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これは君のパラミシア  作者: 御乃咲 司
第二節『これは救済を願った再会の詩』
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46.仲間として


 月明かりが照らす夜道を、五人は静かに歩いていた。

 ミロソギアを囲む防壁の上から眺めると、まだ薄らと明るい光の中から聞こえてくる兵士たちの声が遠くに感じられる。

 ふと、ロウが立ち止まって空を見上げると、横を歩いていたカグラがその足を止めてロウを見上げた。

 それに続いて、半歩後ろを歩いていたシンカもその足を止める。


「どうしたんですか?」

「いや……なんでもない」


 再び歩き出すロウの見ていた辺りを見上げると、一匹の蝙蝠が羽ばたいていた。

 そして少し歩いたところで、再びロウは足を止めて振り返り、すぐ後ろをついて歩いていたシンカを見つめる。

 ずっとロウの背中をぼーっと見ていた少女と目が合うと、


「……何か聞きたいことでもありそうな顔だな」

「え? え、ええ」


 その声に、先を歩いていたリアンとセリスも振り返った。


「聞いて納得することがあるなら、聞いてみたらどうだ?」

「そう、ね。でも貴方はきっと嘘を吐けないから……答えたくないことや知られたくないことは黙秘で構わないわ」

「わかった」


 ロウが頷くと、シンカは風に流れる髪をそっと押さえながらロウを見つめた。

 

「前にね、ロウさんの部屋を見たの。勝手に見てごめんなさい」

「わ、私も見てしまいました。……ご、ごめんなさい」

「別に謝ることじゃない。それで?」


 小さく頭を下げる二人の少女にロウは苦笑すると、先を促した。


「貴方は降魔こうまのことをよく知ってるみたいだけど……どうしてなのかなって」

「前に話した、俺に魔憑まつきの力をくれた人に教えて貰った」

「森で……私たちを助けてくれたのは貴方って言ったわよね? 降魔と戦い慣れてたのもその人に教えて貰ったの?」

「あぁ」

「森での降魔を倒せたのに、ミソロギアに向かう途中に現れた降魔にやられたのは……どうして?」


 それはずっと感じていたものだった。今ここでそれを聞いたのは、明日に大きな戦いを控えているからだ。それは純粋な、ロウへの心配だった。


「それはたまにあるんだ。俺にもよくわからないんだが、魔憑の力が極端に弱くなるときがある。あれはそのときだった。心配しなくても明日は大丈夫だ」


 能力が使えないということは、実際のところ今までにもあることだった。 

 氷を扱えないだけならまだいいが、身体能力まで低下し、魔力を感じ取ることもできなくなる。

 その原因はわからないが、森でシンカたちを助けてからミソロギアへ向かうまでの間が、ちょうどそのタイミングだったのだ。 


「……勘違いしないでね? 責めてるわけじゃなくて……今さらかもしれないけど、私はただちゃんと謝りたかったの。あのときは何も知らないで……そのっ……ごめんなさい。あと、ありがとう」

「あ、ありがとうございます」


 照れるように顔を伏せながら言ったシンカに、カグラも続いて感謝を述べた。


「あらためて言われるようなことじゃない」

「よくわからねぇけど、シンカちゃんがロウを嫌ってた理由の誤解でも解けたのか?」


 セリスが首を傾げながら、きょとんとした表情で尋ねる。

 しかし、それは決して聞いてはいけないことだった。


「それはまた別の話よ! ていうか前にも言ったけど、ロウさんのことを嫌いなんて一言だって言ってないでしょ!? ねつ造しないで! あぁ、もう! やっぱり思い出しただけで、ムカムカするわ!」

