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 やってきました冒険者が集まる建物。

 これ施設名とかないのだろうか。


 冒険者ギルド、とか。


 看板を見ても、ドラゴンっぽい生き物に剣が刺さっているようなマークがあるだけで、文字は書いていない。

 識字率が低かったりするのだろうか。

 お城にいた時には、極端に不便とは思わなかったのだけれど、日本と比べてかなり文明的に遅れている?


 それとも、貴族と平民との格差が結構あるということ?

 王政だから、国民が変に力を持たないようにしているとかは、あるのかもしれない。


 政治のあれこれは置いておいて、冒険者ギルド(仮)に突撃だ。





 中に入ると酒場っぽい雰囲気の場所だった。

 酒場行ったことないけれど。でもおそらく日本にある酒場とは違う、いわゆるファンタジー的酒場だ。やっすいエールとかで、騒いだりするのだろうかと思ったけれど、飲み物食べ物が食べられるわけではなさそうだ。

 クエストを終えてパーティで騒ぐ時には、持ち込みでもするのだろうか。


 あ、普通に酒場に行くのか。


 図体が大きい兄ちゃん姉ちゃんを横目に、カウンターに向かう。

 対応しているのは、美人な女の人。

 どこの世界も受け付けは、女の人が多いらしい。


「あの、良いですか?」

「はい、どうしました?」


 声をかけるとはきはきと応えてくれる。


「ここで冒険者になれますか?」

「冒険者志望の方ですね。

 冒険者について、説明をしたほうがよろしいでしょうか」

「お願いします」





 コレギウム・ヴェナトというのが、冒険者ギルドの正式名称らしい。

 冒険者ですらなかった。

 その歴史は古いけれど、今も昔も国家を超えた魔物退治専門機関。

 昔からあった組織なのだけれど、過去の勇者がコレギウム・ヴェナトを利用する人々を「冒険者」と呼び始めて定着したんだとか。


 それまでは「狩人」とか「魔物狩り」とか、まあいろいろ呼ばれていたので、ちょうどよかったというのもあるみたい。


 コレギウム・ヴェナトだと呼ぶのが長いので、この建物を呼ぶときはコレギウムになる。

「今日どうするよ?」「とりあえずコレギウムで依頼確認しよう」みたいな会話がなされるわけだ。


 冒険者ギルドじゃいかんのだろうか。いかんのだろうな。


 冒険者になる――コレギウムに所属するために、特に必要なことはない。

 しいて言えば、ステータスを確認されることくらい。冒険者は基本的に戦闘が専門。弱いと止めたほうが良いと忠告される。

 それでもよほどのことが無い限りは、コレギウム・ヴェナトに加入できる。


 職を得られず犯罪者になられるよりは、冒険者になって死んでもらった方がましとかそう言う事だろう。

 

 冒険者にはランクがあり、一番下がG級。現在の一番上がA級。伝説の勇者がS級とか何とか。

 上級になるに従い、そのランクの中でも強さの差が大きくなるから、B級以上から上位と下位に分かれるようになる。

 B級下位、B級上位を合わせてB級。

 下位上位の区別はコレギウム側が何となくしている程度で、この瞬間から上位とかにはならない。


「確かにB級ですが、この依頼はちょっと難しいかもしれませんねぇ」


 とかやるんだろう。別にB級とかなるつもりはないので、どうでもいい。

 ランクアップに必要なのは、ステータスと依頼による貢献度。貢献度については、コレギウムで聞けば教えてくれる。「後〇級の依頼を△個達成したらランクアップできますよ」みたいな。


 依頼は依頼票を掲示板に張り出し、それを取って持っていくオーソドックススタイル。

 どうせ張り出しの時間帯には、冒険者たちが集まるのだ。

 依頼内容は家の手伝いから、ドラゴンの討伐まで様々。魔物退治専門なのに家の手伝いがあるのは、低級冒険者の救済措置何だとか。


 年々冒険者は万事屋に近づいている。


 依頼失敗による違約金がない代わりに、依頼を受けるための保証金が必要になる。

 失敗したら保証金は返ってこずに、成功したら戻ってくる。


 町の周りでよく見かける魔物に関しては、別途掲載として1体いくらと書かれている。その料金は同ランクの依頼よりも安いため、良い依頼を受けられなかった人が受けるのだろう。こっちは受けるときにお金が要らない。

 と言うか、討伐部位を持っていけば、受けずとも依頼達成になる。


 依頼はランク分けされているけれど、実は受けるのに制限はない。

 E級がA級依頼を受けてもいいし、A級がE級の依頼を受けてもいい。実際のところ後者はともかく、前者は保証金の額が高く受けることはできないだろう。


 肝心の身分証明としての効果だけれど、そもそも町間の移動だと身分証無くてもできる。しいて言えばお金がかかることくらい。

 冒険者だとD級以上だとお金がかからなくなる。


 国間の移動の場合、国境をまたぐような依頼――護衛とか――のついでに移動するなら、依頼主側がいろいろ手続きしてくれるため、特に何もない。

 そうでない場合には、コレギウムのトップ――ドゥチェスからの許可が必要になる。


 つまりギルドマスターがコレギウムドゥチェスになる。面倒なので、(ドゥチェス)で良いと思う。

 あとは訓練場は無料で開放しているとか、こまごました説明があったけれど、割愛。


 こんな見た目小娘に、よく丁寧な説明をしてくれたなと思うけれど、口減らしで村から流れてきた僕くらいの(見た目)年齢の少年少女は結構いるらしい。

 その少年たちに適当な説明をしたことで、すぐに問題を起こすことが多かったため、ちゃんと説明するように義務付けられたらしい。

 またこういった新人を相手に当たり散らして、若い世代が育たなかったこともあり、いわゆるテンプレ的な絡みは少ないのだとか。


 大人でランクが低い人の方が狙われるらしい。

 うん。見た目年齢を上げずに来てよかった。


 少ないとはいえ、あまりにも調子に乗っているとか、年齢の割にランクが高いとかであれば絡まれる可能性が高くなる。


 と言う事で、コレギウムでは大人しくしておこう。





「以上で説明は終わりますが、登録なさいますか?」

「お願いします」

「では、ステータスの確認をお願いします」


 今日二度目の水晶。

 映し出される、偽りの数字。


 またやるべきかな。

 わたしはフィーニス14歳。


「ありがとうございます。

 十分に戦えるようですね。安心しました」

「森で狩りをしてましたから」


 思いのほかにあっさりとした反応だったけれど、胸を張って自慢する。


「少し前に来た人たちとは違うんですね」

「誰か来たんですか?」

「いえ、フィーニスさんより少し年上くらいの男女が最近登録に来まして。

 その人たちも、年齢の割に高いステータスをしていたので、同じところから来たのかと」

「わた……えっと、違いますね。僕は森の中に住んでいたので、村とかじゃなかったですし」

「そうですか。同世代ではありますし、一度パーティを組んでみてはどうでしょう?」

「スキル的にマイナスなのでやめときます」


 なんだか嫌な予感がするので。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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