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これは君のパラミシア  作者: 御乃咲 司
第一節『これは月が導く宿命の標』
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68.力の片鱗


「ほんとにしぶてぇな」

「君たちがいくら集まっても僕は倒せないよ」

「それはわからないさ」


 ふわりと地に降りた男の言葉を否定し、ロウは腰の鞘に手を当てながら強く大地を蹴り放った。


「剣技で勝負かい? 受けて立つよ」


 何度も激しくぶつかり合う刀と刺突剣が、小さな火花を幾度とあげながら高い金属音を周囲へと響かせる。

 その隙を逃さず、リアンが即座に駆けだした。

 

「ロウ!」


 叫ぶリアンの声にロウは刺突剣を弾くと、男から間合いをとる。


「うおぉぉぉぉッ!」


 リアンの気合の乗った声と共に、放出されたのは密度の高い紅蓮の炎。


「その程度の炎なら僕の風で一吹きだよ。風に煽られ、さらに燃え上がる炎……美しい」


 男が片手を上げると激しい風が巻き起こり、炎の軌道を真逆へと変える。

 そして風に煽られ、激しさを増した炎が眼前に迫ると――


「後は頼むぞ」


 言葉を残してその場から飛び退いたリアンの背後には、黒い渦を展開し待ち構えたシンカの姿があった。

 自分の炎が返されることはリアンとて想定済だ。ならば男の風を利用し、さらに威力を乗せた返しきれない炎を放てばいい。

 リアンはロウが男と斬り合っている間に、男とシンカの間に走り込んでいた。

 

「今度こそっ!」


 威力を増した炎を吸収したシンカの食い縛った歯が僅かに軋む。

 一度、黒渦の中に完全に取り込まなければ、狙いを定めることは困難だ。

 とはいえ、今のシンカにすべてを完全に取り込むことはできない。取り込めば狙いを定めている間に暴発してしまうだろう。

 だが、これだけ増大した炎であれば、精密な狙いは必要ない。


 暴発する前に迷うことなく即座に反射した炎は、周囲の空気を歪ませながら地を焦し男へと襲いかかる。


「この威力はさすが無理よね」

「それなら華麗に避けるまでだよ。なッ!?」


 余裕を見せながらそれを避けようとするものの、男の足は何かに捕らわれ動かすことができなかった。

 地面に続く氷の道が、辿り着いた男の足を凍てつかせている。


「俺たちの勝ちだ」


 男が声の方へ視線を向けると、そこには片手を地面に着いたロウの姿があった。


「くそッ、ぐあぁぁぁぁぁぁっ!」


 途端、男は焦燥の色を浮かべながら炎に呑みこまれた。

 だがそれでも――


「ぐっ、ぬぅ……くそぉぉぉぉ!」


 離れているカグラたちにも余波を残す程の暴風を巻き起こし、纏った炎を消滅させた。


「チッ!」

「これでも駄目なの!?」


 男の風で威力が増した炎を、さらに増幅させて反射した猛る炎の一撃。それすらも掻き消す激しい暴風は、男の強さをこれ以上はないくらいにわかりやすく示していた。

 しかしさっきとは違って無傷というわけではなく、男の纏う白のタキシードは所々に焼け焦げ、炎の残した痕跡は彼の美しいと自称する顔にまで及んでいる。


「許さない……許さないよ。僕の美しい顔に火傷なんて――絶対に許さない」


 男の表情が変わる。

 殺気の満ちた瞳がゆっくりと周囲を見渡し、立ちすくむ少女を捉えた。


「エニャ。いい加減にしないと、君の大切な人がどうなってもしらないよ?」

「……大切な……人?」

「そうだよ。その人の身が心配なら早く目を覚ますんだ。ミゼンがそういう男だと、君は知っているだろう?」

「ミゼン……。ミ……ゼン。あっ――あぁぁぁぁぁぁッ!」


 少女が頭を抱え、途端に叫び声を上げた。

 同時に、信じられないほどに少女の中の魔力が増幅していく。


 魔力を外に漏らさないようにすることは、魔憑まつきが普段から自然と行っていることだ。覚醒したばかりだと溢れ出てしまう魔力も、馴染んでくれば自身が疲れないようにある程度までは無意識に制御できるようになっていく。


