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閑話 城の奥底で 後編

 そう、ボクたちは強くない。強くならないで良いように気を付けて行動してきたから。

 それでも、一般人よりは強いし、冒険者で見た場合もほどほどには強い。


 ボクたちは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 それが何を意味しているのかは、磯部君が推測してくれた。

 推測の域は出ないけれど、それを裏付ける情報は少しずつ集まってきている。


 でもまあ、それはそれとして。


「でも、フラーウスがニゲルに勝ったら、それこそ動けなくなるんじゃない?」


 戦勝ムードと言うのだろうか、憎き敵を打倒した兵士や騎士、戦争を始めた王族達は国民から絶大な支持を受けるだろう。そうなったら、今以上に動きにくくなるに違いない。

 磯部君は難しそうな顔をして、自信なさそうに考えを口にする。


「勇者のお披露目があった日の騒動については覚えてるか?」

「確か賊が入ってきたってやつだよね。何か盗られたらしいけれど、何を盗られたのかは結局わからなかった奴。その犯人が通山君だっていう話もあったっけ?」


 だけれど通山君は死んだのだ。ボクが直接見たわけではないけれど、情報としては確かだと言える。

 だから賊が入ったという情報自体嘘だったんじゃないか、ということにしていたと思う。

 ボクの答えに磯部君が頷いた。


「その時に盗られたものって、たぶん精霊なんだよ。

 フラーウスがニゲルを前々から狙っていたとは言っても、今回の戦争はあまりにも突然だし、作戦についてもあの王女様が主導するとはとても思えない」

「ボクたちの扱いはともかく、フラーウス国民から見るとできた人だもんね。

 それも表面だけってわけじゃなくて、本当にフラーウスを発展させようとしているみたいだし」

「そんな王女様が村と町を破壊しても戦争をしたいのかと言われたら……」

「精霊が関係しているってこと? そもそも精霊って何?」


 ボクが首をかしげると、磯部君は一冊の絵本を見せてくれた。

 スキルで読めるようになった文字をぱらぱらと追っていく。どうやら子供向けらしい。

 その中に「かつて国々は6人の精霊に力を借りて大いに栄えた」という一文がある。


 これだけだと、神話とかおとぎ話の域でしかないと思う。

 何せこの本自体が、今の国々ができた経緯みたいなものだから。

 もう何年前の話なんだ。


「本に書いていることが本当で、フラーウスは精霊を奪われたから、ニゲルの精霊を欲しているってこと?」

「状況的に見ると、十分にありそうじゃないか? こういうおとぎ話って案外馬鹿にできなかったりするし、事実は捻じ曲げられていても、要素要素は事実である可能性は高いと思う」

「磯部君的に精霊の役割は何だって考えてるの?」

「国を栄えさせるための装置。それこそ地球で言えば電気レベルに必要とされているんじゃないかなと。土地を栄えさせるものだから、いなくなったら一気に食糧事情が悪くなると考えてる」


 なるほど、なるほど。磯部君の話を信じるのであれば、精霊がいなくなることは国の存亡に繋がりそうだ。

 一般の人は精霊なんて知らないだろうけれど、作物が美味しく無くなったり、収穫量が落ちたりして、不満が溜まれば矛先を指導者に向けさせることもできるだろう。


「だとしたら、なおさらフラーウスがニゲルに勝ったら動きにくくなるんじゃない?」


 ニゲルに勝つということは、精霊を再度手に入れるということ。

 そうしたら、人々の不満は貯まらない。作戦は難しい道を行くことになる。

 そう思って尋ねたけれど、磯部君はボクの問いには答えずに、逆に疑問をぶつけてきた。


「フラーウスの精霊を奪った人が、フラーウスの精霊だけで満足すると思うか?」

「なるほど、ニゲルの精霊も狙っている可能性が高いんだね。

 と言うか、世界中の精霊を狙っているのかな?」

「お披露目があったとは言っても、フラーウスの王城に単独で潜入して精霊を盗んでいけるだけの人だから、戦争に紛れて盗むくらいはするんじゃないかなと、思ってはいるんだが……」


 時間はかかるし、確実とは言えないけれど、ボクたちの安全を考えるのであれば悪くない。


「うん。じゃあしばらくは、磯部君の言ったようにやってみようか」

「前もそうだったけど、それで良いのか?」

「良いよ。どうにもボクは急ぎすぎるみたいだから。

 それに失敗しても磯部君のせいにはしないよ」


 提案は磯部君だけれど、これはボクが納得してやるのだ。

 責任はボクが持つ。2人しかいないわけだから、責任も何もって感じはするけれど。


「分かった。それじゃあ、様子を見て作戦が行われた村と町に行って貰おう」

「どうして?」

「クラスメイトが滅ぼしたって証拠が出てくるかもしれない」

「出てこないかもしれないよ?」

「その時はその時。何かそれっぽいものさえ見つかれば、何かに使えるかもしれない。

 使えなかったらその時、俺たちが避けるべきは手札がなくなることだろうから」

「なるほど。それじゃあ、時期を見て行ってもらうように頼むよ」


 確かに王家の紋章が入った何かでも落ちていたら儲けもの。

 それだけで説得力にはならなくても、後押しするくらいの効果はあるかもしれない。

 誰に行ってもらうのが良いかなと考えながら、こっそり部屋を出た。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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― 新着の感想 ―
[一言] なんかなぁ…… こいつらと、フラーウスの王族なら、後者の方を応援するなぁ。 なんか受け付けない(^-^;
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