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 真っ二つになった証明書を渡されたけれど、コレ直していいだろうか?

 直したらどんな顔するだろうか? さすがにそれをすると目立ちすぎだと思うのでやらないけれど。


 さて、この女の子が依頼主ということでいいのだろうけれど、言動から察するに素直に報酬を支払ってくれるつもりはなさそうだ。

 なかなかやらかしてくれる。でもやらかし度合いが可愛らしいとも思う。せいぜいお金で片が付くくらいだろうし。


 額は全然可愛くないと思うけれど。


「これどうしたら良いんですか?」


 とりあえず現状どうにかしてくれそうな人――受付に声をかける。

 唖然としていた受付さんは、僕が声をかけると再起動した。


「はい。フィーさんが間違いなく依頼を達成したのは確認済みです。

 今回の場合ですと、故意による依頼の放棄になりますので、モニアさんがフィーさんとコレギウムに対して違約金を払ってもらうことになります。

 合計で依頼報酬の半額。その8割をフィーさんが2割をコレギウムが受け取ることになります。また依頼費と古代竜の鱗も返却いたします」


 つまり僕のところに大金貨5枚返って来ると。

 単純に考えれば、ちょっと散歩に行ってきただけで4000万円の儲けになるわけだ。

 ただ疑問も残る。古代竜の鱗だから、返却されても後から売るとか選択肢が出てくるけれど、これが日持ちしないものだったらどうするのだろう?


「これが薬草とか使用期限が決まっているものだったらどうするんですか?

 返却されたところで、使い道がすぐに思いつかなければ、無駄になるだけだと思うんですが」

「コレギウムが購入できる場合には購入いたします。

 ですが基本的には、違約金で納得してもらうことになります。

 もとより、こういった事態が起こることが珍しいので……」


 普通は報酬もコレギウムの預ける形になるのだから当然か。

 今回が高額だったからこその措置でしかない。

 これが命からがら取ってきたとなれば文句の1つも言いたくなるのだろうけれど、散歩に行ってきただけの僕としては、妥当かなと思ってしまう。


 そう考えていたら、女の子――モニアが急に横から話に入ってきた。


「黙って聞いていれば何よ。

 達成報酬の半額とか払えるわけないじゃない」

「と、言っていますが」


 威張って言うことでもないけれど、予想はしていたしコレギウムに対処は任せてしまおう。

 困った顔をしている受付さんには悪いが、これはそちらの仕事だと思う。

 んー、想定内で終わるかなと思っていたら、モニアがさらに爆弾を落とす。


「大体、コレギウムが話を持ち掛けてきたんじゃない!

 なんであたしが責任を取らないといけないのよ!」

「おい、そいつ裏に連れて来い」


 爆弾を落とすと同時に、コレギウムの奥から機嫌悪そうな男の人の声が聞こえてきた。

 直後、喚きながらモニアが連れていかれる。

 それを見送っていたら、受付さんが非常に申し訳なさそうな顔で「申し訳ありませんが、フィーさん達も来ていただけますか?」と尋ねてきた。


 どうやら事態は第二ステージに行くらしい。





「とりあえず、事の次第を教えてほしいんですけど」

「あー……そうだな……」


 奥に連れていかれた後、待っていたのはガテン系のおっさんみたいな感じの男性。

 ステータスがB級冒険者程度には高く、コレギウム長ということでいいのだろう。

 この人の役職や名前なんて、正直どうでもいいから、真相を知りたい。


 頭なんて掻いていなくていいから、きっちりはっきり吐いてほしい。

 ついでにモニアは今、口をふさがれて、縄で拘束されて転がされている。


「まずその依頼主だが、大金貨10枚で古代竜の鱗を持ってくるようにと言う依頼を出したのは確かだ。

 額が額だから、達成後にお金を持ってくるということになっていた()()()

「でも実際はそんなお金なんて持っていなかった、という話ですよね?」

「そうだ」


 コレギウム長が重たく頷いた。


「どうやら本当はお金がなくて困っていた町娘が冒険者になりに来たらしい。

 だがステータスは高くなく、スキルも持っていないということで、当時担当した受付がこの依頼を出すことを提案したらしい」

「なるほど依頼料狙いの依頼ですね」


 僕も支払った大金貨1枚。依頼を失敗すれば、これがコレギウムと依頼主に支払われるわけだ。

 思いつく人なら簡単に思いつくような手口だけれど、普通はそう言った悪意は依頼を受け付けるときに処理される。

 しかし今回はコレギウム側に手引きした人がいるわけだ。誰も達成できなかったから、今まで問題にならずに放置されていたと。


 どれくらいの割合で依頼主とコレギウムにお金が振り分けられるかは知らないけれど、仮に半々だとしたら小金貨5枚で500万円程度。

 しかも年に1~2回受ける冒険者が居たと。


 それだけでこの世界なら大金持ちだ。

 モニアの身なりが良いのも、そうやって手に入れたお金を使ったからだろう。

 モニアの年齢から考えるに、長くて2~3年程度の悪だくみだろうけれど、全額貯金していても大金貨5枚には届かない。


 職員の方も気になるけれど、とりあえずは自分のことを聞いておこう。


「それでわたしの依頼はどうなるんですか? ここまでしておいて、大金貨1枚しか返ってこないというわけではありませんよね?」

「今回の件はこちらの責任も大きいと見て、違約金の半額に当たる大金貨2枚を支払う」


 ということは、モニアも借金が大金貨2枚になるわけだ。

 もしかしたら持っているかもしれない……ということもないのだろう。

 明らかにお金を使った見た目をしているし。


「そこに転がっている子が残りを払えると思いますか?」

「……無理だろうな」

「そうなるとどうなるんでしょう?」

「奴隷に落ちる」


 あ。なんだか嫌な予感がしてきたぞー。

お金の計算の勘違いに気が付いたので修正。

お金の支払いがコレギウムが大金貨2枚、モニアも2枚になります。

1枚は返却分でしたね。はい。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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