possess
僕の身体からにじみ出る何か。蒼く光り輝き、そして崩れていった。僕は消滅したんだ。
「ねぇ、起きてよ。 起きてったら ねぇ新。」
「ん。んー うるさいな。どうしたのさ美沙。」僕は美沙の声で起きてしまった。
「新、大変だよ!西の国アルカンでまた魔術師が。」
「は?またかよ。いい加減にしてくれよ。これじゃ、いくら魔力があっても足りねぇよ。」
「愚痴はいいから行くよ。」
僕は仕方なく美沙に言われるがまま西の国アルカンへ向かった。。。
ここは魔術が世界の均衡を保つ魔術世界。君たちの住む世界の裏側だ。
この世界には魔術を使う魔術師が大勢いる。中にはローゼから流れてくる奴もいる。
僕たちもその中の二人だ。10年前、僕たちが8歳の時エンゼとローゼの 間の歪みに吸い込まれ今に至る。
「ねぇ新、さっきから何言ってんのさ?」
「ん?そりゃこの世界のことを大まかに解説してたが。」
「え、キモい。やめてよね。そういうこと外でするの。双子だってバレたら恥ずかしいじゃん!」
そう、僕たちは兄妹なのです。
僕が反論しようとしたら美沙に続けて言われてしまった。
「そんなことより、もうすぐアルカンに着くよ。準備してよ。」
「わかってるよ。」僕は半分嫌々返事をした。
「じゃ、魔術師ぶっ倒しにいくよ!新!」
「はいはい。」心の中では美沙だけで行ってくれと思っている。
その時、前方から矢が。それをかわした二人。
「じゃあ、新、先に行くから。」美沙はそう言って高速魔法を使って僕をおいて相手の陣地に走って行った。僕だってレバを使いたいが訳あって、僕は今、魔法は一つしか使えない。
向こうで剣の音がする。美沙が戦ってるんだ。僕は歩きながら敵の陣地に入った。
まぁ当たり前のように敵の魔術師が攻撃を仕掛けて来る。
僕は腰につけていた刀を一振りし、敵を斬撃で弾き飛ばした。
言っておくがこれは魔法ではない。ただ剣の鍛錬で身につけたものだ。だがこの斬撃にマナを送れば人によっちゃ山を切ることも出来る。 僕には出来ないが。。。
辺りにいた敵をある程度片付けた時、美沙が向かった方向で大きな爆発の後、白い光が見えた。
美沙が負けるはずがないと思いつつ僕は光が見えた方向に走って行った。
その白い光が見えたところでは、美沙がその細々しい身体で大量のスカルと戦っていた。
「はぁ。キリがないな。あれ使っちゃおうかな」
「今の私なら5分はイケるはず。その時間で片付ければ新がちょうど来るはず。」
そう言った美沙は自分の親指を犬歯で噛み血を出した。
続けて何かを唱え始めた。
「我、汝の憑り身なり。我に汝の加護を。possess(憑依)。フェアリー」
美沙の身体に変化が。背中には白く輝く羽。腰からは尻尾が生えた。肌も白っぽくなった。
フェアリー:西洋の伝説などで出てくる超自然的な生物。
「さぁて、時間は5分。それまでに 終わらせる。」
フェアリーの物凄いスピードで飛び回りスカルを戦闘不能にしていく美沙。
それを隠れて黙って見ている紅のフードを被った何者か。
「これでラスト!はあ! ふぅ〜終わった。」 徐々に美沙の憑依も解けていった。
「ありゃりゃ。やっぱ4~5分が限度か。もっとマナを上げなきゃ。」
それを見ていた紅のフードの者は微かな笑みを浮かべ消えた。
「おーい。美沙。ごめん遅れちゃった。」新が到着した。
「新、遅い!私がスカルを全部倒してから来るとか。おかげでpossess使う羽目になったのよ。」
「悪かったって。ん?スカル?スカルと戦っていたの?ずっと!?」
「そうだけど。どうしたの?慌てて。」
「よく考えろ。スカルは魔術師からマナをもらって動いている。そのスカルがここにはざっと100体はいる。相当のマナの魔術師だよ。魔術師は倒してないんだろ?」
「うん。見当たらなかったから。」
「んふふ。バイバイ若い魔術師ちゃん。」がれきの隅からマナ入りの矢を放った。それは美沙の腹部に。「え、な、なんで。どういう事よ。」「なんで貴方。私のマナ入りの矢を手で止めるなんて。」
そこにはスカルの主人が放った矢を掴んでいる新の姿。
「マナ入りの矢を手掴みなんて、腕ごと持っていかれても。」
「お前、美沙に矢を放ったこと悔やめよ。向こうの世界で。」新は血だらけの手で刀を持ち
「possess on」と小声で発する。 美沙はそれを見て、すかさず物陰に避難した。
スカルの主人は新を見て血相を変えた。 「嘘でしょ。まさか本当にいるなんて。ローゼの人間で自分の身体に他の魂を入れて憑依体になる魔術師。」 「憑依魔術師」
「今更気付いても遅せぇ。お前に残った選択肢は僕に殺されるか、僕にじっくり殺されるかだけだ。」
「possess on」「アーサー」 新の身体は蒼白く光り持っていた刀は大きな金色を剣に変わった。西洋風の鎧を身にまとった。「さぁ、行こう。スカル使いよ」 人格も多少変わるらしい。
剣を鞘から抜き出した。黄金に輝くアーサー王の剣。名は 聖剣
新はつま先をスカル使いに向け「覚悟は出来たな。お前はここで終わりだ。次の人生に期待して消えろ」
新はそう言って地面を蹴りスカル使いの間合いに即座に入り腹に聖剣を突き刺した。
スカル使いはその場に倒れこみ「ローズン。またお会いしましょう。じゃあねぇ。」
そう言い残し砂になった。
「ありがとう。アーサー王」新はそう呟き元の姿に戻った。
「美沙帰るぞ。王都に戻って師匠に報告だ。あのスカル使いのことも気になる。」
隠れていた美沙はマナの使いすぎで歩けてはいるが産まれたての子鹿のようにガクガクだ。
仕方なく馬車まで僕がおぶって行く。そして帰るんだ。王都に。
ここは王都から数万キロ離れた国、日の国。
「申し訳ありません。アルカン支配は失敗しました。」スカル使いが誰かと話している。
「君がここまで深傷を負うなんてどうしたのさ。」
「はい。実はローズンと見られる男に邪魔をされまして。」
「へー。ローズンか。珍しいな。何の魂を憑依させてたの?」
「確か、アーサーと言っておられました。」
「アーサー」そう言うとその誰かがふふっ。はははははは。と笑い始めた。
「なるほど。アーサーか」 「ようやくだ。長年待った。俺の半身ついに見つけた。」
「さぁ、始めようか。まずは風の国フートを陥とす」「みんな起きて。戦争の始まりだ」