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ぬるぬるファンタジー  作者: フェフオウフコポォ


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31話 国王達の提案

「いや……帰れるんなら帰りたいけど……なぁ? リョウ。」

「おう。別にあんまりいい思い出もないし……」


「ほんとですか!?」


 フレイドロンの国王がガバっと顔を上げる。


「二言はありませんね!?」


 アクアノスの国王もガバっと顔を上げる。


「い、いや! 二言も何も、そもそも帰る方法が無いってそっちが言ってたんじゃん。」


 両国王が揃って顔を上げ、フレイドロン国王が静かに口を開いた。


「ぶっちゃけた話、そもそもここまで混乱が大きくなったのって勇者の影響が大きくないですか?

 確かにそこの魔王さん……クオンさんから譲歩案を取り付けたのは勇者の功績あっての事だと思いますし、それがなかったらクオンさんに人類の大半が抹殺されていたのも理解してます………でもですよ。あのナルキッスが落とされた原因って間違いなく勇者じゃないですか!」

「うっ!」


 思う所がありすぎて、つい声が詰まる。

 

「それにですよ? クオンさんって、元勇者の魔獣だったワケですし、逆に考えると今、魔王が9人いることになるわけじゃないですか? お願いします! みんな連れて帰ってください! この世界に平和をもたらしてください! 勇者様!」


 跪いた形から、全員土下座へとスムーズに変更される。

 圧巻の光景に戸惑いがノンストップだ。


「い、いや、帰れるなら帰るけど! 方法が!」


 アクアノス国王が俺の言葉を受けて顔を上げ両手を打つ。

 するとしずしずと特大のハンバーガーが運ばれて来た。そのハンバーガーに見覚えがあり、俺は手からポンと特大ハンバーガーを出すと、遜色ない品物である事がすぐに見て取れた。


「転送の儀式を両国で必死に完成させました。

 兵士を送り込み、勇者様が使えないからと残していた紙幣を使って購入。」

「ちょっと待て。」


「そして購入してすぐに召喚の儀式を行い兵士をこちらに再召喚しました。」

「金返せ! 5000円くらいしたはずだろ!?」


「この通り、兵士は無事に戻ってきております。

 何でしたら私達国王も一緒に一度転送されましょう。」

「俺の金!」

「落ち着けヒデアキ。これはチャンスだ。」

「リョウ?」


 リョウは一度目を伏せ、息を吸って国王達に向き直る。


「貴方たちにとって俺達がいない方が都合がいいだろう事はわかる。だからといって全て押し付けて送り返すと言われても、こちらには何のメリットもない。俺達はこちらの世界で自由に生きる術を持っているのだから今更そんな事が受け入れられると本気で思っているのか?」


 国王達は何も言わずリョウの言葉を待っている。


「不利益を押し付けるだけの代償はきちんと用意があるんだろうな?」

「……こちらに。」


 金銀財宝が持ち込まれてくる。

 特大の宝石やギラギラとした輝きを放つ装飾品に、つい目が奪われる。

 リヤカー2台分はありそうだ。


「両国で保有している財宝です。

 これで恒久の平穏が手に入るのであれば、どうぞお納めください。」


 ひゃっほーい! 大金持ちだー!

 思わず小躍りしたくなる。


「……本当に帰れるのか?」


 俺と対照的に訝しげなリョウの口調。


「不安を感じて当然でしょう。ですので両国王を一緒に転送し、そして国王だけ再召喚致します。」

「国王を人質として差し出す事は分かったが国王を切り捨てている可能性もあり、その提案は受け入れがたい。その他の人物……例えば王子や王女を指定して変更しても構わないのか?」

「構いません。無事に送り、そしてこの世界の人間だけ再召喚しますので。」


 即答が帰ってきた事でリョウは少しだけ納得した顔をし俺に顔を寄せてきた。


「どうする? 信用していいかは分からんが元の世界に帰れるチャンスではある。ただ罠の可能性も捨てきれん。まったく知らない世界に転送されて厄介払いの可能性も高い。」

「ん~。どうなんだろうな? そうするつもりなら俺達が居る場所にこっそり罠を張る事もできるだろうし、こうして正直に話している分には信頼度はそこそこあるんじゃないか? 逆に言えば送還なり送り飛ばす技術が出来たって事は、もうこの世界にいる限り気を抜けないって事になるんだし。……正直俺は日本が過ごしやすい。」

「じゃあヒデアキは提案に乗っても良いと?」

「別にいいよ。」


 後ろにいるアーたんに声をかける。


「アーたんも一緒に行ってくれる?」

「もちろんよ。コピたんとリったんもいいでしょ?」


 アーたんが二人に呼びかけると、コピたんはコクリと頷き、リったんは『がお』と可愛く鳴いた。


「ちょっと! ダーリンが行くなら私も一緒なんだからね!」

「おいしーのたべるのー」

「なんや面白そうな事になってるんのは見逃せんなぁ。」


 俺や魔獣たちの反応を見たリョウは口元を隠しながら考え、そしてトレちん達と相談を始める。

 早々に結論が出たようで国王に向き直るリョウ。


「提案についてまずは半分乗ろう。ヒデアキが帰り、ヒデアキの魔獣と魔王たち。そして私の魔獣が一人従う。国王の同行はフレイドロン国王一人が同行願う。

 ヒデアキが無事に日本に帰り問題無く過ごす事が出来るか。世界に問題がないかを私の魔獣ラビちんが同行し確認する。そして1年後にラビちんをこちらに召喚し、その報告内容に問題が無ければ私も日本へ帰ろう。」


 リョウの言葉に安堵や歓声が沸く会場。その盛り上がりに『どんだけ嫌われてんの俺』と大いにへこまないでもない。


 だが、どうやら日本に帰れるようだ。


 アーたん達と一緒に。


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