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「それでどうします? 戦います?」

『止めておこう。主に挑んだところで返り討ちにあうのは見えている。

 それに世界の終焉は間近。主に殺されるよりも、世界の終わりを見ることを選ぶ』

「賢明ですね」

『そもそも、我はここに縛り付けられているだけで、守護しているわけではない』

「あ、そうですか。入ったと同時に炎を吐かれたので、守護しているのかと思っていました」

『縄張りに入ってくるものがいれば、追い払うのは当然だろう?』

「そりゃあ、許可なく家に侵入してきた人があればそうでしょうね。

 ですが、ちゃんと縄張りだと示していてくれないと、ここはただの洞窟です」



 火口にあった洞窟に足を踏み入れると、いきなり竜のブレスを浴びせられた。

 自然の炎ではないこれが相手だと、ルルスが危ないかなと思って適当に守ったところ、いつかの風竜(ヴィントゥス・ドラコ)が子供だましに見えるような竜がこちらをじっと見ていた。


 赤い鱗に長い首、大きな体、大きな羽。

 一目見ただけで、生物としての格がわかるので、下手な生き物なら見ただけで動けなくなるほどだろう。

 ステータスもそれに見合うだけのもので、パッと見ただけでも500を越えたものがいくつも見られる。

 人で言えば勇者でもたどり着けないかもしれない境地。


 名前は古代竜(エンシェント・ドラコ)。エンシェントエルフと同格と言えば同格なのだろうか?


『我の一撃を耐えきるとは主は何者だ?』

「通りすがりの亜神ですよ」

『神と来たか……いや、この世界において我の一撃を耐えうるのは、もはや神か他の世界の者だろう』


 何やら一人で納得したらしい古代竜は、思いのほかに話が通じる系の竜さんなのかもしれない。

 ってことで、冒頭に戻って戦うか聞いてみたのだけれど、やっぱり戦うつもりはないらしい。


「聞きたいことはいくつもあるのですが、とりあえずこの先に精霊が居るということで間違いないですか?」

『そうだ。我が近づくことのできぬ場所にある故、行けばすぐにわかるだろう』

「そうですか、では先に用事済ませてきます」


 そう言って古代竜の隣をスーッと奥に向かう。

 すれ違いざまに何かしてくるかな? とかも思ったけれど、そんなことはなくて簡単に奥まで行かせてくれた。





 洞窟は洞窟。ちょっとワクワクしていたのだけれど、似たような風景ばかりで飽きてきたころ、急に狭い空間に出た。

 なるほど、狭ければ古代竜は入っていけない。


「この先で間違いなさそうですね」

『そうですね。ですが少し急いだほうが良いかもしれません』

「そこまでヤバいですか。本当に人間というやつは……」

『フィーニス様も少し前まで人だったのでは?』

「それは言わない約束です。と言いますが、人だったからこそ人の醜さも分かっているつもりですよ。

 人時代は無意識に見ようとしていなかった部分とかもありますが」


 風景的な楽しみはないので、ルルスと話しながら先に行く。

 その行き止まりには、今までに何回か見た精霊を閉じ込めていた檻が溶岩に浸かっていた。


「あー……こう来るんですね。あの檻すごいですね」


 火山の構造的な話はまるで知らないけれど、これは大丈夫なのだろうか?

 それはそれとして、これ助けるのすごく面倒くさい。

 面倒くさかった。先にウィリディスに行っておいて良かった。


 使えるかはわからないけれど、『創造』してこの檻用のものを作ることはできるだろう。

 フラーウスでルルスを回収した時のように、檻に触れて構造を読み取り、鍵と比較して……。

 比較して……。


「うがああああ」

『!? フィーニス様、どうなさいました?』


 いきなり吠えた僕にルルスが驚いたように、こちらにやってきた。


「いや、ここの檻他の檻と違っていろいろ手を付けられているから、鍵を使うだけじゃ突破できないんです」

『難しそうなんですか?』

「時間をかければ大丈夫ですが……」


 見てわかるほどに精霊が消えかけている。

 僕の見立てだと、もって数年。最短数時間と言った感じか。

 この手の長命な生き物だと、余命少しということが分かっても、どうも幅がある。


『時間があれば大丈夫なんですね?』

「1日時間があればいけますね。余裕をもって2~3日でしょうか?」

『それなら私が何とか維持させていますので、その間にやってみてください』

「それでルルスは大丈夫なんですか?」

『それは、はい。少し消耗するくらいです』

「それなら大丈夫そうですね。それじゃあ、手遅れになる前に始めましょうか」


 これもお仕事。面倒くさいけれど、しっかりと働きますか。





 丸一日かけて、檻の突破に成功。

 ルベル国の王族にはバレたかもしれないけれど、時すでに遅し。

 今にも消えそうな精霊は、どうやら話すこともできないらしく、今はルルスが抱えている状況。


 かーみーさーまー。


『何だい?』

『精霊回収してほしいんですけど』

『あー……その精霊なんだけど、回収に耐えられそうになくてね。

 良ければ回復するまで、しばらくそちらで預かっていてくれるかい?

 報酬は精霊1人分ってことで』

『わかりました。引き受けますが、消えても僕は責任取りませんよ?』

『最初に送った――ルルスと同じ扱いで良いよ』

『了解しました。それじゃあ、しばらくはこの辺で待機してます』

『その火山の噴火、精霊で止めていたようだから、回収したら一気に爆発するから注意してくれたまえ』


 

 あ、この神様。最後に爆弾落としていきやがった。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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