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「近年の気候不順や不作は、精霊を閉じ込めていたせいで起こったことなのだそうです。

 このまま放っておくと、季節が20も回らないうちに、世界が崩壊してしまうでしょう」

「ふぅん……」


 獣人族のリーダーが、見下すような形でこちらを見る。

 見下すというか、疑うというか、怪しんでいるというか。

 何にしても、嘘は言っていないのでいくら疑われようと、痛くも痒くもないのだけれど。


 普通は世界崩壊をいきなり言われても、信用できないって言うのもわかるけどね。

 1999年に恐怖の大王がどうだっていうことがあったって聞いたことがあるけれど、そんなことは起こらずに2000年以降も続いているのだから。

 あれ? でも結構信じた人がいるって話何だっけ? よくわからないけれど、指導者がこんな話に踊らされているようではいけない。と思わなくもない。


「その話は確かなんだろうな?」

「事実の確認はしておりません。いいえ、事実確認はできません。

 わたしは知り得た情報をお伝えするだけですので」

「わかった。下がれ」

「はい。御前を失礼いたします」


 話したいことは話したので、一礼して場を後にする。

 扉の前で待っていたクマさんに建物の外まで案内してもらってから、解放された。

 その時に家を用意しているから、しばらくはそこで過ごすといいと言われたので、その場所まで行ってみる。


 集落の中心部付近にあるところで、家としての体裁は十分に保っているところで安心した。


 ひとまず家の中に入ってみたけれど、中には何もない。


「別に獣人ってお布団で寝ちゃいけないなんてルールなかったですよね?」

「私の記憶が正しければ、硬い地面でも寝られる、だったと思います」

「寝られるから必要ないってことですか。

 確かにいちいち作っていたら面倒くさそうではありますけどね。硬いのが嫌なら、勝手にその辺の葉っぱでももってこいくらいの勢いですね。

 ワイルドですね。僕的にはお断りしたいんですが」

「フィーニス様は寝ませんよね?」

「寝られはしますけどね。しかも床で寝たところで、特に問題はないです」


 快適かと言われるとそうでもないけれど、不快というほどでもなく。

 次の日、起きた時に別に体が痛くなることもない。

 これに関してはステータス云々というよりも、亜神だからと言う方が大きいと思う。


「それでこれからどうするのですか?」

「もう一度、王様のところに行きますよ。今度は『隠密』を使ってですけど。

 ルルスも来ますか?」

「そうですね。お供します」


 迷うことなく頷いたルルスが精霊状態に戻る。

 この壁もすり抜けられるし、バリア系の魔法も素通りする形態は時折羨ましい。

 残念ながら僕では気配を消すのが限界だ。


 幸いこの集落内でバリアを張っているような場所は感知できないので、『隠密』さえ使っておけばいけないところはないだろう。

 家に入って数分と経っていないけれど、また行くとしましょうか。


「あ、ルルスはいったん扉を開けて、僕が出て行った後で、閉めてから精霊状態で着いてきてください」

「ああ、なるほど。監視対策ですね」


 わざわざ家に入ったのも監視に家にいると思ってほしいから。

 リーダーのいる建物を出た時から、ずっと視線を感じていたので、居ると思って行動したほうが良いだろう。

 ルルスに聞けば教えてくれるだろうけど、違ったところで何だというわけでもない。


 ルルスに何やっているんだろうなと、思われるくらいだろう。


 ルルスが今一度獣人形態になって、扉を開ける。『隠密』を使った状態で合わせて外に出て、ルルスがやってくるのを待つ。

 ルルスもルルスで開けて閉めるだけではなくて、一度キョロキョロしながら外に出て、誰かがやってきたところで、驚いて家に逃げ帰るみたいな演技をしていた。


 ルルスが本当に人見知り――と言うか心に傷を負っている――と思わせるための行動だろうけれど、なんだか見ていて面白かった。


『お待たせしました』


 とルルスが合流したところで、リーダーのところに向かった。





 リーダーとその子供たちは、僕から聞いた話についてさっきまであっていた場所で議論していた。

 息子と思しき方は活発に意見を出しているけれど、娘と思しき方はやや控えめに話を聞いている。

 年齢は息子が20歳。娘が16歳。そしてリーダーが35歳。15歳の時の子供とか、日本では考えられなかったけれど、そう言えばフラーウスも似たような年齢差だったような気がする。


「親父、あの娘が言っていたことをどこまで信用するんだ?」

「精霊の場所やエルフの情勢については、嘘はついてないだろうな」

「それは俺も同感だが、そっちじゃない。世界が崩壊するって方だ」

「どうだろうなぁ。状況としては言っている通りだとも言えるだろうが、あいつが偽の情報をつかまされていないとも限らねえ。騙そうとしている可能性もある」

「監視は?」

「当然」


 当然監視はしているらしい。目の前にいるのだから、ある意味監視はしているのだろうけど。


「だが、あいつの話は一考の余地はある」

「つまり親父は世界が崩壊するって言いたいのか?」

「いいや。エルフどもを蹴散らした後どうするかって話だ。

 蹴散らして終わりってわけにもいかねぇだろう。要するにエルフへの報復をどうするのかって話だが、エルフの領地への加護を減らしてやろうじゃねぇか」

「そうだよな。さすが親父は分かってるぜ」


 あー……やっぱりそうなるのか。

 せめて様子見とかだったら僕の行動も変わったのに。


「本当にそれでいいんでしょうか?」

「何だファラナ。親父に意見する気か?」

「いえ兄様。何でもありません」


 なるほど、なるほど。この話が終わったら、ファラナに接触してみても面白いかもしれない。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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