 しかし、それはあくまである程度までであって、魔力の繊細な制御はかなり難しい。普通の人間にも微量の魔力は流れているが、当然その制御はできていない。

 制御できていないという点ではリアンも同じことだ。それでも元の魔力量が違うため、普段感じる魔力は普通の人間より高い。

 つまり、魔力を感知することに長けている者からすれば、その人が魔憑であるかどうかがすぐにわかる、ということだ。


 その魔憑が、魔力の制御にかなり長けてでもいない限り。


「あのっ、大丈夫ですか!?」


 カグラが感情の乱れたエニャの背中を一生懸命に擦る。


「カグラ! 早くその子から離れなさい!」

「えっ? きゃっ!」


 叫ぶシンカの声に、カグラは瞬時に反応することができなかった。

 エニャはカグラの片手を掴むと、そのまま軽く持ち上げる。


「これでいいのね。――NO.Ⅳ」

「そうだよ。やれば出来るじゃないか。あとは、姉の方だよ」

「わかった」


 がらりと変わった雰囲気。怯えた態度はすでになく、どこか光を失ったような空虚な瞳。これがさっきまでの少女と同一人物だというのか。


 今までのエニャの声色とはまったく違う冷めた声で一言。

 言った瞬間、カグラをシンカの方へと放り投げた。


「カグラ!」


 エニャの姿がその場から消える。

 かと思った瞬間、カグラがシンカに届くよりも先に、いつの間にか回り込んだエニャがシンカの背後に立ち、彼女の片腕を強く締め上げた。


「あぁぁぁぁッ!」


 そして、飛んできたカグラをエニャが空いた片手で受け止める。


「完了」


 淡々と無感情のままエニャは静かに告げた。

 その速さは尋常ではなく、あまりにも刹那的に起きた出来事は決して誰の介入も許さなかった。


「う、嘘だろ……」

「おい、ロウ」

「駄目だ。まったく……見えなかった」


 驚愕するセリス。リアンはロウに見えたか、と尋ねたかったのだろう。

 そんなリアンに対して、ロウは静かに首を左右に振った。

 このとき、ロウはエニャに秘められた力の底が見えなかった。ただ一つわかることは、今の自分たちよりも遥かに格上の相手である、ということだ。


 様子を見るに、雰囲気が変わるエニャの前の姿が演技だったということはないだろう。だとするならば、この中で感知に長けたロウに気付かせないほど、いや、魔憑でないと思わせるほどの魔力の制御を、エニャは記憶が曖昧な状況で行っていた。

 無意識下でそこまでの制御ができるということは、当然それだけ力の扱いに長けているということだ。


「よくやった、君の脚はいつ見てもすごいね。さすがは()、美しいよ。あとは……君たちを片付けるだけだ」


 怒気をはらんだ言葉と共に、男は刺突剣をロウへと向けた。

 このとき、ロウたちの思考はこの状況にどう対処するか、それのみを考えていた。しかし二人の少女は捕まり、ただでさえ四人掛かりで押されていた状況が悪化したのだから、良案などそうそう出るものではない。


 すると、男は向けた刺突剣を下げ、自らを叱咤するように呼吸を整える。


「いけないいけない。美しい顔を傷つけられたら、どうも頭に血がのぼってしまう。だから僕に役者は向かないんだよ、まったく。これじゃあエクスィに何も言えないね」

「どういうことだ?」

「わからなくていいよ。そういえば氷の君。君はさっき一度だけ技の名を言っていたね? それなのに他の者たちがそれを使わないのはどうしてなんだい?」

「俺が?」

 

