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ここからがおそらく最終章になります。
今日は12時に短いのも投稿しているので、ご注意を。
やってきましたニゲル国。王都近くまでフラーウス軍が来ているから、どういう国だったのかというのはわからないけれど。
何せ道中の町や村は壊滅しているようなものだったからね。
略奪、虐殺はお手の物って感じ。
自然的に見ると、可もなく不可もなく。
全体として安定しているけれど、ウィリディスほどでもないって感じだろうか?
それ自体は別に驚くべき事でもない。
「やっぱり、ここの精霊搾取されていませんね?」
「そのようですね。今では力も感じます。世界崩壊の前兆が押さえられているのは、闇の精霊が頑張っているからでしょう」
「ルルスも頑張っているとは思いますけどね」
「私は精霊としては少し強くなりましたから。だいぶ余裕がありますよ」
精霊として少し強くってすごい言葉だと思う。
精霊って世界的に見ると、最上位の強さのはずなんだけれど。
まあ、僕の近くにいればそうなるか。仮にも神なので、精霊に負けることはない。
ステータス的に僕に届きうるとしたら、「勇者」の市成がどれだけスキルを使いこなせるのかになると思う。
ステータスを10倍に出来るのであれば、追いつかれそうだ。
「さて、とりあえずニゲルの王様に会いに行きましょうか」
目指すは王都の中心部。スムーズに話が済めばいいのだけれど。
◇
ニゲルの王都は殺伐として……などはなく、戦時の緊張感はあるものの、フラーウスと大差ない感じがする。
いや、発展具合で言えばフラーウスの方が上だろうけれど、特別治安が悪いと言うこともなさそうだ。
人も喧嘩っ早いと言うこともなく、僕が一人で歩いても因縁付けられることも、さらわれることもなさそうだ。
むしろ気さくに挨拶してくれる。
今の見た目が魔族だからと言うのはありそうだけれど。
これエルフとかだったらさすがに何かされていたのだろうか?
そんなわけで、歩いて王城までたどり着きました。
門は開けられているが、門番が居て通り抜ける人をしっかり観察している。こっそり入れないかなと思ったら、普通に声をかけられた。
「隠密」を使っていないのは、話し合いをする意志を見せるため。いきなり「こんにちは」ってすると、相手に警戒されてしまうからね。
「王城にお前のような子どもが何用だ?」
「わたしはフィーニス0歳。元々は一般人だったけど、殺されたと思ったら、神様の小間使いにされちゃったかわいそうな亜神。
出来ればお城を壊したくないから、いーれて」
「はっはっは。冗談はそれくらいにしてお帰り」
嘘は言っていないのだけれど、軽く流されてしまった。
むしろ、今の対応で済ませてくれるあたり、気のいい人なのかもしれない。
これで入れるとは思っていなかったし、正面から入った方がいいかなと思ったので来たけれど、ダメならダメで「隠密」を使えばいいかと思っていたし。
そう思っていたら、奥の方から豪奢なドレスを着た女性が現れて「構わん、その娘は通せ」と門番に伝える。
門番は驚いたようにぽかんと口を開けたけれど、すぐにピシッと立ち直して「かしこまりました!」とはっきり告げた。
「入っていいんですね?」
「城を壊されるよりはマシじゃ」
「壊しませんよ。こっそり入ってご挨拶しただけです」
「さすれば妾のか弱き心臓が止まりかねんのでな、止めてもらえると助かる」
小粋なジョークを挟みつつ、"妾"さんにつれられてやってきたのは、玉座の間。謁見用の広間ではなくて、より小規模な場合に使う用か、個人的に使う時用なのだろう。
ようするにちょっと豪華な執務室。
「一応確認しておきますが、ニゲル国の女王と言うことで良いですか?」
膝を地面に付けることなく、直立したまま話しかけてみたけれど、女王は特に嫌な顔はしない。
「いかにも。妾はキャフィクス・ニゲル。良く来たな神の使い殿」
「信じてくれるんですね」
「精霊を解放して回っている存在には気づいておったからな。
後は勘じゃ」
勘か。話が早くて助かるから良いけれど。
「それなら話は早そうですね。この国の精霊を渡してくれませんか?」
「構わぬ。だがいくらか話は聞かせてもらおう」
「それくらいで良いなら良いですよ。出来れば、精霊はフラーウスが来てから目の前でかっさらっていきたいですから」
「ククク……単なる神の使いではないらしいな」
「言ったとおり、不本意ながら拾われた一般人ですから」
なんだかもう神としての意識が強い気もするけれど。
でもまあ、フラーウスの勇者やトパーシオン王女に関しては、思うところがあるので是非悔しそうな顔を見てみたい。
「それで話ってなんですか?」
「もう、ニゲルの悲願は達成されんのじゃな?」
「わたしはニゲルの悲願をきちんと知っているわけではありませんが、達成はされないでしょう。
どうしたところで、遠からず世界が滅びて無に返ります」
「そうか……わかってはおったが、そうなのだな……」
キャフィクス女王が遠くを見る。
その目からは涙がこぼれているのだけれど、それを拭うとかする気はない。
なんかこう、イケメンがやっておけばいい。
女王様はなかなかに美人なので、絵として映えるだろう。
空気を読んで黙っていたけれど、ちょっと物思いが長そうなので話しかけることにした。
一応こちらの方が立場が上なのは分かってもらっているみたいだし。
「精霊を渡してもらえるのはどうしてなのでしょう? 渡したくはないはずですよね?」
「此度の魔王様の目的が精霊を回収する事ではないからじゃ」
「魔王の目的わかるんですね」
「曲がりなりにも魔王様の配下であるからな。あらかたはわかるのじゃ」
テレパシーとかだろうか? なかなかに便利な能力だ。
このまま魔王レーダーとして働いてくれないだろうか?





