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 ウィリディスの南にある、ルベル国。

 主にドワーフ族が住み、主要な都市では日がな鍛冶をしているとかいないとか言われる、いかにもな国。

 実際は鍛冶だけではなくて、物作り全般と言うことらしいけれど。


 3人目の精霊回収にここを選んだのは、単純に近いから。

 ニゲルは置いておいたとして、残りの2カ国は戦争をしているフラーウスとニゲルを挟んで西にあるのだ。

 僕なら素通りできるけれど、そちらに行くとまたここまで戻ってこないといけない。それは面倒くさい。


 実際に大して時間は変わらないだろうし、そもそもが観光半分の精霊回収だけれど、行って戻ってとするのは妙な徒労感がある。


 昨日もちょっと戦争のぞいてきたけれど。


 戦争の方はまだまだ始まったばかり。

 今のところフラーウスの思惑通り、早い展開でニゲルは押されている。それでも決着までには時間が掛かるだろう。

 勇者たちの目はだいぶ死んでいたけれど、兵士として使う分には問題なさそうだ。


 どうぞこのまま自業自得街道を突き進んでください。 

 次に会うのはニゲルの城になるでしょう。


 で、ルベル国の話。

 大陸でもっとも大きな火山もある、火山地帯と言うことで有名な国らしい。

 聞くところによれば、王族や王族に認められた職人は火山の力のこもった炎で鍛冶を行うため、より強いものが作れるのだとか。


 うん。これ、分かったよね。精霊が何処にいるのか一目瞭然って奴だよね。


 なんて思っていたら、ルルスが妙にまじめな顔をしていた。


「どうかしたんですか?」

「この国ですが、精霊の力の残滓が他の国よりも多い気がします」

「つまり、精霊が元気ってことですね?」

「いえ……おそらくその逆かと。私達と同じような状況だった場合、力を搾り取ろうとした結果のように感じます。ここまで自在に私達の力を奪うのは想定していませんでした……」

「技術大国って話ですからね。何はともあれ急いだほうが良いかもしれませんね」


 どれくらい弱っているかは知らないけれど、結構な感じで弱っていそうだ。

 じゃあ、今回は精霊救出RTAとかしたほうが良いのかもしれない。

 幸い場所の大まかな予想はついている。


「とりあえずは王都まで行きましょうか。念のため急いでいきますので、付いてきてくださいね」

「分かりました」


 そう言ってルルスが精霊形態になったのを見届けてから、走ることにした。





 ということで、ルベル王都に到着。

 大陸一の火山に手を加えて都を形成しているらしく、王都の中は坂道がたくさんありそうだ。

 それから、あちこちに煙突があり、町のいたるところに歯車がみられるスチームパンク的な王都のようだ。

 その造形はなんだかとても心が惹かれる。


 特別ロボや機械に興味があるわけではない僕でもこうなのだから、そう言うのが好きな人が来たらテンションが上がりすぎて死ぬかもしれない。


 まあ、中には入らないのだけれど。

 ()()()()()()()()()()()()()()ということは、僕の予想はおおむね間違いではないということだろうし。

 では駆け上がります。この巨大な火山を。

 それこそ、精霊の樹に負けず劣らずの広大な自然を。


 人としての感性の名残なのか、それとも神目線でそう思っているのか、こういった広大な場所はそれだけで心が躍る。

 人としての感性としては、奈良の大仏を見た時のようなそんな感動。

 神目線だとすれば、よくぞここまで大きくなった、美しく育った、みたいな育ての親的心境。別に僕がこの世界を作ったわけではないので、ちょっと違うか。


 火口に到着。煙をもくもくと立ち昇らせていて、硫黄の匂いが鼻を刺す。

 いかにも火山っぽい場所だけれど、日本のそれとは規模が違う。

 軽く都市程度は飲み込めるような大きな火口だ。


 火花がそれこそ花火のように弾けているし、のぞき込めばドロドロとした溶岩がぷくぷくと沸騰している。

 溶岩に沸騰しているという表現があっているのか知らないけれど。

 大体こんな距離で溶岩を見たことはない。


『一気にここまで来ましたが、この中にいるとお思いなのですか?』

「そうですよ。むしろ、ここ以外ないと思います。

 というわけなのですが、ルルス的にここに飛び込むのはセーフですか?」

『私達精霊はそれぞれ特性は異なる部分もありますが、基本的には自然そのものです。

 ですから自然に害されることはまずありませんし、阻むこともできません』

「それじゃあ、飛び降りますんで付いてきてください」


 大丈夫らしいので、特に心配することなく僕は火口に飛び降りた。





 マグマ風呂なんて、人の時には無理だった。と言うか亜神的にも想像したことはないけれど、なかなかの湯加減だ。

 問題は大きすぎて泳がないといけないということだけ。

 そしてちょっと考えなしだったのだけれど、僕の身体はともかく服は燃え尽きるんじゃないかなと、他の荷物同様に魔法で守っておくべきだったかなと思ったのだけれど、さすが神様製。マグマ程度ではびくともしない。


『服が無くなっていたら、どうするつもりだったんですか?』

「その辺の葉っぱとかで、適当に隠すべきところを隠せばいいんじゃないですか?」

『確かにそうですね。でも葉で服を作るのは面倒くさそうですが』

「大体創造で作れるでしょうから。今着ているこれの複製は出来ませんでしたけど」


 人間時代だった僕が「そこが問題ではない」と突っ込みそうな会話だけれど、今の僕は亜神なので別に全裸ででも構わない。見たければ見ればいいと思う。

 絶対面倒くさいことになるのでしないけれど。

 そしてルルスも服に関しては、僕と大して認識の差はないらしい。


 と言うか、ルルスは溶岩につからずに浮いている。精霊ズルい。

 なんて益体もないことを考えてながら、精霊探知機のルルスに付いて行っていたら、火口の中に大きな洞窟の入り口のようなものを見つけた。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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