 氷槌、のことを言っているのだろうか。しかしそれは、ロウも無意識にそう叫んでいただけで意図的に発した言葉ではなく、言われるまで気付かなかった。

 ロウにとってそれは、特に意味のあるものではなかったのだ。

 何故それを尋ねるのかと、怪訝な表情を浮かべるロウたちを見て、男は呆れを含んだ溜息を吐いた。


「はぁ……なるほど。君たちは魔憑の力をきちんと理解できていないようだ。ならきっと、詠唱というものも知らないんだろうね」


 詠唱――その意味自体は当然知っているが、男が言っているのはそういうことではないだろう。しかし、それになんの意味があるというのか。

 つらつらと言霊を並べる間にやられるかもしれない行為に意味を感じられないし、そもそもその文言をいちいち自分で考えるというのか。


 そんなロウたちの思考を理解したかのように男は……


「いいよ、特別だ。力は加減してあげるから、特等席で見ているといい」

 

 刺突剣を収め、左手を胸に添えながら右手を高く掲げた。


「佳麗な花々、可憐な乙女。美しきものには儚き運命」


 口にした瞬間、男の中から大きな魔力を感じ取る。

 感知に長けたロウだけでなく、覚醒したばかりで魔力の感覚を掴み切れていないリアンが盛大に顔を引きつらせたことから、その魔力の大きさはセリスにも理解することができた。


 まずい。その一言が脳裏を過ぎった刹那、ロウとリアンが同時に斬り掛かる。


「醜き世界に散る君よ。悔いることなく逝くのなら、きっと世界は美しい」


 しかし、二人の攻撃を躱しながら男は言霊を口にし続ける。

 淡く輝く体。溢れ出る淡く薄い水色のような魔力が男を纏い、さらにその周囲の景色を歪ませながら、本来見えないはずのそれを目視させるほど高まっていく。


 練りだした魔力は属性に応じた色を纏い、それは当然誰にでも目視できるものだ。魔弾、魔障壁といった魔憑にとっての基礎的な技も、無論不可視ではない。

 だが先も述べたように、普通の人間にも魔力は流れているし、覚醒したばかりの魔憑き至ってはそれなりの量が体から漏れてしまうものだ。


 ならば皆が皆、道行く人が体に何かオーラのようなものを漂わせているのか。

 そんな馬鹿な話があるはずもなく、魔力とは基本的に不可視のものだ。

 いや、正確には人の中を流れ、空気中にも漂っている生命の素……魔力となって練り出される前のその魔素こそが不可視なのだ


 つまり今の男は、陽炎に色をつけたようなものだろうか。

 内に集まる魔素が変換された膨大な魔力の揺らめきが、本来目えないはずの中空に漂う純粋な魔素を目視させるほどに干渉している。

 それだけでも今がどれだけ危機的な状況であるのか、想像するに難くはない。


 シンカもカグラも、そしてセリスもその光景を前に動くことができないでいた。

 小さく震えた体は、自分の意思に従わず動こうとしない。

 少女たちが感じたそれは、あまりに純粋な恐怖だった。

 脳裏を過ぎった仲間を失う想像イメージが、動くべき身体を停止させている。動かなければ失うという最中、動けないというのはなんとも矛盾した話ではあるが、感情や行動の結びつきは単純であるつつも複雑であり、理解し得ない矛盾をはらんでいる事こそが人として正常だともいえるだろう。


 そして男が最後の言葉を口にした瞬間……


「だから僕は送り出そう――優雅な花風(グラーツィアヴァント)