「おおお、お姉ちゃん! 落ち着いて!」


 頭を掻き毟るようにして荒立った姉を、必死になだめる妹。

 が、カグラにはわかっていた。今のシンカが、あのときのように本心で嫌がっているわけではいないということを。

 そんな姉の照れ隠しを、少し可愛いと思ってしまったのは彼女だけの秘密だ。


「ロウ……お前、いったい何をしたんだ?」


 そんな光景を前に、リアンが堪らずにぼそっと尋ねた。


「そうだぜ。ちゃんと謝ったのかよ」

「泣いてるのを泣いてると指摘しただけだ。謝っては……いない」

「おいおい、さっさと謝れよ」


 そう言われ、ロウは一瞬、詰まったような声を漏らした。


「お前は豚に豚っていうのかよ」

「それは言うだろ」


 セリスが問うと、悩むことなく即座に答えたのはリアンだ。

 それに対して再び問いかけるものの……


「じゃあ、バカにバカって言うのかよ」

「それも言うな。お前のことだ」

「だったら、ゴミみてぇな奴にくずって言うのかよ」

「合わせて塵屑ごみくずだな。お前のことだ」

「お前は辛口なんだよ! ってか、俺に謝れよ!」

「いや、それくらい俺でなくとも言うだろ。謝る必要はない」


 セリスは悔しそうな表情を浮かべながら、がばっとロウへと顔を向け、


「くっ、ロウ! つまり、乙女心は複雑なんだよ」

「あ……あぁ」


 セリスの言葉に、何がつまりなのかはわからないものの、ロウは頷いて返す。

 しかしこのとき、ロウとリアンは同じことを思っていた。

 そういうセリスは乙女心がわかるのか……と。


 そしてロウは苛々してる様子のシンカの方へ向き直ると、戸惑うように名前を呼んだ。


「シンカさん」

「何よ!」


 振り向くシンカの顔にびくっと反応し、ロウがゆっくりとリアンたちの方へ無言のままに振り返る。

 それに対して堪らず無言で視線を逸らし、我関さずを貫こうとする二人。

 再び視線を少女に戻すと、ロウは覚悟を決めて言葉を振り絞った。


「あの……だな」

「ん」

「その……すまなかった」

「……私、涙なんて出てなかったわよね?」

「あ、あぁ。そうだな」

「つまり、泣いてなかったわよね?」

「……」

「なんでそこで黙秘なのよ!」


 ロウの襟元を掴み、ぶんぶんと勢いよく振りだした。


「い、言いたくないことは黙秘でいいって言ったじゃないか」

「つまりそれは、まだ私が泣いてたって言い張るつもりよね? そういうことよね!?」


 掴んだ手の動きが、さらに加速する。


「お、お姉ちゃん! 少しは落ち着いてってば!」


 カグラの言葉に少女の動きがぴたりと止まると、ロウは安堵の息を吐いた。


「……どうして貴方は、私が泣いてるなんて言うわけ? 私を泣き虫キャラにでもしたいの?」


 シンカが少し俯きながら、静かに声を漏らした。


「そ、それはだな……いずれ話す、じゃ駄目か?」

「ロウにしちゃ、キレが悪いじゃねぇか」

「ロウにだって、言えんことくらいはあるだろうさ」


 さっきまで視線を逸らしてた二人が、自然と会話に入ってくる。

 このフォローでさっきのは帳消しだ、といわんばかりの表情を浮かべながら。


「そ、そうだよお姉ちゃん。だから、もうそのことはいいでしょ? ね?」

「はぁ……仕方ないわね。でも、次言ったら許さないわ」

「き、肝に銘じておこう」


 シンカがロウを掴んだ手を離し忠告すると、ロウは静かに頷いた。

 するとさっきまで作り上げていた表情とは打って変わり、シンカは落ち着いた表情を浮かべながら静かに言葉を吐き出していく。


「ロウさんって、本当に不思議よね」

「俺が不思議?」

「なんだか……たまに未来でも知ってるような言動をしたり、妙に鋭かったり。たくさん戦い慣れてるみたいだし、平和に馴染んでないというか……」


 その言葉に、皆の視線がロウへと集まった。

 確かにロウのそういった言動については、皆が思っていたことだ。

 リアンとセリスは前者の理由を知ってはいるものの、やはり後者の部分に置いては疑問が残るのだろう。


「黙秘を行使する」


 その一言に、四人は同時に小さな溜息を吐いた。


「黙秘していいとは確かに言ったけど……それもいつかは教えてくれるの?」


 シンカが納得いかない様子でそう聞くと、ロウは真剣な顔で頷いた。


「まぁいいわ。じゃあ、とりあえず次で最後」

「なんだ?」

「ロウさんはリアンさんたちの他に仲間はいるの?」

「ん、いるぞ。俺の相棒だ」


 ロウが言った瞬間、カグラの視界に放心状態のセリスが映る。

 まるで魂の抜けたようなその姿は、風でも吹こうものならさらさらと飛んで行ってしまいそうだった。


「どどど、どうしたんですか、セリスさん!?」

「…………。ロ、ロウ……ま、まさかその相棒ってのは……」


 なんとか振り絞るように声を発したセリスの顔が、不自然なほど引きつっている。

 しかしそれはセリスだけではなくリアンもまた、普段は見せないような、珍しく引き気味な表情だった。


「ん? もちろんハクだ」

「だあぁぁ――――ッ! やっぱりか! そういや確かにいねぇじゃねぇか! ロウとの再会に感動して、すっかり忘れてた! いや、状況が状況だったからか!? ありえねぇ! ありえねぇぞ! なんで俺は忘れてたんだ!? 俺の本能が無意識の内に奴を遠ざけていただけか!? このままじゃまずい! 非常にまずい! みんな、臨戦態勢だ!」


