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1話
むつは、手に持っていたタバコをくわえ直して火をつけた。ふーっと吐き出された煙が、社長の方に流れていくのを手で払った。
「わざとだよね?塚があったはずの場所には何も、欠片さえ残ってなかった。邪魔になるモノを片付けさせたかったんじゃないのかなーってね。深読みし過ぎかしら?」
「調べに戻ったのか?」
「休んでる間に。もち、わたし1人でだけどね」
生ビールと共に他に注文していた、唐揚げや串物、漬け物もテーブルに並んだ。
「みやが、むつは雰囲気で物事を推し量る事をやるし考えが深いって言ってたっけな…レモン搾っちゃっても?」
「ん、お願い」
レモンをかけた唐揚げを皿に取り、熱いうちに一口かじった。
「わざと、だとしたらさ…結構熱いっ」
「揚げたてっぽいもんね湯気出てる」
手で口元を隠しながら、口を開けて冷ましていたようだったが、社長はすぐにビールで唐揚げを流し込んだ。
「わざとなら、そーゆーのが分かる奴が側に居るって事になるよな?」
「そーゆーのを信じてない人なの?」
「それは分からん。昔から何を考えて、何を見てるかよく分からん奴だったからな」