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 ルベル国の王都。遠目にしか見ていなかったこの都は、機械仕掛けの都と呼べそうなほどにあちらこちらに歯車がある。

 やっぱりスチームパンクっぽいよなと思う反面、それほど暑くもなく、動いている機械類の動力が水蒸気ではなくて魔力なのだということが分かった。


 魔力と言えば精霊から引っ張ってきているものだと思っていたけれど、こうやって動いているということはそうでもなかったのかもしれない。

 それとも国の魔法使いが頑張っていたりするのだろうか?

 どちらにしても、僕の知ったことではない。


 それよりも、この人工物のみで構成された町の観光の方が大切だ。


 ファンタジーと機械と言うのはミスマッチのように見えて、意外とファンタジー作品に登場する気がする。

 特にゲームだろうか?

 機械兵とか、銃とか、普通に存在したりするものだ。

 逆に小説類だとそう言った技術は存在していないことが多かったように思う。


 それらはフィクション、目の前のこれは現実。比べても仕方がないか。


 機械仕掛けと言っても、車が空を飛んでいるどころか、車の姿もないし、時計なんかも妙にごてごてしていて実用性のほどは分からない。

 とにかくいかにもな感じがして歩くのが楽しいので、のんびり歩きながらコレギウムに向かった。





 不法入国の後、お金を払って王都に入った僕たちは、当然コレギウムでは初登録ということになる。

 そうなると、またステータスを誤魔化さないといけないのだけれど、考えるのが面倒くさいから2人ともD級冒険者程度にしておいた。

 スキルもない。


 そしていつもと違うところは、僕の名前を「フィー」に変えたこと。

 さすがにフィーニスって名乗りすぎたかなと。

 そろそろ「フィーニスだって!? まさかフラーウスとウィリディスの精霊を盗んでいった奴と同じ名前だなんて……。まさか、もしかして……本人なのか!?」と驚かれかねない。


 まあ、実際は知っているのは上層部だけだと思うけれど。

 さすがに門番が精霊を知っているとは思えないし。


 種族は人。ウィリディスのごたごたを知っているかはわからないけれど、関係者だと思われたら面倒くさそうだから。

 ルルスも人族になっているため、耳をフニフニできないのが心残りだ。

 ドワーフにしなかったのは、ドワーフ族の常識を知らないから。別にドワーフは人に対して敵対的ではないし、変にドワーフで行って知らないマナーとかがあると絶対絡まれる。


 対して人であれば「まあ、人族だから仕方ねえな。次からは気をつけろよ」位で済むかもしれない。

 あとこの世界のドワーフがわからない。


 特に女性。


 人族は見ていたし、エルフはフィーニスの肉体のベースがエルフだからそんなに気にしなかったけれど、ドワーフは分からない。


 特に女性。


 男性だと髭もじゃで酒豪な鍛冶をしている小人みたいなイメージ通りで良いのだけれど、女性は分からない。

 髭が生えているパターンと、見た目幼女のパターンを知っている。これがどちらかと言うのは、密かに楽しみだ。



 さて、コレギウムについた僕たちの冒険者登録が恙なく済んだところで、僕たちの受付をしていた女性が「タイミングが良かったですね」と手を叩いた。

 この受付の女性はドワーフだったのだけれど、人で言うと10歳くらいの見た目だろうか。

 幼女と言えるのだろうけれど、僕の身長も低いのでそこまで幼く見えない。


「タイミングが良い、ですか?」

「はい。知っての通り冒険者への依頼は簡単なものでも危険が伴います」

「町の外に行くことが多いですからね」

「おっしゃる通りです。町の中であっても、治安が悪いところに行くことがありますからやはり危険です」


 ついさっき説明されたことをそのまま返すと、受付嬢は感心したようにうなずいて付け加えた。

 そちらの説明はされていないのだけれど……。僕は問題なくても、新人は町の中なら安全だとか思うのではないだろうか?


「ですが今はどういうわけか、国が魔力を買い取ってくれるんです」

「はい。これに魔力を込めてもらって、すべて溜まれば大銅貨1枚と交換です」


 そう言って渡されたのは両手で何とか持てる黒い水晶玉のようなもの。


「吸魔の水晶 ランク:B」

詳細:魔力を吸収する性質をもった水晶。空の状態だと黒だが、魔力が溜まると白に近づく。

   吸収した魔力を使う場合にはロスが発生するため、お勧めできない。


 というわけで、吸魔の水晶らしい。

 これはあれだ。お試し感覚で渡されて、お試し感覚で魔力を込めたらその量の多さで水晶が壊れるとか、神的な力の影響で白くならないとか、そう言ったやつだ。

 おそらくルルスがやっても同様。精霊だとバレる可能性がある。


 だから返却しよう。そうしよう。他に出来る対策もないし。


「ごめんなさい。今は魔力が少ないので、今度やらせてもらいますね」

「いえ、大丈夫ですよ。どういったものかをお見せしたかっただけですから」

「ありがとうございます。ところでこの仕事は割が良いんですか?

 わたしくらいだと、どう頑張っても3~4個が限界だと思うんですが……」

「美味しい仕事ではないのは確かです。ですが、怪我をしていても受けられますし、人気はあるんですよ。特に女性の冒険者になると危険は大きくなりますし」


 言いたいことは分かった。女性二人組、しかも若いとなれば良からぬことを考える人もいると。

 だからお勧めですよってわけか。

 でもそれでは暇つぶしにならないので、別の依頼でも探してみよう。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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