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109 ※女木視点

「君は通山の関係者? それとも本人?」

「やっぱり気が付きましたか。別に気が付かれても構わないので良いのですが」


 磯部君の発言で驚いていたボクは、女の子の返答を聞いてさらに驚く。

 通山君の関係者……もしくは本人。言われてみると思い当たる節がないわけでもない。

 助ける助けない関係なく、それならクラスメイトであるボク達に何かしらのアクションを起こすのは分かるし、通山君を虐めていた他のクラスメイトを助けないというのもわかる。


 消極的な理由かもしれないけれど、虐められていた通山君は何もしなかったボク達にわずかながらも情があるのかもしれない。

 他の人よりましで、元の世界の知り合いだから、みたいな。


 前の世界でボクが虐められていたということに納得したのも、その事実を知っていたからだろうし……。可能性としては高いと思う。

 関係者と言うか、本人である可能性が。だってこの世界における通山君の関係者って、クラスメイト以外にいないのだから。


 でも目の前のこの女の子が通山君って言うのも……こう……信じられない。

 女の子は何やら首をかしげた。


「どう答えましょうか? そうですね、わたしは通山だったもの。と答えておきます。

 早い話が通山(つやま)(まこと)の生まれ変わりでしょうか? 記憶の連続性はありますし、考え方なんかも通山に近いですが、この体に入り込むときに魂を弄られたみたいなので、細々違いはあるみたいです」

「つまり通山君は異世界転生したの?」

「異世界()転生したのであって、異世界()転生したわけではないですけどね」


 確かにそうなのだろうけれど、なんだか1人だけ別の世界の話をしているようで驚いてしまう。

 この女の子が本当に通山君なのかという疑問はぬぐい切れないけれど、状況的には通山君で確定させていいと思う。

 ボク達の事を知っているのは「魅了」した以外だと極一部だし、その中にこの女の子はいなかった。


 勇者達の情報の扱いはあの王女様が徹底していたので、妙な経路から漏れるということはない。

「魅了」済みの人から漏れることは考えられるけれど、「魅了」済みであればボクの支配下であり漏れてもわかる。

 だからこの女の子が、超常的な存在か、元々勇者だった通山君だと言われた方がしっくり来るのは確かだ。


 でも、見た目がね。うん。


「この国の精霊を盗んでいったのは君だね? でも確か、通山の姿をしていたって話だったけど」

「そうですよ。姿は変えようと思えば変えられますから。女木君もやろうと思えば出来ると思いますが、どうでしょうか?」

「性別を偽るくらいならできるね」


 ボクのスキルの効果をそこまで知っているとなると、通山君で超常的な存在ってことなんだろうか。

 これについては、ボク以外には知らないはず。

 磯部君にもすべて話していないし、「鑑定」でもわからないように誤魔化している。


 それでもステータスがとても高い相手の「鑑定」であれば見抜かれるかもしれないけれど、そんな相手はそれこそ超常的存在だと思う。

 つまり異世界転生してチート貰ったということなのだろう。


 なんともライトノベルの主人公らしい。

 いや、ボク達もラノベの主人公のようになれるだけの能力は持っている気はするけれど、彼……彼女? の場合はボク達よりもさらに大きな力を持っているようだ。

 異世界転移の後に転生するなんて、2度もチート能力を貰う機会があれば当然なのかもしれないけれど。


 ボク達のチートは命を削ってのそれで、彼女のチートは命を削る紛い物ではなさそうって言うのもある。


「簡単な話ですが、わたしは神様に世界が崩壊する前にこの世界にいる精霊の回収を頼まれたんです。

 今の姿は生き返る時に、これ以外の身体がないからと貰いました。

 一応亜神ということで、神に連なる力を持っています。


 別に生き返りたかったわけではないので、回収する代わりに願いを叶えてもらうことにして、その1つで貴方達の救命を頼みました。一度死ぬと思うので、救命かはわかりませんが。

 どうせ気になっているでしょうから言っておきますが、別に理由はありません。


 通山時代のやり残しをやっているのだと思ってください。

 貴方達は関係ありませんが、通山時代に話しかけてくれた1人に免じて虐めに加担しなかった人にくらい可能性を残しておいてあげようと思っただけですので。

 感謝するなら彼女に、恨み言を言うのも彼女にお願いします」


 彼女の言葉が正しければ、死後生き返らないという選択肢もあるわけだから、恨み言もないとは思う。地球に戻ってまた虐められたら……と思わなくもないけれど、そうなったとしても元の日常に戻るだけ。恨み言くらいは言うかもしれないけれど、今よりはましだと信じられる。


「信じられないなら、それでも構いません。わたしが言いたいこととしては、やけになって簡単に死なないように気を付けてくださいねってことくらいですから。

 一度言いましたけど、世界崩壊に巻き込まれて死んだら……ですからね」


 彼女はそう言い残して、ふっと姿を消してしまった。

 何か言いたいこと言って消えていった感じがする。

 そう思っていたら「この国の崩壊、楽しみに見させてもらいますね」という声だけが聞こえてきた。


 相手が通山君だと思えば、この言葉の意味も分かる。

 彼の死の直接的な原因は、クラスメイト……というか市成君にあるけれど、間接的には召喚したこの国にある。

 ボクが彼の立場であれば、崩壊する姿を見るのはなんとも爽快なことだろう。


 剣だって、神に連なる力を本当に持っているのであれば、どうにでも説明をつけることができるだろうし。

 理由もこの国を落とす一助になってほしいというところがあったのだろう。

 でも1つだけ気になることも出てきた。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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