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ぬるぬるファンタジー  作者: フェフオウフコポォ


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9話 トップ会談

「アクアノス国王よ。久しぶりだな。健勝そうでなにより。」

「フレイドロン国王も変わりなく。

 しかしこうして情報交換の場を設けて頂けるとは魔王復活を考えての事でしょうが流石ですな。」

「こちらから提案はもちかけましたが、その後の貴国の対応の素早さから見るに提案されることを見越しておられたのでしょう? 流石の慧眼けいがんですな。」


「いやいやそんなことは」

「いやいやいやいや」


「「 はっはっはっは 」」


 にこやかに笑い合うは、キエトロン・ケンネス・フレイドロンと、ファイザル・ロウトス・アクアノスの2人。

 そう。フレイドロン王国国王とアクアノス王国国王だ。

 二人の様子はいかにも友好国と言ったような雰囲気がにじみ出ている。


「ふん! 火と大地に感謝も捧げぬ不埒ものが!」

「あぁ……水と緑の偉大さもしらぬとは愚かな。」

「何を!? 火と大地あってこその人類! 発展には火があってこそ! 火から生み出される文明と言っても過言ではないのだぞ!」

「ではその人類が生きるに水は要らぬとでもその口は言うのか? 水が無ければ人は死に絶える。人は水によって生かされているのだぞ?」

「ただ生きるだけであれば、それは『人』ではないわ! 考え! 工夫し! そしてより高みを目指して生きてこそ人たるのだ!」

「その先に何がある? 何をもって満たされる? 人とは生き様。そして死に様をもって語られるものではないか? 分を知るのだよ。」


 フレイドロン国王が神官長に片手を上げて制す。


「まぁまぁ、よさぬか神官長よ。

 その国ごとに考え方がある。それで良いではないか。」


 アクアノス国王も片手を上げて神官長に対峙していた男を制す。


「場を弁えるのだよ。祈祷師長よ。

 お互いに住む環境が違うのだ。他者に信仰を押し付けるなど烏滸おこがましいことだぞ。」


「いやいや、すみませんなアクアノス国王。」

「こちらこそ申し訳ない。フレイドロン国王。」


「「 はっはっはっは。 」」


 後ろに控えてそのやり取りを見ている俺は大きくため息をつき、つい愚痴をこぼす。


「まったくもって面倒くさい。」



 時は会談の前に遡る――



 アーたんが進化の兆候を俺に伝え、そして無事に進化を果たした。

 王様は進化したアーたんを見て「ぐっふっふっふっふ! これでアクアノスのクソッタレ共に一泡吹かせてやれるわ!」と酷い笑顔で笑う。


 こうして王様がアクアノスに魔獣召喚について『是非情報交換させてくださいお願いしますぅ』と記した書面を使者に持たせて送り付けた。もちろん下手に出た上で内容を教えてもらい『なーんだそんな事で天下取ったつもりだったのプププー!』と笑うつもり満々なのである。

 こういった戦いは時折行われているようで、フレイドロン王国とアクアノス王国は戦う場として相応しい場を共同で作り上げており、いつも通りそこで情報交換という戦いが行われる事になった。


 その戦いの場となるのは円状の大陸の中心……ではない。

 この大陸の中心には山がそびえ立っており、その少し横に盆地のように凹んだ場所がある。不可侵が締結されてから様々な競い合いはその場所に建設されたコロシアムで行われており雌雄を決する場として利用されている。


 今回の情報交換もコロシアムで行われることになり、自信満々の王様自ら乗り込むらしく結構な集団で移動する事になったのだが、移動手段が金属と布で作られた馬車のような物をリザードンが引くという物で、重い車体を動かす力技。非常にのろい。


 移動にどれだけかかるのやら……と思ったのだが、ピンと閃く事があった。


 そう。『ぬるぬる』だ。


 俺の出す『ぬるぬる』はめちゃくちゃ滑りが良くなる。摩擦が無いかのような信じられない潤滑剤になるのだ。

 車輪に摩擦が滅茶苦茶減るような粘度を考えて生み出したヌルヌルを注入してみるとあら不思議。

 リザードンが上機嫌で引き、めちゃくちゃスピードを出せるようになるじゃないですか。超早い。


 この実験で触れながらヌルヌルを出す事でヌルヌルを固着させる事ができる事が分かり、荷物を載せる『そり』の底面にもヌルヌルを定着させると、まるで荷物が乗ってないかの如く軽くひける。超快適になってしまう馬車ならぬトカゲ車。王様が「この技術力も自慢してやろうぜ!」とニヤつくのは最早当然と言えた。


 食事も俺が魔法で出来立て熱々を出せるし、モンスターが襲ってきても進化したアーたんが速攻見つけてコピたんと一緒に駆除しちゃうから、もう移動集団みーんな上機嫌も上機嫌。