 瞬間、訪れる静寂。

 まるで時の流れがゆっくりに感じる中、優しい風が頬を撫で、そして……


 痛みを感じる暇もなくロウたちの体が地面を離れ、勢いよく吹き飛ばれた。

 直線的な軌道でロウは岩壁に、リアンは折り重なった倒れた大木に、それぞれが体を強く打ち付け吐血する。

 途端遅れて感じる腹部の痛み。まるで大砲の砲弾による直撃を、至近距離から無防備で受けたような鈍い痛みが襲う。


「ロウ、リアン!」

「NO.Ⅳ……テッセラ。彼は強い。もう、あの人たちは駄目……諦めて」

「っ!」


 意識の硬直から解かれたシンカが逃れようともがくが、エニャは脱出を許さない。片手で掴んだシンカの腕を再び締上げ、その行動を制する。

 エニャのもう片方の手は、カグラ後ろから首へと回されていた。当然、カグラの力ではとても抜出せそうもない。


「さぁ――誰からやってしまおうか。まずは、憎い炎使いから消そうかな」

「く、くそっ……たれ」

「黙りなよ」


 刺突剣で突きを放つ。剣先から出た槍頭のような鋭利な風が、リアンの肩を貫通した。

 短い悲鳴と共に噴き出す鮮血。

 テッセラと呼ばれた男はそれを静かに眺めつつ、リアンへと歩み寄っていく。


「次はどこがいいんだい?」

「糞が……」


 悪態をつくものの、リアンは立ち上がることもできず動けないでいた。

 詠唱による極僅かな反応すら許されなかった不可視の攻撃。その威力は魔憑になったばかりの彼が今、意識を保っていられるのが不思議なくらいだろう。

 そして炎を扱う訓練は日常に織り交ぜていたものの、暴走した魔獣戦以降初めての実戦だ。リアンは魔力の調整が上手くいかず、ほとんど使いきってしまっていた。状況は極めて最悪だといえる。


「汚い言葉だ。醜いね……」


 途端、テッセラの背後で何かが光った。

 その気配に気付きテッセラが振り返った瞬間、顔を横に傾けるものの頬に走る鋭い痛み。


「っ、はぁ……はぁ……」


 荒い息を吐きつつも、なんとか放った僅かな抵抗(氷の刃)


 テッセラが自分の頬にそっと触れると、その手にはぬるっとした感触。

 手をみると、指先が赤く染まっていた。


「また……僕の顔を、顔を……顔をぉぉぉぉッ!」


 風でロウを吹き飛ばし、後ろに倒れた大木にぶつける。起こした風でさらに地面から宙へと舞い上げると、次にロウを襲うのは上から真下へ向かう強風だ。

 ロウは落下速度に風の勢いを加えられ、地面に強く叩き落された。


 同時に、テッセラの横から炎の魔弾が飛翔する。

 しかしそれがなんだとでも言うかのように、テッセラは刺突剣を突き出した。針状の鋭利な風が迎え撃ち、魔力切れ寸前で放たれた密度の低い炎の魔弾を容易く掻き消す。そしてそのまま、リアンの負傷していないほうの肩を貫いた。


「ぐっ、あぁッ!」

「止めてっ! もう……止めて」


 シンカの口からか細く震えた声が漏れる。

 カグラは声を出すことすらできないでいた。その喉はカラカラに乾き、小さな唇は震えている。

 そんな二人の姿を、エニャは何も言わずにただじっと見つめていた。


「い、行くから……貴方たちについて行くから」

「駄目だよ。こいつらはもう許さないんだ」


 言って、リアンに歩み寄り、勢いよくその肩を踏みつけた。


「ぐあぁぁぁっ!」

「や、止めて下さい。……お、お願いですから」


 カグラから漏れる切実な願い。

 テッセラは二人の少女に視線を向けるとリアンを踏みつけた足をどかし、まるで塵でも捨てるかのように、起こした風で彼の体を軽々と吹き飛ばした。


「可憐な少女を泣かせるのも美しくない、か。元々殺す予定はなかったんだ。命令も下りていないしね、わかったよ。はぁ……それとね、セリス」


 小さく息を吐きながら、テッセラはセリスへと刺突剣を突きつけた。

 

「この子たちに感謝するんだね。次は君の番だったんだよ? 魔憑でない人間が戦いに介入しても、何もできやしないんだ。一桁の数字(アリスモス)はまだ理性的だけど、二桁以上は相手が魔憑でなくとも容赦はしないからね。僕たちの目的が果たされるまでその拾った命、大切にするといい」

