表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/197

91

「なんで鞭打ちなんかに……」

「事情はどうあれ貴女は奴隷、僕は持ち主。それが分からないとは言わせませんよ?」


 モニアと僕を指さして、分かりやすく説明してあげる。

 それでも何か言いたそうなモニアをどうしようか。

 ルルスに訊いたらとても過激なことが返ってきそうなのでパス。

 まあ、クラスメイトと同じで良いか。


「ですが、まぁ。条件次第では解放してあげましょう」

「本当!?」

「奴隷に嘘ついてどうするんですか。

 どうします? 受けます? 受けると言った瞬間「契約」完了とさせていただきますが」

「やるわ」


 わかっていたけれど、なかなかに頭が空っぽのお嬢さんだ。

 とりあえずどんな条件か聞くところではないだろうか?

 まあ、嫌と言われても奴隷である以上、拒否はできないはずだけれど。


「まずは僕とルルスについて、同じく僕たちを除いた別の存在に伝えることを禁止します。

 それから、勝手に死ぬ事を禁じます。同じく死なないように最大限の努力をしてください」

「良いわよ」

「すでに貴女の許可は貰っているので、返事は不要です」


 残念ながらすでに「契約」のスキルは発動済み。

 こんな不意打ちみたいな感じでもいけるのかと思ったけれど、いけてしまったのだから仕方ない。

 僕が亜神だからいけるのか、このスキルが規格外なのか、それともスキルとはこんなものなのか。

 神様の反応的にはこのスキルが規格外なのだと思う。何せ人であれば能力制限を食らうようなレベルだ。


「次にあらゆる町や村、人の集落が存在する場所に入ることを禁止します」

「なにを……」

「貴女の話は聞いてません。そして契約完了の条件ですが、古代竜の鱗を取ってきてください。

 それが出来たら、奴隷から解放ということで良いでしょう。契約が終わるまでの間、犯罪は犯さないでくださいね。僕が面倒に巻き込まれそうなので。以上が「契約」です」

「無理よ、出来るわけないじゃないっ。

 せめて何か準備してくれないと無理よ」


 さて奴隷であることは分かっただろうし、今のが命令ということになれば、強制力が働くのも理解しているのだろう。

 なんだか焦った様子で言い募る。


「最初は何か便利な道具くらい用意してあげようかと思ったんですが、奴隷という立場をわきまえない言動ばかりしていましたよね? そのお仕置きです。

 先に言っておきますが、別に貴女が死んだところで惜しくはないので、そのあたりを盾にしても意味ありませんよ」


 まさに言おうとしていたのか、うぐっとモニアが言葉を飲み込む。

 それから深々と頭を下げた。


「も、申し訳ありませんでした」

「そうですか」


 今更謝られたところで説得力はない。

 しぶしぶでも謝って、少しでもいい条件を引き出したいだけに見える。

 実際反省しているのだとしたら、それは言葉ではなく行動で示してもらわないと。


 まあ、無礼とか関係なく何も用意する気はなかったけれど。

 僕が用意してあげる義理はないし。

 だから謝ったのにそれだけか、みたいな不満顔見せられても困る。


「では頑張ってください。古代竜の鱗はこの国にある一番高い火山の火口にありますよ」


 それだけ伝えてモニアを家から追い出す。

 抵抗しようとして、奴隷の首輪の効果で自滅していたので、追い出すのは簡単だった。

 あとは強く生きてほしい。たぶん人里離れた場所で隠れ家でも作って、こっそり生きていけば死なないから。もしくはマグマダイブ覚悟で火口まで行くか。


 でも火口まで行けずに力尽きそうだ。


 着いたとしても、あの洞窟を見つけることができるかもわからない。

 たまたま古代竜さんが住処から出てきたところに遭遇して、万が一にもその鱗が取れて落ちてきたらワンチャン。

 その時には「契約」どおり()()からは解放してあげよう。


「酷な契約をしましたね、フィーニス様」

「そうですか? たぶんルルスに処遇を任せたほうが酷いことになっていたと思いますけど」

「私はすぐに息の根を止めることくらいしか思いつきませんから」

「そんな気はしてました」

「ですが一瞬の苦しみよりも、フィーニス様の方が酷ですよね?」


 そうなのだけど、今回は単に同じことができたら奴隷から解放してやろうと思っただけだ。

 目には目を歯には歯をと言うのは、分かりやすくて助かる。


「これであの人は死ぬまで町に入れませんよね?」

「そうですね。死んでも入れませんけど。ですが世界が崩壊するよりも早く、彼女が古代竜の鱗を取ってこれると思いますか?」

「無理ですね。彼女のステータスでは一生かかってようやく可能性が出てくるといったレベルでしょう。万が一の幸運という可能性はあるかもしれませんが、それを考え始めるときりがありませんが……」


 ルルスが何か言いたげな目で見てくる。

 万が一の可能性すら潰したわけだから、ルルスの言いたいことは分かるよ。うん。

 ルルスが言っている方が正しい。


「そんなことより、火の精霊の方はどうですか?」

「私の力を少しずつ分け与えても、後2~30日と言ったところでしょうか」

「そんなものですか。もっと時間がかかるかと思っていましたが、それならフラーウスの戦争より先にこちらが片が付きそうですね」


 それなら精霊の回収順番は、ルベル→ニゲル→アクィルス→カエルレウスにしよう。

 ルベルは回復待ちだし、ニゲルも今までよりはスムーズにいくと思う。

 そしたらあと2つ。案外すぐに終わりそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
mgfn4kzzfs7y4migblzdwd2gt6w_1cq8_hm_ow_58iu.jpg
― 新着の感想 ―
罰がどうも陰湿ですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