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ぬるぬるファンタジー  作者: フェフオウフコポォ


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18話 ナルの来襲


 アレンジャン・ニュール・ケンドリー。それが我が誉れ高き名。


 フレイドロン王国軍 広域防衛部 首都防衛第三部隊所属。部隊長として王命を受けて以降、国民を守る為、日夜訓練に励んでいた。

 永く分断の歴史を歩んでいた二国に友好が訪れるという歴史的快挙から我々の部隊に主たる業務として存在した対アクアノスを想定した訓練が姿を消し、対人訓練の割合よりも対モンスターに対する訓練が増え、隊員も皆、新しい時代を迎える変化を肌で感じ初めていた。


 そしてさらに脅威として懸念された魔王に関しても、国王をはじめとした首脳陣の活躍により、魔王がモンスター保護の法律を守る限りは傍観するという取決め……絶対的な脅威に対して対等な関係を結んだ事が発表された事で、人類が誉れ高き時代を歩み始めたのだと喜びを感じていた。


 私もその時代に部隊長としてある名誉に恥じぬよう、身命を賭して首都に襲い来る事態に対処できるよう部隊一丸となって励み、防衛に対しては絶対の自信を持っている。


「アレン隊長! 対象! 無傷です!」

「引け! 引いて区画門を閉じろっ!」

「了解!」


 自信があったつもりだった――


「区画門を閉じたとて……すぐに破壊されるぞ。」

「分かっている……だが無いよりはマシだ。」


 副部隊長として長年共にやってきたドルバル・バオ・ブシャネットの苦言も当然だ。だが足掻く以外に何もできはしない。

 抑えようもなく吹きだす汗が頬を伝ってゆく


「……先行した第4部隊は?」

「もうだめだ……全員食われちまった。とてもじゃないが見てられなかったよアレン。」

「なんだと……第4部隊には……」

「あぁ、俺の甥が夫婦で在籍してたさ。アイツには男だろうが女だろうが老いも若きも関係ない。一切の躊躇も容赦もなく全て食っちまう。」


 ドルバルが強く目をつむり、怒りかそれとも恐怖なのか震える手で顔を押さえた。


「ならば……尚の事、これ以上先へ進めさせるわけにはイカンな。」

「あぁ。その通りだ。」


 ドルバルの肩に手をやると、震えを止め力強い視線を返して来る。まだ私達は誰一人として心は死んでいない。

 国民を守る為、その誇りに賭けてアイツを止めて見せる。


「隊長! 対象 区画門正面です!」

「全員! 新魔術3式の使用を許可する! 区画門が解放され次第全力で放て!」

「正気かアレンっ!? ……いや、仕方がないのかもしれんな。」

「今はやれることを全力でやるしかない! 全員! 配置に付き準備しろ! 全力だ! 出し惜しみするな!」


 号令を受け2人1組となった隊員達は、2人で協力し合って魔法を練り始める。

 キンキンキンと響くような高音が耳を刺し始める。


「ドルバン! 私達も放つぞ!」

「了解隊長!」


 向かい合って魔力を放出しあうと二人の間に、氷の槍が生まれ始めた。

 アクアノスとの共同魔術研究の成果として、炎魔法の『熱』と水魔法の『水』の特性を研究。水を生み出し熱を奪う事で水よりも破壊力が高い『氷』を放てるようになったのだ。建物等資産の多い首都において炎をそのまま使うよりもメリットが大きいとされ、防衛部隊に率先して知らされた魔法だ。


「ぬぅうううっ!」

「ぐぅおおおおっ!」


 更に力を込めると キンキンキン と響いていた高音が ギンギンギン という音に変わり、氷の槍はその大きさをさらに肥大化し、それでもさらに限界を振り絞るような表情で、その氷の槍をより大きくしてゆく。


 その時――


「ハーーーーイ!」


 掛け声と共に区画門が盛大に打ち破られ、吹き飛んだ。

 砂煙が舞い、その向こうに人影がゆらりと揺れる。

 ザっ、ザっ、と地を鳴らし、砂煙から顔だけが露出する。


 その顔は、長髪に似合わないゴリラのようにくぼんだ目元にに大きな瞳、そして立派な割れた顎。

 なぜかクルっと後ろを向く。


「むぅんっ!」


 気合の入った声が放たれると同時にバックラットスプレッドのポージング。舞った砂煙は爆散する。

 ほぼ全裸と言っていい姿が露わになり、褐色の肌にキュっと閉まったお尻。そして立派な広背筋が鈍くキラリと光りを放った、

 無言の時が一瞬流れた後、ぐりんと振り向き首都防衛第三部隊全員をじっくりと見回し、そしてニカっ! と笑い叫んだ。


「オマタセーーーェッ!!」

「撃テェーっっ!!」


 隊長の掛け声と同時に放たれる無数の氷の槍、逃げ場のない量。

 だが、その魔法を撃たれた対象は笑顔を崩す事はない。


 ガっ、ガガガッ、ガガァン!


 次々と直撃していく氷の槍を全て受けている。


「アー! イイヨー! イイヨー! トッテモ素敵ダヨー! パッションを感じるヨー!」


 轟音の中聞こえてくる声。


「撃ち方やめるなー!」


 氷の矢を放っている魔法兵達は、気力を振り絞り攻撃を止める事は無い。

 ……だが、その攻撃は永遠には続かなかった。


 やがて魔力を使い果たしかけたのか次々と膝を折ったり倒れたりし始め、降りそそぐ氷の槍の本数は減ってゆく。


「ば……バケモノめ……」


 膝を折った隊長から自然と声が漏れる。

 苛烈な攻撃を受けていたはずなのに、傷一つつけられなかったからだ。


「オー……もう終わりなのかい?

 残念だがとても新鮮な刺激で、良かったよ。

 じゃあお礼を――」


 言い切ると同時に両手を空に向け、すぅぅっと息を吸い込み始め


魅了解放ラブフォール!」


 アブドミナル・アンド・サイのポージングで叫んだ―― 


 

--*--*--



 ―― トゥンク ――



 アレンは胸の高鳴りを感じた。

 それはまるで乙女が美男子と出逢った時のように――




 ―― トゥンク ――



 ドルバルは鼓動が激しくなるのを感じた。

 それはまるで少年が美少女と出逢った時のように――



 二人の視線……いや、首都防衛第三部隊に所属する隊員全ての視線が一か所に集中している。

 集まる視線を感じアブドミナル・アンド・サイのポージングから、サイドトライセップスへとゆっくりと変わってゆく。


「んふぅぅうう……この世は2種類の生き物に分けられる。

 男と女? いいや違う。

 人間とモンスター? いいや違う。

 食う者と食われる者。この2種類だ。」


 ニッコリと笑顔を浮かべ両手を開く。


「だが僕! この『ナルキッス』は違う! 食う者(せめ)でも食われる者(うけ)でもどっちもオーケィさぁっ!

 さぁ、おいでベイベー達! 愛し合おうじゃないか! 愛しておくれぇ!」


「「「「 ナルキッスさまぁぁ~~ 」」」」


 首都防衛第三部隊は、老若男女、一切の区別なくあっという間に食われてしまうのだった。


 主に性的に。




『バックラットスプレッド』

『アブドミナル・アンド・サイ』

『サイドトライセップス』


 分からなかった方は……いや、大半の人は分からないはず!


『ボディビル ポージング』で検索検索ぅ!

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