「…………」


 セリスはただ茫然と、遠くに倒れたロウとリアンを見ている。その口から一つの言葉も出ず、見開いた目からはまるで戦意が感じられない。

 テッセラの言葉も届いていないのか、まったく反応のないセリスに男は興味を失くしたように視線を逸らした。


「ふむ、戦意喪失か。……行くよ、エニャ」


 エニャは無言で頷き返す。

 テッセラは自身に風を纏うと、その風をエニャにも纏わせ、二人の体はゆっくりと宙に浮かんでいった。エニャの両腕には、二人の少女が囚われたままだ。


「ロウ……リアン……セリス……」


 そう静かに口にしたシンカはすべてを諦めたかのように、ただただ悲しげに三人を見下ろしている。カグラの両眼からは、ぽろぽろと涙が零れて落ちていた。

 そんな二人の姿を、セリスは静かに見上げている。

 セリスの頭の中にあったのは……恐怖だった。


(俺は……いつも役に立たない。また、大切な仲間を失うのか? また俺は……仲間を。そんなの嫌だ……。怖ぇ……怖ぇよ)

 

 セリスは地面に頭をこすり付け、その場にうずくまる。

 その手は震え、強く握られた拳からは血が流れていた。

 恐怖……シンカやカグラとは違い、テッセラが詠唱を唱え始めた時にセリスが感じた恐怖は、絶対に勝てないという本能的なものだった。

 しかし、今感じている恐怖はそれとはまた異なるものだ。


 仲間を、大切な人たちを失う恐怖。

 それは過去の心的外傷トラウマからくる拭えない恐怖だった。


(……失いたくない、失うのはもう嫌だ……。いやだ、イヤだ……嫌だッ!)


「嫌なんだァ――――ッ!」

 

 上半身を勢いよく起こし、空に向かって悲鳴にも似た叫び声を上げた。

 途端、彼の奥底から溢れ出たのは不可視のはずの膨大な魔素。

 魔憑でなければ練り上げられぬ魔力の気(オーラ)。それはフィデリタスが暴走した時に感じた魔力に酷似するものだった。


「なんだこの魔力は!?」


 初めて見せた驚愕の表情を浮かべたテッセラが振り向いた瞬間、吹き荒れるとてつもない暴風。周囲の物を巻き込みながら、セリスを中心にそれは巻き起こっている。激しさを増す暴風はロウやリアンをそのままに、数多の大小様々な木々や岩だけをまるで竜巻のように高く巻き上げた。


「ッ、きゃっ!」


 その内、頭部ほどの大きさをした岩がエニャの腕に直撃する。

 その衝撃で、エニャは思わず二人の少女の体を手離した。


「カグラ!」


 咄嗟に手を伸ばしたシンカはカグラを捕まえ、その腕に抱き寄せた。

 しかし空中で何ができるわけでもない。何一つ抵抗できないまま、身を小さく抱き合いながら吹き荒れる暴風に流されて行く。


「ちっ! 何をやって――ぐはっ!」


 飛び交う木々や岩に対処しながらそう叫んだテッセラも、その全てには対処できなかった。

 腕や体に飛んできたそれらをぶつけ、自身とエニャに纏っていた風が消滅する。


「いや……なん……だよ……」


 パタリと、意識を失ったセリスの体が地に倒れた。

 すると吹き荒れる暴風が収まり、テッセラとエニャの体が地面へと落下する。その上から舞い上がった木々や岩が降り注ぎ、激しい音と共に土煙を舞い上げた。


 シンカはカグラを抱えたまま、まるで風に守られるようにゆっくりと着地する。幸い、いや、まるでそれはセリスの意思が介入していたかのように、風に流されている間も木々や岩にぶつかることはなかった。


 何が起こったか正確に理解することはできないが、今のがセリスの魔憑の力の片鱗であることに間違いない。

 それよりも今は、真っ先にこの場を離れることこそが重要だった。


「カグラ、今の内にみんなを連れて逃げるわよ」

「う、うん!」


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