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4話
土砂降りの中、にやにやと笑う真壁を睨み付けながら、佳澄もむつも助けに行けず立ち尽くしているのに、苛ついているのか、祐斗はぎっと唇を噛んだ。
口の中に鉄臭いにおいがした。唇を噛み切ったのだろう。だが、痛くもなく悔しさに涙が溢れそうだった。
ふと、祐斗は違和感を覚え真壁の後ろ、ぼんやりと発光している紫陽花に視線を向けた。光が増している気がした。
恐らく、学校に向かう車の中から見えたのもこの光だったのだろう。ぼんやりと淡いが、力強さを感じた。
光を発している紫陽花に目を向けていると、その傍らに誰かが居た。佳澄でもむつでもない女性だった。
その女性は、靄がかかったようにハッキリとは見えないが、泣いているようだった。はらはらと涙を流し、祐斗に何かを訴えようとしている。