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 えっちらおっちら歩いて、町の門までやってきた。

 遠くからは分からなかったけれど、門の前には結構人がいて、壁に沿うように並んでいる。

 壁は見えていたので分かっていたけれど、日本のように歩いていたらいつの間にか隣の町、となるわけではなくて各町ごとに壁で覆われていて、町に入るにはチェックを受ける必要があるらしい。


 ここまで草原をまっすぐ歩いてきたわけだけれど、途中で犬っぽいのがとびかかってきた。

 この体どころか、人生初……神生? いや生まれて初めて? 死ぬ前も含めるから死生初めて? の戦闘。白熱したものになるのではなかろうかと思った。

 思ったのだけれど、『創造』で適当に剣を造って切りつけたら剣も一緒に壊れた。

 犬程度では、僕をどうにかすることはできないらしい。

 曲がりなりにも、世界最強というわけか。


 死ぬ前の感覚で剣を振ったせいなんだろうけど、ステータスが高すぎるのも困りものだ。

 やっておかないといけないことに、手加減のやり方を加えておこう。


 下手したら町の中で、グチャ……とかやってしまいかねない。

 あと普通にステータス誤魔化しているのがバレる。

 試しに魔法を使ってみようと、生活魔法に分類される着火(イグニオ)を使ったら、犬の死体が一気に灰になった。

 魔法はいっそ『上位幻術』に統合されている『悪戯』を使って、始終目くらましをしたほうがよさそうだ。


 強くなるのも考え物だねえ……。


 いっそ人々の敵になって、正面から精霊を奪いに行く方が楽かもしれない。

 でも間違って精霊を殺してしまうかもしれないのかー。

 だったらやっぱり、潜り込んで場所調べて、ってしたほうが良いかもね。


「嬢ちゃん。おい、嬢ちゃん」

「あ、はい」


 暇だったからいろいろ考えていたのだけれど、いつの間にか自分の順番になっていたらしい。あと、「嬢ちゃん」って初めて言われて、ボケっとしていた。

 男だった時も別に「坊主」とか「坊ちゃん」って言われたことないけど。

 門番の男の人が困った顔をしている。


「えーっと、通行証は?」

「持ってないです」

「身分を証明するものは?」

「持ってないです」

「じゃあ、ちょっと奥に行こうか」


 僕の親……は神様になるのかもしれないけど、通山真時代の親よりも年上っぽいおじさんが、頭をかいて僕を取調室みたいなところに連れて行った。


 ここで事情を聴いて、怪しかったら捕まるのだろうか。

 これは脳内設定が火を噴くことになりそうだ。


「それで嬢ちゃんはどうして町に来た」

「わたしフィーニス14歳。森の中にある小さな家にお父さんとお母さんと住んでいたんだけど、10歳の時に二人とも魔物に襲われて死んじゃった。

 それから一人で生きてきたんだけど、流石にもう厳しいかなと思って森から出てきたの。

 だから戦いとかは得意だけど、誰かと動くのは苦手だなぁ……」

「何だって?」

「わたしフィーニス14歳。森の中……」

「待て待て、そうじゃない」


 渾身の演技が止められてしまった。

 日曜日の朝のイメージだったのに。この見た目ならいけると思ったのだけれど、さすがに痛かっただろうか。


「まず聞くが、なぜ森に住んでた? 魔物がいて危ないだろう」

「生まれた時から住んでいたのではっきりとしたことは知らないですが、なんか村から追い出されたとか、愛想つかして出て行ってやった、みたいなことを言っていました」

「急に話し方変わったな」

「ウケなかったので」

「ウケ……? まあいい。確かにいるな、村八分にされて危険地帯で生活せざるを得なかった人も」

「両親は狩りが得意だったので、あえて住んでいるみたいでした。

 僕も狩りを教えてもらいましたから、何とか生活できていたわけです」

「それで戦いが得意だと」


 冷静に設定を掘り返されると、なにやってたんだろう感がすごい。

 それでも羞恥に溺れることが無いのは、きっと僕が亜神だからだろう。


 気分的にはペットの犬の前で、変な演技しても恥ずかしくないみたいな感じだ。神様凄い。


「町に入るのは良いが、まずステータスを確認させてもらう」

「はい、それはもう。ご自由に」


 ステータスいじりまくった甲斐がありますから。


 お城でも見た水晶を手渡されたので抱えるように持つと、その中に僕のステータス(偽)が見えてくる。

 なんとも平均的なステータスだ。

 何の不思議もない、いたって半人前のステータスだ。


「年齢の割に強いな。小さいころから、狩りをやっていたせいか。

 それから……スキル持ちだと!?」


 うむ。ステータスを見て、さっきの設定と合わせて勝手に納得してくれるのはありがたい。

 説明の手間が省ける。

 でもスキル持ちは、ここまで驚かれるのか。国王が少ないみたいなこと言っていたし、当然か。


 称号はその人の行動とか何とかが、いい感じに噛み合ったり、多くの人にそう呼ばれるようになったりしたら貰えるらしい。ものすごくふわっとしているけれど、得られたからと言って、ステータスが上がるわけでもない。

 だけれど、町でステータスを見る理由がたぶん、これを見るためだと思う。


 なんと一定数悪いことをすれば、称号がもらえます!

 悪いことを続けると、どんどん称号が更新されていきます!

 凶悪犯は一発で分かりますね!


 亜神になった時に、この世界の根本的なルールみたいなのが、何となく分かるようになった。

 でも正直、常識のほうが欲しい。

 絶対一般的に知られていないルールとかある。


「このすきる? のおかげで一人でもなんとかなっていたんですよ。

 一人の時だと調子がよくって」

「なるほどな。まあよくわからない称号はあるが、犯罪もしていないみたいだし、通行料さえ払えば通しても良いだろう。

 とは言え、町の中で穀潰しになられても困るからな。何をするつもりなのかは、教えてくれ」

「冒険者になろうかなと」

「それだけ戦えれば、そうだろうなぁ。女の子がなるって言うのは気掛かりだが……」

「戦う以外できませんからね!」


 たぶん戦う以外もできるけど。

 試しに作ってみた剣が高級武器! とかはありそうだ。

 初級ポーションなのに、上級ポーション並みの回復量があるぞ、みたいな。


「無茶だけはするなよ。通行料は大銅貨2枚だ」


 ここで払うのが大銅貨か。

 ちょっと嫌な予感がしてきたぞ。


「大銅貨ってこれですよね?」

「おお、それだそれだ」

「これで宿に泊まれますか?」

「大銅貨2枚だとそこそこの宿で1泊ってところだ。

 嬢ちゃん大丈夫か? 町で生きて行けるか?」

「たぶん大丈夫です。でも冒険者になる方法を教えてください」


 聞けるときに聞く、これ大切。

 何せこちらはボッチが故に殺された経験のある者だ。

 道行く人に声をかけることもできなければ、店員を相手に世間話を持ち掛けることもできない。


 亜神的に考えると緊張とかはないんだけど、その分面倒くささが顔を出す。


「町に入ってすぐ左にな、それなりに大きい建物があるから、そこの受付で聞いてくれ」

「冒険者が集まるところなんですね」

「そう言う事だ。見ての通り門番だからな、冒険者になる方法は分からん」


 言われてみればそうだ。餅は餅屋。

 まあ、場所さえわかればなんとかなるだろうから、別に構わない。


「それじゃあ、行っていいですか?」

「おうおう、死ぬなよ」

「はーい」


 お城では町に出たことはなかったし、なんだかんだこの世界初めての町だ。

 ちょっとばかし楽しみになってきた。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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