93/121
4話
「真壁先生、寺井とむつさんを返して貰えますか?」
「あぁ、谷代君。こんな時間まで学校に居ちゃ駄目じゃないか…門はもう閉まっているはずなのに」
真壁は微笑みを浮かべながら、教育者らしい事を言っている。
「寺井はどこですか?」
「寺井さん?それなら、まだここに居るよ。谷代君のお友達の子もね」
真壁が少しだけ右に移動すると、地面に寝かされている佳澄とむつが見えた。この距離では、無事なのかどうかの確認も出来ない。
「お友達の子には驚いたよ。訪ねて来たと思ったら急に紫陽花を処分するように言うもんだから」
真壁はむつの襟を掴み、三人にむつの顔が見えるように持ち上げた。目はしっかりと閉じられ、力なくうなだれている。
空いている手で、顔を上に向かせるように持ち上げると、むつの口には猿ぐつわをしてあるようだった。
「燃やそうとするもんだからね、口が聞けないように塞いだんだよ。キレイな唇なのに残念な事だ」