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4話
「何の為に?」
颯介が問うと、真壁は大切な物を紹介するように手を広げた。そこにあったのは、青々とした葉を揺らす紫陽花。
しかも、どれもが真っ赤な色だった。距離が近付いたからなのか、冬四郎と颯介にもその鮮やかな赤が見えた。
距離が近くなったから、色が見えたわけではなかった。冬四郎と颯介は気付いた。その赤い紫陽花が、ほんのりと淡く発光しているのに。
「紫陽花が青系と赤系、どう決まるか知っていますか?」
真壁は、鉈の刃を指先で何度となく撫でている。
「土壌の酸性度でだな」
「流石。お巡りさんは物知りですね」
満足そうに真壁は頷いた。
「では、人間は?」
「何?」
「人間は酸性かアルカリ性か」
「アルカリ性だ」
「そう。この赤を出すためにアルカリ性の成分が必要でね、この二人にはその役目を担って貰おうとね」