 これまでにないほどの激しい動揺を見せるセリスが、叫びながら咄嗟にリアンの後ろにその身を隠した。


「おい、セリス! 貴様!」


 背中に張り付いたセリスを引きががそうとリアンが藻掻くものの、このときのセリスは尋常でない力を発揮していた。

 子供の感情が爆発したときに時折見せる、馬鹿力に近いかもしれない。


「なに? 急にどうしたっていうのよ」

「どうしたもこうしたもねぇよ! 今すぐロウから離れろ! じゃねぇと大変だぞ!」


 セリスの必死の声に、二人の少女は訳がわからず互いの顔を見合い、きょとんと首を傾げた。

 当然だ。いきなりそんなことを言われても、まったくもって意味がわからない。


「心配するな。今は傍にない」

「え?」

「ふぅ……」


 セリスの目が点になり、きょろきょろと周囲を見渡す中、リアンはほっと安堵の息を吐いた。


「ふっ、なんだよ。それを早く言えよ。ちょっとだけ、ビビっちまったじゃねぇか。ほんのちょっとだけな」


 言いつつ、リアンの後ろからセリスが余裕の笑みを作りながら出てくる。


「人を盾にして、ほんのちょっとだと?」

「盾にしたんじゃねぇ。リアンの後ろを守ろうとしたんだよ」


 言い訳がましくセリスが答えると、シンカが彼の背後を指さしながら、


「ハクってもしかして、あの子?」

「なっ!?」


 再び、一瞬の素早さでセリスはリアンの背に隠れた。

 こんなに動きの早いセリスを見たのは、戦闘を含めて初めてだ。といっても過言ではないほどに、その動きは俊敏だった。


「ロウ! ててて、てめぇ! 今はここにいねぇんじゃなかったのかよ!」

「……セリス、心配するな。何もいやしない」

「へ?」


 リアンの後ろから覗き込むが、確かに何もいない。


「あっ、本当だ。ふぅ……シンカちゃんの冗談かよ。人が悪いぜまったくよ」

「やっぱり怖いんじゃない」


 じっとりと目を細めながら冷静に突っ込むシンカに、無駄に格好をつけたようなセリスは再び言い訳を返す。


「ふっ、ビビッてたんじゃないさ。リアンの後ろから、相手の隙を伺おうとしていたにすぎない」

「……そうか。俺を二度も盾に使うとは、いい度胸だな。セリス」


 リアンが黒い雰囲気オーラを纏いながら、わなわなと震えている。

 上げた拳は強く握り込まれ、鋭い眼光がセリスを貫いた。


「なっ、何言ってんだよ、リアンさん。人を簡単に疑っちゃいけないんだぜ? 仲間を信じる! ここ数日を通して学んだ、大切なことじゃないか。なぁ、みんな!」


 言って、セリスが振り返る。

 と、そこには汚物を見るような瞳のシンカ。呆れた果てた様子のロウ。困惑気味に苦笑するカグラ。 


「あ……あれ?」

「今のお前に、仲間はいないようだな」


