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4話
「そう言えば、夏は嫌いなのに梅雨は好きとか言ってなぁ」
「それだっ‼」
昔を懐かしんでいた冬四郎は、祐斗の大きな声に現実に引き戻されたようだ。
「ねぇ宮前さん‼それですよ‼」
「それ?どれ?」
「梅雨ですよ‼紫陽花が気になるって言ってたじゃないですか‼」
「あぁ‼赤い紫陽花だ」
冬四郎と祐斗で何か納得の出来る事があったようだが、颯介はついていけてなく呆然としている。
「紫陽花をやけに気にしてて」
「そうなんだよな。研究発表を見に行ってから様子がおかしかったんだよな。あこそにも紫陽花があったし、顔色も悪くなってて」
「それが…?」
颯介が口を挟むが、冬四郎も祐斗とあまり聞いていない様子だった。
「そうなんですよね…紫陽花みてから変なのが視えないかとか聞いてきてて、あの紫陽花に何かあるのかも」