自然の合目的性
ps4のゲーム「スパイダーマン」にハマっている。三日ぶっ通しでやって、今、攻略率70%くらい。単純なボタン操作から繰りひろげられる爽快なアクションは、ガジェットを駆使すれば戦略性も高くなる。やることもアイテムを集めたり、名所をカメラで撮影したりと充実している。
オープンワールドならではの自由に摩天楼を飛び交う楽しさがこの作品の醍醐味である。蜘蛛の糸を駆使したパルクールは、他の作品には見られない爽快感を生む。加えてこのゲームは、不要なインターフェースが省かれていて、シンプルな操作で映画のようなアクションを楽しめる。いずれにせよ、この作品が稀にみるクオリティであることは間違いない。かつてps2でハマったスパイダーマンのゲームからもかなり進化している。
スパイダーマンとは、その名の通り、蜘蛛の能力を手に入れたヒーローのことなのだが、この能力はシンプルでありながら、悪党との戦闘や救出劇などに多様な動きを生むことができる。このシンプルゆえの多様性に関して、私はよく類似したものとして「ワンピース」におけるルフィのゴムゴムの実の力を思い浮かべてしまう。ゴムの能力もまた、シンプルでありながら、多様な動きを生むことができる。この両者の能力に妙な親近感を抱いてしまうのは私だけだろうか。
思うに両方とも、「痒い所に手が届く」感覚が伴うところに、親近感を生む秘密があるようだ。朝、寝ぼけた状態で、ちょっと離れたところにスマホがあるとき、「もう少し腕が伸びれば、あるいはあのスマホを引き寄せられれば、動かなくて済むのに」と思った人は少なくはないだろう。それを実現するのがゴム、ないし蜘蛛の能力なのである。つまり、日常レベルで、あればちょっと便利な感覚が、この両者の能力に親近感を持たせているのである。
しかしそれだけでは、「孫の手」と大差ない。すごいのはこのアイデアが、超人的な強さを生むところだ。一見するとショボいこの能力も、使い方次第では超人的なふるまいを見せる。しかもその強さは、ただ力を増幅するだけのものよりも、柔軟でしなやかなのである。力を増幅する類の強さを硬直した強さと呼ぶとすれば、この両者の強さは柔軟な強さと呼べるだろう。だからこの能力を持った主人公のバトルには戦略性が生まれる。能力も使いようによって無限に進化する。
ここから学ぶべきことがあるとしたら、アイデアにおいては常に、自然を参考にして、その合目的性をうまく取り入れられれば、多様な可能性が生まれやすいということだろう。ちょうど蜘蛛やゴムの性能に着目するように。人間の脳にはどうしても、構造的に物事を配置してしまう癖がある。それは街の碁盤目スタイルや、田んぼの稲の配置を見れば明らかである。しかし、それだけではしなやかさは育まれないだろう。そこで自然にふと目を向けてみれば、そこにはカッチリとした構造には収まることなく、むしろその網の目を縫うようにして生命を持続させる力がある。アイデアというものも、形式にこだわってばかりでは発展性が失われてしまう。まずは身近な自然に目を向けることを、インスピレーションの土壌としたいところである。