 リアンの感情を押し殺したような低い声に、セリスの額から滝のような冷や汗が流れ落ちた。すると、


「自業自得だな(ね)(です)」


 外野の三人の声が重なり合った。


「覚悟はいいな、セリス」

「いいわけあるかー!」

「逃がすか!」


 全力でセリスが逃走を図る。それをすかさず、全力で追いかけるリアン。

 そんな二人の背を見送りながら、ロウは困ったように頭を掻いた。


「はぁ……ったく」

「本当に飽きない人たちね」


 ロウが溜息を零すと、くすくすと隣で笑ってるカグラを見てシンカが微笑んだ。


「それで、ハクって人は一応味方みたいだけど……どんな人なの? 二人の反応を見る限りはそうね……うん、結構怖そうな人、なの?」

「わわわ、私もそのっ、気になります」

「ん? 人? ハクは人じゃなくて狼だぞ」

「…………へ?」


 間抜けな声を漏らす少女。よもや、人ではないと思ってもいなかったのだろう。

 そんな少女にロウは、再び言葉を重ねた。


「うん、だからな。ハクは狼だ」

「そ……そう、狼ね……ふ~ん。で、その子ってその……も、もふもふしてるの?」


 ちらちらとロウを見ながら、シンカが尋ねる。

 その頬は少し赤らんでいるように見えた。

 余程もふもふしたものに目がないのだろうか。


「もふもふ?」

「あっ、また。お姉ちゃんってば……」


 そんな姉に、カグラは苦笑いを浮かべた。


「で、どうなの?」

「まぁ、少しはもふもふしてるな。白くて本当に綺麗な毛並みなんだ」

「そう……ま、まぁ会える日を楽しみにしているわ」

「楽しみだと言ってられるのも、今の内だ」


 そう口を挟んだリアンの手には、頭にたんこぶをこしらえたセリスが引きずられていた。


「ったく、無駄な労力だ」


 そう小言を漏らしつつ、セリスを渾身の力で放り投げる。

 と、潰れた蛙のようなかっこうで着地したセリスの口から、潰れた声が漏れた。


「ぐへっ!」

「セ、セリスさん!」


 カグラは慌ててセリスに駆け寄るものの、


「どういうこと?」


 シンカはまったくセリスに見向きもせず、リアンに問いかけた。


「ハクレンは誰にも自分を触れさせない。ロウ以外の誰にも気を許さないんだ。そのせいでセリスはあのビビりようだ」

「そ、そんなに凶暴なのね。残念だわ……はぁ~……」


 その事実を聞いて、余程触ってみたかったのだろうか。

 シンカは楽しみを奪われたといわんばかりに、心底残念そうな溜息を漏らした。


「で、どういうことだ? よくよく考えると、あのハクレンが目の届かない所にお前を置くなど昔ではありえんからな。お前が危険な時も助けに来なかったし、ここにいないのは事実なんだろうが……何があったんだ?」

