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ぬるぬるファンタジー  作者: フェフオウフコポォ


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10話 しのび寄る影


 争いは同じレベルの者同士でしか発生しない。


 なぜならレベルが違っていれば争ってもすぐに決着がついてしまう。

 フレイドロンとアクアノスは、そういう意味では非常によい関係を保っていると言えるのかもしれない。

 戦争という名の殺し合いを止め、その土俵を別に移した事で一方が新技術を開発すれば、もう一方も負けじと新技術を開発し『追いつけ追い越せ』を繰り返す。


 その結果としてヒデアキが召喚された当初驚いたように、魔力を使用した携帯電話のような物の開発やカメラのような物の開発など、人類に有用な品の開発に繋がっているのだろう。

 両国は同レベルの開発力を有し、そして文明・文化の発展・発達度合も長年均衡を保っている。


 そして今、縁あってヤマギシヒデアキはフレイドロン王国へ。カワカミリョウはアクアノス王国へと召喚された。

 この2名の日本人も同じ会社で同僚として過ごし、同じようなレベルであるとすれば――



「へぇぇっ! その魔獣『トレちん』だっけ? 元は動けないような木のモンスターなんだ!」

「そうそうトレントな。

 でも賢いんだぜ。害獣から農作物守ったり鳥害防いでくれたりするから、みんな必ず使役するんだよ。

 どっちかというと守り神みたいな感じでさ。」

「そうナンス。畑に植えられてるトレントをよく見るンス。」


「それが進化を重ねてこうなったと……動くだけじゃなく喋る。すげぇなぁ。」

「いやいやいやいや。それを言うならヒデアキの方のアーたん? だっけ?

 そっちの元がアリとか思えねぇわ。なんかすげぇサイバーチックじゃん。」


「ねぇヒデアキ? 今の『さいばーちっく』ってなに? アーたん何を言われたの?」

「えーっと……

 ねぇ、リョウ。『さいばーちっく』ってなに?」


「お前は分かるだろうが。

 ……あ、でも『電脳』っぽいとか、こっちの世界じゃ分かり難いか。」


「ねぇ、リョウ。『さいばーちっく』ってなに?」

「二度言うなよ。

 えっとアレだ。ツルツルしてて神秘的でカッコイイって感じかな?」


「だってさ、アーたん。

 いやぁ良い事いうなーリョウは。いや……むしろ流石俺のアーたんってことか。」

「えへへ。 アーたん嬉しい。」


「リョウ。 僕の事も褒めるンス。」

「お? 妬かせたか? スマンスマン!

 でも分かってるだろう? 俺はトレちんが一番カッコイイと思ってるって!」

「えへへへ。」


 ヒデアキとリョウ。そして木が人になったような生き物と、アリが人になったような生き物が談笑している。


 リョウが呼ばれ、そしてそれに連れだって隣に立っていた人物。その人物は、なんと魔獣だったのだ。

 しかもただの魔獣ではなく2回も進化を重ね言葉までも操るようになった魔獣。


 つまりアーたんと一緒だった。


 アーたんも2回目の進化を終えた時『アントロン』から『アントランダ』という種へと進化した。

 このアントランダは野生でも極々稀に目にする事があるらしいが見かけたら絶対に無傷で帰る事はできないと言われる程のモンスターらしく、逃げる事が大前提のかなり強力なモンスターらしい。


 アクアノス国王がリョウとトレちんを紹介し、逆にフレイドロン国王に魔獣進化の進み具合を問うてきた。

 きっとこれまでも色々な経験があったのだろう。その問いかけの印象は『進化でアクアノスが先を行っていれば万々歳、負けていたらすぐに追い越してやる』というような感じを受けた。


 その問いかけにフレイドロン国王も内心酷い歯軋りをしていたのだろう。だが、あくまでもにこやかに返答した。


「おおおっ、流石はアクアノス王国ですな。

 フレイドロンも勇者のおかげで、にたような進化を遂げる事ができております。」


 と、俺とアーたんを紹介した。


 そして今は俺の能力で出した『ヌルヌル』を利用した技術でアクアノスに対して攻撃を仕掛けているが、リョウの能力で出した『ネバネバ』を利用した技術を持ちだされ反撃を受けているという状態。


 つまり、フレイドロン国王が『ぐぎぎ』

 アクアノス国王が『ぐぬぬ』状態。


 国王達が『ぬるぬる』『ネバネバ』の技術転用の話をしている事もあり、俺とリョウはこっそりと久しぶりの雑談に興じているのだ。


「しっかし、俺のいるフレイドロンのアクアノスに対する執着も大概だと思ってたけどさぁ。そっちも似たようなもんだな。」

「まぁなぁ……でもこういった所で発散してるんじゃないか?

 アクアノスで生活している時はフレイドロンの話もそうそう出ないしな。

 アクアノスは結構過ごしやすくていいぜ? 自然も多いし空気もうまい。」


「へ~。まぁ、フレイドロンもいいとこだよ。

 最初は日差しにビビったけど慣れると過ごしやすい。乾燥してるから汗もすぐ乾くしさ。」


「あ~。ヒデアキは汗かきだもんなぁ。

 そっちの国にも行ってみたいけどさ……あの様子だと無理そうだな。」

「そうだなぁ。

 俺もアクアノス行ってみたいんだけど……無理だろうな。」


 国王達に目を向けるとニコニコしながらも神官長と祈祷師長が再開した言い合いを双方止める素振りすら無い。

 とうとう勝敗がつかなかったのか、神官長と祈祷師長の誹りあいにもつれ込んだらしい。 


「「 はぁ…… 」」


 俺とリョウは深いため息をつく。


「なぁリョウ。もしかすると俺達の勇者としての役割ってさ、この二国をもう少し仲良くさせることなんじゃないかな?」


「あ~……ヒデアキの言う事も一理ある気がする。

 話を聞く限り魔力を利用した技術開発は両国どっちも似たレベルだしな。

 アクアノスは木材や草木を中心とした技術開発が進んでいる。対してフレイドロンは鉱物を利用した技術開発が進んでいる。であれば――」


「その技術を持ち寄って足せば、新しい扉が開くってか?」

「その通り。」


「確かにリョウの言う通りだよな。ある意味で2極に別れて発展してる物が合わされば、それはスゴイ力を生みそうだ。魔王討伐って言われても俺達にできるのは魔獣の育成とかがメインになりそうだし、それ以外でできることっていったら裏方作業しかないもんな。」


「じゃあさ、ひとまずはそれなりに発言権のある俺達が協力し合って両国の仲を取り持つ基礎を作る。

 その為の努力をする事にしますか。」

「そうだな。それが良いと思う。また宜しくな。リョウ。」

「なんの因果か、この世界で二人だけの日本人になっちまったもんな。まずは俺らが仲良くやっていこうな。ヒデアキ。」


 リョウと固い握手を交わす。

 つられてアーたんとトレちんもマネして握手をした。


「「 こらー! 勇者が何をしとるー! 」」


 国王達が目ざとく俺達を見つけて怒った。その時――



 ドォン!


 コロシアムの壁が壊れる。

 アーたんが俺を、トレちんがリョウを庇うように動き、王達は兵士が守りにつき、皆が衝撃音を放った方向へ目を向ける。


 破壊された壁が崩れ土煙が舞うなか突如として突風が吹いたように土煙が晴れ、そこには一人の女の姿があった。


「ふふふ……時は満ちた。

 我こそは魔王。すべての人間をほふりし者。

 さぁ、終焉を始めよう!」


 伝説の魔王が現れた。

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