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4話
「まぁうちの谷代がむっちゃんに惚れてるのかなー?ぐらいですよ」
「谷代君は彼女居るんじゃないんですか?あの昨日から居なくなってる子」
「彼女じゃないみたいですよ」
冬四郎と颯介は、そろって店内に目を向けた。二人のそんな会話に気付くわけもなく、祐斗は暢気に雑誌の立ち読みをしている。
「へぇ…むつは意外とモテるんですかね?」
冬四郎は、ほとんど吸わないまま灰の長くなったタバコを灰皿に入れた。
「スタイルも良かったりしますし、祐ちゃんは…ちょっと頼りないから姉御肌の人が好きなんでしょうね」
颯介は笑った。
「あいつが姉御肌ねぇ」
ぬるくなったコーヒーを飲み干して、ゴミ箱に捨てた。雨足はまだまだ弱まりそうになく、蒸し暑さだけが増していく。