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ぬるぬるファンタジー  作者: フェフオウフコポォ


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22/34

21話 究極進化


少し時事系列が分かりにくくなってしまったので、補足させて頂きます。

時事としては


18話の襲来

 ↓

20話のリョウ堕ち(襲来より数週間後)

 ↓

19話人類分裂(襲来から4か月後)


です。


もしかすると、後々19話と20話の位置を入れ替えるかもしれません。


では、続きをば




 バシャッ! バシャッ!


 耳をつく音と共に閃光が走る。


「いいよー。

 ……あーいいねぇセクシー! 最高だよー!」


 音と閃光の元を手にしながら言葉を発し続けている男。

 そしてその男を呆れた顔で見ている少女。


 少女は砂漠で男と別れたキャラバンを率いた少女だった。


「こう?」

「きわどいーっ!」


 バシャッ!


「こんなのは?」

「あ~! もうとろけちゃうっ!」


 バシャッ!


 黒味を帯びた銀を思わせるメタリックな質感のピンヒールブーツを履き、同じカラーの肘まであるグローブ。そして同じ色のレオタードのような衣装を身に纏い、男が走らせる閃光に合わせてポーズを変え、しなを作り魅惑的な恰好をする女。


 誰が見ても見惚れてしまうようなメリハリのある肢体を持ち、露わになっている背中を長い髪で隠してしまうように銀髪をなびかせているが、その女の顔のほとんどが衣装同様の色をしたメタリックな質感の物で鼻と口以外を覆われていて、表情を伺い知る事はできない。


「……勇者様。」

「ちょっと待って、今良いところだから!」

「こんなのは?」


 銀髪の顔が隠れた女が自分を抱きしめるようにして前かがみになり胸を強調したポージングをする。


「うっはぁぁっ! アーたん過激すぎぃっ!! うひょー! たまらん!」

「……勇者?」


 少女は目の前にいるのが本当に勇者と究極進化した魔獣なのかを疑問に思わずにはいられなかった。

 

 そう。勇者ヒデアキである。

 パンツ一丁になり汗をかきながら、ヌルヌルを纏ったアントランダ改めクィーンアントへと究極進化したアーたんをかれこれずぅっと激写しているのだ。


「んふぅー!」


 やがてヒデアキは額を拭い満足したように満面の笑みを浮かべながら鼻から大きく息を漏らす。


「なにしてんのこの人?」


 少女は思わず本音を口にした。


 抗う人間の希望と信じてアクアノスに辿りつき、そして情報を集めて幸運にも勇者と出逢えた。

 勇者が根城としている洞窟で、キャラバン隊全員が勇者が魔法で作りだした食事でもてなしを受け「じゃ、俺やる事があるから」と一言残して席を立った勇者に対して、代表して礼を言おうと暗幕に覆われた部屋に入ったところ勇者が魔獣を相手にカメラマンごっこに興じていたのだからそれも当然の反応だろう。


「あ? なにって?

 ふっふっふ。宣伝材料だよ宣伝材料。」

「宣伝? 宣伝って一体何を?」


 真剣な表情に変わる勇者。


「今、あの変態に襲われたヤツらが新しい勢力を作ってるだろ? それに対抗する為……いや、余計な争いを減らす為……かな。」

「これが?」


 少女はヒデアキの恰好と撮影時のテンションから、どうしても楽しいからやっているとしか思えず、つい語気が荒くなる。

 自分達が苦しんでいる現状を何とかできるかもしれない力を持ちながら遊んでいるとも取れる状況に腹が立ったのだ。もしかすると砂漠で別れたおっさんが尻を……そう思うだけでやるせなかったから仕方ないのだ。


「そうさ。

 今、あの変態野郎に襲われた…もしくは襲わ()れたヤツらで被害が大きいのはほぼ『男』だ。

 俺だって男だ、気持ちは分かるよ……これまでまっとうに生きてきたと思っていたのに突如メンタルブレイクさせられるんだから。

 ……立ち直るには自力で克服するか、それとも楽な方に流れるかしかない。」


 ナルキッスの魔の手が及んだ者達の中で女性はその持前もちまえの精神力からか比較的に立ち直りが早く、反して男は絶望する者が多かった。

 中でも特に『乙女』を感じさせられた乙女男おとめんの精神は深刻で、無気力になってしまうか、逆に精神のバランスを保つ為にナルキッスに心酔する傾向が強く、今、ナルキッスの親衛隊のように行動している者達は基本的に後者の者達がその多くを占めているのだ。


 絶対強者であるナルキッスに逆らう事は不可能であり、仕える事で安定を得られるという打算も重なって、その勢力は確実に数を増やし、抗う人類と敵対し始めている。


「だが、どうだ! 変態と対等な力を持つアーたんがこんなにも美しく進化したんだ!

 幸いな事にフレイドロンもアクアノスもどちらも文化は壊れてないから、やろうと思えば情報発信ができる状態にあるだろう?

 あの変態野郎に対抗できる勢力が生まれた事を宣伝し、広く知らしめれば、もしかすると正気に戻るかもしれない! いや、そこまではいかなくても傍観を決めて俺達の邪魔をしないかもしれない!

 だからこそ目を引く魅力的な宣伝材料が必要なのさ!」


「なるほどっ!」


 少女は誤解した自分を恥じた。

 勇者は人間の事を思い行動していたのだ。決して私利私欲の為に動いていたのではないのだと。


「じゃ、せっかくだから、ちょっとこの光源もってくれる?

 ちょっと右からの光が弱いような気がするんだよね?」

「はい!」


「いやちょっと待って……

 ……君、イイじゃないか……ちょっとアーたんの隣にいってくれる?」

「え? ……あ、え? あ、はい。」


 恐る恐るクィーンアントに近づく少女。

 身長が180cmはありそうな美女を見上げる。


「じゃ、アーたん。ちょっとその子を可愛がる感じでなんかしてみてくれる?」

「こう? ヒデアキ?」

「あ……」


 くい、っとまるでキスでもするかのように少女の顎を指で上げるアーたん。


「ふぁあああああああああああ!!

 少女とアーたん……だと!? これはなんとも倒錯的な! いいねー!」


 バシャシャシャシャシャッ!


 耳をつく音と共に閃光が走りまくる。

 少女は戸惑いながら口を開く。


「あ、あの、勇者様。これも宣伝材料なのですか?」

「は?」


 一拍の間。


「あ、うん! 宣伝材料宣伝材料! 趣味じゃないよー。」

「…………あの。勇者様。

 ちなみにいつ使う予定なんですか? 宣伝材料。」


「ん~。

 まだ究極進化はアーたんだけだし、リョウがあの変態の所にいるらしいからネバネバ対策もいるかもしれないからなー。

 絶対勝てる状態になるまで……後5人の内せめて2人、できれば全員が究極進化してからかなー?」

「ソウデスカ」


 少女は趣味だと確信した。


 バシャシャシャシャシャッ!


「いいねー!」


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