 そんな中、ただ一人だけ陰鬱な顔をしている人がいた。


「どうしたんスか神官長?」

「あぁ……ヒデアキ殿。貴殿の力は本当素晴らしいな。

 快適すぎて涙が出そうだ。」

「快適の『か』の字もでなさそうな顔色ですが?」

「それは……もう会談を思うと憂鬱で憂鬱で……聞いてくれるか?」

「あ……はい。」


 地雷を踏んだと思った時は既に遅い。

 結局、話という名の愚痴を聞かされることになった。


 愚痴の内容はまとめると簡単。


 『王様はケンカ出来ないから代行して相手をけなさなきゃいけない』


 つまり――



--*--*--



「アクアノス国王よ。久しぶりだな。健勝そうでなにより。

 (おう、この腐れアクアノス。お? なんだ? まだ生きてたのか? はよ死ねや!)」


「フレイドロン国王も変わりなく。

 しかしこうして情報交換の場を設けて頂けるとは魔王復活を考えての事でしょうが流石ですな。

(あ~あ~田舎モンのフレイドロンが、よくもまぁ恥ずかしげもなく俺を呼んだなぁ。

 魔王とか名目立ててるけど、どうせウチの魔獣進化を知りたいんだろ? 素直に頭下げろよクソジジィが!)」



「こちらから提案はもちかけましたが、その後の貴国の対応の素早さから見るに提案されることを見越しておられたのでしょう? 流石の慧眼けいがんですな。

 (はぁ? どうせお前、コッチも魔獣進化してるだろうとか見越して、さらに笑ってやろうとか考えてるんだろう? ゲスだもんなぁ。まぁ? その慧眼(笑)をみせてもらおうじゃないの。プーフフフ。)」


「いやいやそんなことは

 (やんのかコラァ!)」


「いやいやいやいや

 (なんやー!)」


「「 はっはっはっは (フギャベロジョババっ!) 」」


 と、言うのが本音という事。そして



「ふん! 火と大地に感謝も捧げぬ不埒ものが!

 (どうもお久しぶりです。お変わりなさそうですな。)」


「あぁ……水と緑の偉大さもしらぬとは愚かな。

 (ええ、ええ。いつも通りですよ。そちらも変わりなさそうで。)」


「何を!? 火と大地あってこその人類! 発展には火があってこそ! 火から生み出される文明と言っても過言ではないのだぞ!

 (いつもすみませんね。本当、こういうのはやりたくないんですが、これで食ってる感があるもんで、それに王様にも逆らえないのが辛いところ……はぁ。)」


「ではその人類が生きるに水は要らぬとでもその口は言うのか? 水が無ければ人は死に絶える。人は水によって生かされているのだぞ?

 (わかりますわかります。私も似たようなもんですから。隠居して静かに暮らしたいなんて思っても、なかなか難しいですよね。)」


「ただ生きるだけであれば、それは『人』ではないわ! 考え! 工夫し! そしてより高みを目指して生きてこそ人たるのだ!

 (隠居とか憧れますわ~。ちょっと農業とかもやってみたいんですよね。今までやった事ないし。)」


「その先に何がある? 何をもって満たされる? 人とは生き様。そして死に様をもって語られるものではないか? 分を知るのだよ。

 (やりたい事をのんびりとやるって素敵ですよね~。お互い早くそうなりたいもんですな。はぁ。)」



「まぁまぁ、よさぬか神官長よ。

 その国ごとに考え方がある。それで良いではないか。

 (おうおう、もっとガンガンやったれや! キャーン言わしたれ!)」


「場を弁えるのだよ。祈祷師長よ。

 お互いに住む環境が違うのだ。他者に信仰を押し付けるなど烏滸がましいことだぞ。

 (ガツーンやったったらええねんほんま!)」


「いやいや、すみませんなアクアノス国王。

 (なんやー!)」


「こちらこそ申し訳ない。フレイドロン国王。

 (なんなんやー!)」


「「 はっはっはっは。(フギャベロジョババっ!) 」」


 という事らしい。なんだこいつら面倒くさい。



--*--*--



「まぁまぁ、流石に火と大地を信仰する我々と、水と緑を信仰する貴国のいさかいは宜しくないでしょうからな。話題を変える事にしましょう。

 早速ですが貴国。アクアノス王国の取り組む魔獣進化。中でも噂に聞く『革命』について是非ご指導を願えないだろうか。」


「えぇ。本題ですな。

 魔王が復活した今、お互い戦いに供えるのは必然。魔王に負けるわけにはいきませんからな。と言っても、多くの技術を有する貴国に対してどの程度お役に立てるかは分かりませんがな。はっはっは。

 さて、では進化について語る上で欠かせぬ人物を紹介しましょう。アクアノスの勇者『カワカミ リョウ』殿よ、ここへ!」


 アクアノス国王の隣に近づいてきたのは、間違いなくリョウ本人だった。

 元気そうで胸をなで下ろしつつ見守ると、気になる事があった。


 リョウの隣にフードとマントをかぶった怪しげな風体の人物が付き従っていたのだ。

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