのだけれど……。

 気が付かなかったというなら仕方がないと見ていたのだけれど、あまり感情が動くことはなかった。多少は思うところはあったけれど。

 寿命が云々といった段階で顔を青くしていた人もいたし、僕が通山だと言った所で驚き気まずそうに目を逸らした人がほぼ全員だった。


 中には何か言いたそうな人もいたけれど、結局言えないまま。


 市成が山辺をかばった月原を切り殺したところで、恐怖が伝染した。

 僕に対して懇願するような表情を見せる者、助けてと叫びながら逃げる者、市成を罵倒しそのまま殺された者。

 男子も女子も関係なく、市成によって殺された。


 月原にかばわれた山辺も、憔悴したような顔をして座り込んでいたら、早い段階で殺されていた。

 ステータス差があるとはいえ、防御重視の「聖女」なら逃げるくらいできたかもしれないのに、それもせずに死んでいった。


 異世界に攫われて、気が付いたら奴隷にされ、戦争で使われて、仲間の一人が奇妙な死に方をして精神的に参っていたところで、同じ転移者に殺される。

 こうやって文字に書いてみると、その人生は悲惨と言っていいもので、様を見ろ(ざまぁみろ)と思わなくもない。

 だけれど、そうやって表情に出すのも癪だったので、退屈そうな表情を作っておいた。


 僕にとって彼らの死は全くの無意味だったと思わせるために。

 実際ほぼ無意味だけれど、少しばかり心が晴れてしまったので、隠しておこうかみたいな感じ。

 こういった時、亜神というのは便利だ。表情を思うままに出来るから。


 僕に止める理由もないので、勇者達が全員死んでしまうのを見ていたのだけれど、そこからトパーシオン王女を狙ってきたのでしぶしぶ間に入ることにした。


「どうして止める? お前が通山ならこの女には思うところもあるだろう?」

「ないとは言いませんが、わたしを殺した人ほどじゃないですよ。

 それに彼女には彼女が行くべき場所がありますからね。それを見届けようかなとかは思っています」

「ふん、生き返ったからって余裕ってか?」

「別に生き返りたくはなかったんですけどね。ちょうどいいからって、神様にパシリを命じられただけですし」


 先ほどとは違い、市成が饒舌になっている。

 僕に勝ち目がなくなったと思っているのだろうけれど、それにしてもわかりやすい反応をするものだ。


「だからまた死んでも構わないってか?」

「死にたくないですし、簡単には死ねないんですよね。これでも神の使いなので」

「強がりを。お前のステータスはさっきまでとは比べ物にならないほどに、落ち込んでいるはずだ」


 そう言う市成の身体もまだまだ完全ではないと思うのだけれど。

 先ほどまでよりも明らかに動きが遅いし、倍率的に2倍にしている感じかな?

 まだまだ体中痛いだろうに、それを無視できているのはアドレナリンの仕業なのかもしれない。


「まあ、いいさ。もうお前には負けない。ぶっ殺してやる」


 吠えるように言った市成が、次から次へと攻撃を仕掛けてくる。

 でもたぶん、目をつぶっていてもすべて避けられるんじゃないかと思う。

 それでも適当に相手をしてあげていたら、市成がかってにバテ始めた。


 スキル限界だと全く動けなくなっていたので、普通に体力の問題か。


 僕から距離を取り、肩で息をしている。そして悔しそうに、こちらを射殺さんとばかりに睨みつけてきた。

 なんかすごく小物臭がする。


「どうしてだ! お前は弱くなったはずだ」

「どうしてそう決めつけるんですかね? 別にわたしのステータスは1たりとも下がっていませんよ?

 それに最初に言ったでしょう? 24人+α分のステータスの合計値だって。+αはわたしの元々の分と言うか、通山真の持っていたステータスです」

「それじゃあ、何か? 勇者を殺してもステータスは下がらないってことか? だましやがって……ッ」

「騙すも何も、そんなこと言った記憶がないんですが」


 たぶんこれを言っても仕方がないんだろうなぁ。

 見たいものしか見えない、聞きたいことしか聞けない、そんな"人間"になってしまったんだろうし。


「お前のせいで大勢が死んだ」

「貴方が殺したの間違いではないですか?」

「お前が紛らわしい言い方をしなければよかったんだ。そうしたら殺すことなんてなかった。

 だが、お前も運が悪かったな。クラスメイト達を殺して、オレももう一回り強くなった。スキルも1段階強くなった」

「そんな感じしますね。寿命が世界崩壊とどっちが早いか、と言った所まで来てます」


 それこそ「勇者」を使わずとも古代竜に勝てそうだ。

 加えてあの言い方から考えると、スキルでのステータス上昇倍率の上限が上がったのかな?

 それはそれは、どうなるのか楽しみだ。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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