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4話
時間が止まってしまったかのような、静寂さだった。
涙を流す女性はすっと、真壁を冬四郎をすり抜けて祐斗の前にやってきた。首がぱっくりと割れている。そのせいで、声も出せないのか、ただ涙を流していた。
何も聞かずとも祐斗には、分かった。
この女性も真壁による犠牲者なのだと。
佳澄が配っていたチラシにあった顔だ。
祐斗は、のろのろと手を上げその女性の手を握ろうとしたがすり抜けた。だが、それだけで十分だったのか、女性は頷いた。そして、紫陽花の根本の方を指差した。そこに自分は居るのだと。
祐斗は真っ直ぐ女性を見て頷いた。必ず見付けるという意思表示のつもりで。
紫陽花の方をよく見ると、何人もの女性が立っていた。どの女性も首がぱっくりと割れていた。