「さぁな、わからないんだ。って、今の言い方じゃまるで、ハクが俺の保護者みたいじゃないか?」

「似たようなものだろ」


 ロウの反論に、リアンは至極当たり前だとでも言うかのように言葉を返した。

 少し不服な表情を浮かべたロウだが、シンカはそれを気にする様子もなく話の先を促すように問いかける。


「わからないって。急にいなくなったの?」

「シンカさんたちが森で目を覚ます前、俺はある人物にあった。俺の記憶にない人だったから誰かはわからない。だが、ハクの様子が変わったのはそのときだ。その人のことが気になってたみたいだから好きにするよう言ったら、その人たちを追いかけた。ハクは利口だ。何か考えがあるんだろう」


 ロウとハクレンの付き合いはそう短いものでもない。

 それはロウに力を与えてくれた人と共にいた頃からの付き合いだが、当時からハクレンは神出鬼没だった。特に飼っているわけでもなく、勝手について来ていたといった感じだ。

 その人曰く、ハクレンは自由気ままだから放っておいても問題ない、とのことだったから、ロウもずっと自由にさせている。


「……そうか。だが、降魔の出現やルインの存在もある。不安じゃないのか?」

「それは大丈夫だ。ハクはかなり強いからな」


 シンカたちが目を覚ます前に別れてから姿を見ていないが、ロウが二年前にリアンたちの元を去ってから、ハクレンが何ヶ月も姿を見せないというのは珍しいことでもなくなっていた。

 心配といえば確かに心配だが、何かあっても逃げるだけの知能も足もある。

 きっと大丈夫だろう。


「だがな……」

「ハクのことを心配してくれるのか? ありがとう」

「……別に心配などしていない」

「セリスさんの言う通り、本当に素直じゃないわね」

「お前に言われたくはない」

「ふふ、そうね」


 反論するリアンの言葉に、シンカは少し微笑んだ。


「ったく、素直が一番だぜ? 素直じゃないから損することなんて、山ほどあるんだからよ。少しくらい我儘でいいんだよ」

「はぁ~……この奇妙な現象にもいい加減に慣れてきたわ」


 いつの間にか割って入るセリスに、シンカは細めた視線を送る。

 が、当のセリスは彼女の言ったことが、なんのことなのかさっぱりわからないといった様子だった。


「あ、あのっ。そろそろ戻らなくていいんですか?」

「そうだな。ずいぶん時間が経ってしまった。明日に備えて今日は休もう」

「そうね。ロウさ――」

「ストッ~プ!」


 急に割って入る声。

 今度はいったい何を言い出すのかと、四人の視線がセリスに集まった。


「俺はシンカちゃんとカグラちゃんでいいんだよ。でもよ、お前らはなんつ~か。そう、違和感だ! 仲間になったんだから、その「さん」ってのが違和感だ! な? お前もそう思うだろ?」

「知らん。シンカやカグラが、俺たちをなんと呼ぼうがどうでもいいことだ。だが、姉や妹なんて呼び方は、そろそろ面倒だと思っていたことは確かだな」


 出会って以降、リアンは初めて二人の少女の名を呼びながら、背を向けて先に歩き出した。


「ったく、仲間って認めたんなら素直にそう言えばいいだろ」


 呆れた声を漏らしながら、セリスはリアンの後を追いかけた。

 すると口早にリアンが言葉を返す。


「煩い黙れなんなら俺が黙らせてやる」

「じ、自分で黙ります」


 そんな会話をしながら歩いて行く二人の背を見つめながら、シンカは胸元でぎゅっと拳を握りしめると、勇気を振り絞って声を出した。


「あ、あの!」

「どうした? シンカ」


 シンカの目が丸くなる。そして――


「ロウ、これからも……よ、よろしくね」


 照れるように言ったシンカを見て、カグラはにこにこと嬉しそうな笑みを浮かべていた。

 するとロウは優しく頷き返しながら、


「俺たちも行こうか」

「は、はい!」

「えぇ」


 先に行った二人を追いかけるように歩き出す。

 シンカとカグラの胸の中にあった不安は、いつの間にか消えていた。


 すでに日は変わり――九月十三日。


 世界を救うための序章とも呼べる戦いが今、始まろうとしていた。   



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