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こーるみーかみさまー。
『はいはい。なんだい?』
『とりあえず世界の状態を教えてください。どこが召喚しました?』
『カエルレウス国と呼ばれているところだね。
世界の状況だけれど、これはあとどれだけ持つんだろうね』
『神様もわかりませんか』
『携帯の電池が残り1個になっているときに、残り何分持つかとかわからないみたいなものだよ』
『1個って何ですか?』
『……スマホの充電が残り1%と表示されているときに、残り何分使えるとかわからないみたいなものだよ』
あ、言い直した。
『はい、言いたいことは分かりました。5年はなさそうですね。
下手したら1年以内って感じでしょうか?』
『正直想定よりも崩壊が早いから何とも言えないね。神から言えるのは、半年は持つかなってところ。
世界が限界になったらフィー君はこっちで掬い上げるから、巻き込まれて死ぬってことはないよ』
『了解です』
『それから、崩壊が始まったことで神の方から世界が見づらくなっているから、基本フィー君周辺しか何があったかわからないから』
『つまりカエルレウスが今どうなっているのかわからないんですね』
『御名答』
今までも別に神様に案内してもらっていたわけじゃないから、問題はないだろう。
でも精霊を回収する順番は変えたほうがよさそうだ。
カエルレウスの勇者に関しては様子見であとまわし。
邪魔するなら排除するし、邪魔しないならご自由に。と言うか、お気の毒に。
無理やり呼ばれた挙句、世界崩壊直前とか救われない。
あとは闇の精霊とやらがどこにいるのか、たぶんルルスが捕捉できていそうだから、そこも後回し。元気があるなら多少頑張ってくれるだろう。
『とりあえず、3つ願いを叶えられるけどどうするのかい?
誰かを助けるとなると、崩壊前に言っていてくれた方が嬉しいんだけど』
『あー、そうですね。崩壊直前まで生きていた中立組を転移前の状態にして、後は本人に選んでもらうとか大丈夫ですか?』
『選んでもらうというのは、地球に帰るか、別の世界に行くか、新しく作る世界に行くか、そのまま生を終えるかってところで良いんだね?』
『はいそれで。それで1つの願いってことでいいんですか?』
『構わないよ』
神様はなかなかに懐が大きいらしい。さすが神様だ。
僕なら掬い上げで1つ、選択させるで1つくらい要求しそうなものなのだけれど。
というか、この世界の崩壊か。
『そう言えば、僕ってこの世界の亜神ですよね。
それってこの世界が無くなった時どうなるんですか? 亜神としての性質が全部消えたりします?』
『……ああ、世界崩壊の瞬間を見たいとか、物好きな願いだね?
確かに世界崩壊と同時にこの世界の要素はすべて消えるから、大体言っているとおりだよ』
『じゃあ、その辺どうにかなりませんか?』
『そうだね。亜神から正式に神になるとかかな? どんな神になるかはフィー君の性質を踏まえたうえでランダムだけれど』
『わかりました。それでお願いします』
『残り一つは?』
『保留で』
正直言って思いつかない。
そもそも叶えてもらいたい願いなんてなかったわけだし。
『というわけでありがとうございました』
『こんなことになったけど、適当に頑張ってくれたらいいから。それじゃあね』
神様との通信が途切れたところで、ルルスの視線に気が付いた。
「カエルレウスが勇者召喚したらしいです」
「本当に……もう……」
ルルスが呆れと怒りの間で彷徨っている。
この世界の元管理者としては言いたいことが無限にあることだろう。
それこそ数千年単位で。
「それでこれからどうしますか?」
「その前に1つ聞きたいんですが、闇の精霊がいるのはニゲルであってます?」
「場所的には間違いありません」
「だとしたら、次はアクィルスに行きましょうか。
ニゲルの精霊は元気みたいですからね。緊急性もないでしょう。
でもそうですね。ニゲルには、悪いことしてしまったかもしれません」
「ですが、始めたのはフラーウスです」
「僕が居ても居なくても、始まった戦争ですしね」
思惑はどうあれ、ニゲルもまた精霊を解放しなかったわけだし、やむを得なし。解放したからと言って神様が助けたとも思わないけど。
でもきっと、他の国よりかは話が通じるのではないだろうか。
そんな風に思っていたら、晴れていたはずなのに急に雷が落ちてきた。
そしていつかのような豪雨が降り始める。
何だったら遠くに竜巻だって見える。
数分だろうか、続いたと思ったら急に天気が元に戻った。
「なかなかに終焉って感じですね」
「お恥ずかしい限りです」
「ルルスのせいではないでしょう」
結局は人々が自分たちの欲に負けた結果。
神様の言葉を無視した結果なのだから。
「とりあえず動きましょうか。ところでですが、この世界崩壊現象をルルスの力で抑えることって出来ますか?」
「地震程度に抑えるとか、暴風雨程度に抑えるくらいならできますよ。
世界の寿命は少しも伸ばすことはできませんが」
「それに使う力はどれくらいです?」
「それだけなら無理がない程度でしょうか?」
「では、無理しない程度にお願いします。おそらくアクィルスにいる精霊は地の精霊ですから、地割れとか怖いので。地震でも怖いですが」
「そうですね、分かりました」
ニゲルが闇なら、王都が水の都と言われているカエルレウスは水の精霊が居るのだろう。
そして残りの地の精霊がアクィルス。そして今までの傾向から考えるに、地の精霊は地中にありそうだ。
だから地割れに巻き込まれて既に……と言うのは勘弁願いたい。
たぶん国に入ったくらいでルルスが気づくとは思うけれど。
では、張り切ってアクィルスに向かいましょう!





